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要約・ラーマクリシュナの生涯(24)「ラーマクリシュナのサーダナーの物語の結び」

24 ラーマクリシュナのサーダナーの物語の結び
  
 

◎イエスのヴィジョン

 ラーマクリシュナは12年間にわたって、タントラの64の修行、ヴィシュヌ派の五つのバーヴァ、ヴェーダーンタの非二元のサマーディ、果てはイスラム教に至るまでの様々なサーダナーをおこない、それらをすべて成就してきたが、上述のショーダシー・プージャーの成就をもって、すべてのサーダナーは完成に至った。

 しかしそれから一年後、ラーマクリシュナは、その当時親しくなったシャンブーチャンドラ・マリックに聖書を読み聞かせてもらったことで、今度はイエスとキリスト教に興味を持つようになった。

 その頃のある日、ラーマクリシュナはカーリー寺院の南にあるジョドゥナト・マリックの別荘の庭に散歩に行った。ジョドゥナト・マリックと彼の母親は、ラーマクリシュナに初めて会ったときからラーマクリシュナを深く尊崇するようになったため、ラーマクリシュナがここに来たときには、主人が不在でも、管理人たちが庭の東屋の鍵を開けて、ラーマクリシュナに休息を勧めるのだった。
 その日、ラーマクリシュナはこの東屋に座り、壁に掛かっていた幼子イエスと母マリアの絵をじっと見つめながら、イエスの非凡な生涯について考えていた。すると絵が生きたものとなって、輝く光線が母と幼児の身体から発されてラーマクリシュナの心の中に入った。そして従来のヒンドゥー教的な思想や信仰は片隅に追いやられ、イエスとその教えに対する深い信仰と尊敬の念が彼の心を占めていった。
 次にラーマクリシュナは、キリスト教の信者たちがイエスの像の前にお香と灯明を捧げているヴィジョンを見、その信者たちの主への渇仰の心の中に溶け込んだ。
 そしてラーマクリシュナは寺院に帰ってからも、その後三日間、イエスとその教えへの思いに没頭し続けた。そして三日目の夕暮れ、ラーマクリシュナがパンチャヴァティーのあたりを歩いていると、色の白い素晴らしい神人が、ラーマクリシュナを見つめながら彼の方に歩いてくるのを見た。その切れ長の目は非常に美しく、鼻先は少し平たかった。ラーマクリシュナはこの並外れて神々しい表情に魅せられて、この人は誰だろうかと思いながら、その人物に近づいていった。するとそのとき、心の奥底から、このような言葉が響き渡った。

「イエスだ! イエス・キリストだ! あの偉大なヨーギー、神の最愛の息子、人類を悲しみと苦しみから救うためにそのハートの生き血を与え、果てしない苦痛を耐え忍んだ、神と一つなる者だ!」

 そしてイエスはラーマクリシュナを抱擁すると、ラーマクリシュナの体の中に姿を消し、ラーマクリシュナは恍惚状態に入った。通常意識を失い、しばらくの間、属性を持つ普遍的なブラフマンの意識に没入した。

 さて、この出来事のずっと後に、ラーマクリシュナは信者たちに、イエス・キリストはどういう顔をしていたのかという既述がどこかにあるかと尋ねた。信者たちは、そのような既述があるかどうかは知らないが、彼はユダヤ生まれなので、おそらく色白で、切れ長の目で、鷲のくちばしのような鼻を持っていたのではないかと言った。しかしラーマクリシュナは、自分が見たイエスのヴィジョンは、色白で切れ長の目ではあったが、鼻は少し平たかったのだと言った。
 このとき信者たちはこれについて何も言わずに黙っていたが、後に彼らは、イエスの肉体的特徴については三種類の描写があり、そのうちの一つによると、彼の鼻先は少し平たかったと書かれているのを知った。

 
◎サーダカ・パンディットたちの称賛

 聖典に精通した、三人の有名なサーダカ・パンディット(修行者でもある学者たち)が、ラーマクリシュナのサーダナーの三つの重要な時期に彼のもとにやってきた。
 
 パンディット・パドマローチャンは、ラーマクリシュナがタントラのサーダナーで完成の域に達した頃にラーマクリシュナに会った。
 パンディット・ヴァイシュナヴァチャランは、ラーマクリシュナがヴィシュヌ派の修行を終えた頃に会った。
 そしてパンディット・ガウリーは、ラーマクリシュナがすべての修行を終えた頃に会った。

 パドマローチャンはラーマクリシュナを見てこう言った。
「私はあなたの内に、神の力とそのあらわれを見る。」

 ヴァイシュナヴァチャランは、サンスクリット語の賛歌を作り、忘我の状態でそれを歌って、ラーマクリシュナを神の化身と称えた。

 ガウリーは、神的な光輝に包まれているラーマクリシュナを見てこう言った。
「私はあなたの内に、私が読んだ諸々の聖典に記されている高い霊的状態のすべてが実現されているのを拝見いたします。その上に、それらにも記録されていないような、高い状態の現れも拝見いたします。あなたの境地は、ヴェーダやヴェーダーンタやその他のシャーストラに述べられているものを遙かに超越していらっしゃいます。あなたは人間ではいらっしゃらない。化身たちを生み出すところの実在が、あなたの内にいらっしゃいます。」

◎新たなる願望

 このようにして、神への強烈な渇仰の心で12年にわたる激しい苦闘の末にあらゆるサーダナーを完成させたラーマクリシュナの中に、次なる願望がわき上がった。それは、それまでにヴィジョンの中で見た自分の信者たちに会って、彼らに自分の霊性の力を与えたいというものであった。

 後にラーマクリシュナはこう言っている。

「その切なる願望には際限がなかった。昼間は何とかしてようやく辛抱をした。私にはまさに毒物と思われた世俗的な人々の虚しいおしゃべりを聞きながら、私はいつも、彼ら皆がやってきたら一緒に楽しい神の話をして心を休め、耳を清めるのだが、と思っていた。そうすれば彼らに私の霊的経験の話をして心の重荷を軽くするのだが、と。
 周囲の何を見ても彼らのことが連想され、絶えず彼らのことを思わずにはいられなかった。私はいつも、彼らの一人一人に話すことを心に描いていた。日暮れになると、いくら辛抱してもこの切なる願望の盛り上がりをおさえることができなかった。誰もやってこないでまた一日が過ぎてしまったのかという思いがわき上がるのだった。
 諸々の聖堂に法螺貝や鐘の音が鳴り響くと、私は持ち主の館の屋根に上った。内心の苦悩にじっとしていられず、目に涙を浮かべ、声の限りに、
『どこにいるのだ、私の子供たちよ。早くおいでよ、皆一緒に。お前たちに会えないと、私はもう、じっとしてはいられないぞ。』
と叫び、その声は境内に響き渡った。私の願望と焦燥は、子に会いたいと願う母親の思いもこれほどではあるまいと思われたし、互いに会いたがっている恋人または友人たちでも、このように振る舞ったという話は聞いたことがなかった。その数日後に、一人また二人と信者たちがやって来始めたのである。」

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