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2011年インド修行旅行記(16)「ブッダガヤー」

 
 ブッダガヤーに来るのは私はこれで五回目になりますが、私はいつもここでは、チベット仏教カギュー派のお寺に泊めてもらっていました。このお寺にはお坊さん用の部屋がたくさんあって、部屋が空いているときのみ、旅行者も泊めてくれるのです。

 今回はインドの旅行会社にブッキングを依頼していたのですが、こちらの説明不足のために、別のお寺にブッキングをしていたことが、到着後にわかりました。そこはヴァジュラーサナ(お釈迦様が悟りを開いた場所)に少し遠く、利便がよくありません。しかも本来泊まろうとしていたお寺の方は、今はお坊さんがたくさんいるので、旅行者は泊まれないとのこと。そこで急遽、ヴァジュラーサナに近いあるホテルに交渉して泊まることになりました。

 このホテル、エアコンの部屋がほとんどなかったのですが、「明日になればエアコンの部屋が人数分用意できる」というので、泊まる事にしたのですが・・・・・・「さすがインド」ともいえる自体が発生しました。翌日、ホテルの関係者が各部屋にやってきて、なんと、各部屋にエアコンの取り付け工事を始めたのです笑。たしかに「明日になればエアコンの部屋が人数分用意できる」という言葉に間違いはありませんでしたが笑・・・・・・我々のためだけに、エアコンのなかったすべての部屋にわざわざ取り付け工事をするとは思いませんでした笑。また、ホットウォーターとうたっていながらお湯が出ないことにクレームをつけると、風呂場に温水器の取り付け工事もおこなってくれましたが笑、さすがにこれはすべての部屋にとりつけるわけにはいかなかったらしく、お湯が出ない部屋は値段を下げることで話がつきました。

 さて、ブッダガヤーの第一の見所はもちろん、ヴァジュラーサナと呼ばれる、お釈迦様が悟りを開いた場所です。それは大きな菩提樹の下であり、今はその後ろにマハーボーディ寺と呼ばれる大きな建物が建てられ、またその周囲をアジアの複数の仏教国が作った仏像や仏塔など様々なモニュメントが取り囲んでいます。

 初めて来るメンバーも多かったので、最初に私は皆を案内し、このヴァジュラーサナの前に座りました。
 すると・・・・・・あのラーマクリシュナの部屋と全く同じ事が起こりました。最初、少しだけ皆で瞑想して、あとは思い思いにブッダガヤー付近を散策してもらおうかと思っていたのですが・・・・・・あまりの気持ちよさに、なかなか瞑想から立ち上がれなかったのです。まさにラーマクリシュナの部屋と同じで、自然に深い瞑想世界にすーっと心が引き込まれていく感じでした。
 とはいえ、ラーマクリシュナの部屋とヴァジュラーサナでは、同じ深い瞑想世界といっても、タイプが違います。

 このヴァジュラーサナの菩提樹の下で私が入った瞑想世界を、あえて言葉で表現するなら・・・・・・「素晴らしきシンプルな教え」というものでした。
 そう、お釈迦様の教えはまさに「素晴らしきシンプルな教え」なのです。
 煩悩を捨てればいいじゃないか、と。
 慈悲を持てばいいじゃないか、と。
 ただそれだけです。
 
 後の人たちが、ああだこうだと論を展開して難しくしてしまいましたが、本来のお釈迦様の教えは非常にシンプルです。
 あとは、やるかやらないか、だけなのです。
 だからお釈迦様は、
「私は解脱への道を指し示したが、それを実現するかどうかは君たち次第だ」
と言ったとされています。

 エゴ、煩悩が、苦の原因である。
 だからエゴ、煩悩を滅すれば、苦しみは消える。
 ――非常にシンプルです。

 私は様々なタイプの修行道を学び、実践してきました。お釈迦様の原始仏教的な教えも当然学び、実践してきましたが、わたしはどちらかというと、ラーマクリシュナの世界に代表されるようなバクティ・ヨーガの世界や、あるいは仏教でいうとシャーンティデーヴァのような実践的大乗仏教の世界、そして密教の世界が好きで、原始仏教に対してはそれらに比べると比較的興味が薄いのですが、この菩提樹の下に座っていると、変な言い方ですが、原始仏教が大好きになります笑。
 それは、今知られているような原始仏典に書かれていることや、東南アジアに伝わっているテーラヴァーダ系の仏教システムの中にはない、もっと本質的なものが、お釈迦様の教えにはあったのではないかという気もするのです。それは難しいものではなく、もっともっとシンプルで本質的だったのではないのか、と。

「何をゴチャゴチャ言ってるんだ? エゴを捨てればいいんだよ。」

 ――そんなことをお釈迦様が、ニコニコしながら言っているような気がしました笑。

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