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許すな

 このわたしという存在はそれが何であろうと結局ただ肉体と少しばかりの息と内なる理性よりなるにすぎない。
 書物はあきらめよ。これにふけるな。君には許されないことなのだ。
 そしてすでに死につつある人間として肉をさげすめ。それは凝血と、小さな骨と、神経や静脈や動脈を織りなしたものにすぎないのだ。
 また息というものもどんなものであるか見るがよい。それは風だ。しかも常に同じものではなく、時々刻々吐き出され、また呑み下される。
 第三に理性だが、次のように考えるがよい。お前は老人だ。これ以上理性を奴隷の状態に置くな。利己的な衝動に操られるがままにしておくな。また現在与えられているものに対して不満を持ち、未来に来るべきものに対して不安を抱くことを許すな。

(「自省録」)

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