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解説「菩薩の生き方」第二回(4)

(質問者)カルマというところにおいて、先祖というものがワーッと何百人、何千人といると思うんですが、この現代に生まれている、まあ狭い範囲で、自分の一族の代表としてこの世に生まれてる、そういうのもあると思うんですけども、そこに生まれているわたしが、なんらかの悟りを得て、菩薩としての生き方をできるようになった場合に、その自分の先祖っていうかそういう人たちも――まあ、大部分が地獄にいる場合もあるわけじゃないですか。そういう人たちにいくらかの救出というか、救いというか、そういう結果をもたらすことというのはあるんですか?

 それはあります。それはね、お釈迦様の言葉で言うと、ある人が解脱したら、七代前の先祖まで救われると。で、それはなんなのかというと、これは別にね、よく日本人が好きな、あいまいな、われわれは先祖とつながってるとか、そういう意味じゃないんです。先祖とわれわれのつながりっていうのは、ただの受け皿です。別に魂のつながりはない。
 わたしよく言う話なんだけどさ、例えばだけどね、おじいちゃんが死にましたと。で、毎日仏壇を拝んでると。「ああ、おじいちゃん」と。そのおじいちゃんがさ、隣の家の猫に生まれてるかもしれないよ。うん。で、「おじいちゃん」とか言ってお盆とかに捧げ物してると。「おじいちゃん、彼岸に戻ってきてくれましたねー。」でもおじいちゃん、ここで「ニャー」とか言ってる(笑)。

(一同笑)

 「ニャー。ここだよ!」とか言ってるかもしれない(笑)。別に霊となっているわけじゃないんだね。だからそういう意味で言ったら、そういう意味でのつながりはないんです。じゃあ、なんのつながりがあるかっていうと、カルマなんです。カルマって何かっていうと、直接的関係性なんです。直接的関係性っていうのは、簡単に言いますよ、例えばKさんの場合ね、Kさんが修行して解脱したとしますよ。それはいろんな要因が関わってるよね。例えばそれを教えてくれた師、あるいは手助けしてくれた人とかいろいろいるかもしれないけど、でも、もともとを考えるとね、産んでくれたお母さんがいるよね。お母さんが産んでくれて、で、ある程度までお父さんお母さんが育ててくれなかったら、今、修行できてないわけですよね。だってそうでしょ? もちろん産んでくれなかったらないですよね。で、産んでくれたけども、育児放棄しちゃって、で、途中で死んでたら、今の真理との出合いはないわけです。だからちゃんと育ててくれて、で、もちろん育て方にもいろいろいい悪いはあったかもしれないけども、でも、少なくとも育ててくれたと。あるいはいろんな自分のことを犠牲にして、子供のために尽くしてくれたと。この上に今のKさんがあって、で、解脱したとしたら、当然その因果関係によって、徳はお父さんお母さんにも返るんです。つまり、お父さんお母さんが解脱者を育てたってことになるから。
 だから、お釈迦様も言ってるんですが、最高の親孝行は解脱することなんです。で、逆に言うと、皆さんの生き方が、例えばKさんが悪しき生き方をしたとするよ。そうすると当然その悪人を育てたのはお父さんお母さんになるから、そのカルマが返っちゃうんだね。だから自分の人生っていうのは、そういう意味では自分一人だけのものじゃない。自分に何かを小さいころにしてくれた、お父さんお母さんだけじゃないよ。例えば自分が育つ上で、自分に対していろんなことをしてくれた人がいっぱいいるでしょう。その人たちの責任を背負ってるって考えてください。
 で、これはいつも皆さんにちょっと責任的なことを言うけども、でもですよ、ダルマに出合ってない人にはどうしようもないんです。どうしようもないっていうのは、ある程度のことしかできないよね。例えば「正しく生きましょう」と。正しくってどういうことかよく分からない。でもまあ、自分の良心にのっとった、あるいは一般的にいわれる善悪の道徳観にのっとった正しく生きることをしようと。これもこれで素晴らしい。でもこれしかできないよね。解脱はできない。あるいは菩薩になるっていうこともできない。あるいは、そうだな、神のしもべになるっていうこともできない。でも皆さんはそのチャンスを与えられてる。で、これは、いつも言うけども、チャンスというよりは責任なんです。つまりKさんがもしそれに出合ったっていう確信があるんだったら、Kさんがそれをやるとやらないでは、つまりKさんが自分で修行を達成するかしないかっていうのは、Kさんに今まで関わってきた、お父さんお母さんは当然としてね、何十、何百という人たちが覚醒の道に入れるかどうかを背負ってるっていうことになるんだね。
 ここまで言っちゃうとかなり重い話になるんだけど、でもそれくらいのものだと考えてください。
 で、そこから派生してね、お父さんお母さんがいなかったら今のKさんはいなかった。じゃあ、お父さんお母さんはどうなの?ってなるよね。うん。つまりお父さんお母さんはその前のおじいちゃんおばあちゃんがいなかったら、お父さんお母さんはいなかったってなるから。でも、これはなんていうかな、遠くなるにしたがって、カルマの――これは完全にね、物理的っていうか数学的な話です。数学的に、遠くなるにしたがって影響力が弱まるから。影響力が弱まるので、だから七代前までなんだね。ずーっとその影響力が持続するわけではない。七代前ぐらいまでは返りますよと。逆に言うと、七代前ぐらいの先祖までは、われわれの修行によっていい影響を与えられますよっていうことなんですね。
 だからそれも、なんていうかな、ぜひ自分の修行の動機にしたらいいですね。動機っていうか、「そうすればみんな幸福になるんだ」じゃなくて、「そうしないとまずい」と。関係者全員の鍵をわたしが預かっちゃったと。ね。――ほかの人はできないから。例えば、ほかの人が目覚めてるならいいよ。例えば親戚のいとこのなんとか君っていたとしてね、「わたしこれ、一人では持てないから、あなたもやって!」って言っても、その人が、「え? 何? ヨーガって何? ダルマ?」――そんな状態だったら当然駄目ですよね。つまり、それが与えられる人っていうのは限られてるっていうか。だから自分が少しでもダルマを極めたいっていう気持ちがあるんだったら、それは逆に言うと責任があると思ってください。
 でもそれは喜ばしい責任だね。それを自分が達成できるとしたら、多くの人にいい影響を与えられるわけだから。――って考えたらいいですね。

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