要約「アビサマヤーランカーラ」（２）加行道

３．加行道

３－１　全体の要約

　救済者である菩薩の上・中・下の煖慧・頂慧・忍慧・世間第一法慧は、あらゆる点において、小乗の修行者の智慧よりも殊勝である。

３－２　個別の注釈

３－２－１　煖慧のステージ

　下級の煖慧は、執着などが遮られた智慧であり、それは四つの真理による無常などの認識によって生じる。そしてそれは小乗と大乗の道を獲得する因となる。

　中級の煖慧は、名前というものが相続しないことを知る智慧であり、それは感覚対象を肯定的にも否定的にも見ないことから生じる。

　上級の煖慧は、すべては言葉にできないと知る智慧であり、それは一切は仮設であると知ることによって生じる。

３－２－２　頂慧のステージ
　
　下級の頂慧は、一切の外的存在は空であり、かつ空は一切の外的存在であると知る智慧である。それは一切の外的存在に住しないことによって生じる。

　中級の頂慧は、無常などは空であり、かつ空は無常などである智慧である。それは、無常性もまた空であり、それらの無常性などに住しないことによって生じる。

　上級の頂慧は、一切の主体・客体・行為は、究極の意味としては分別できないことを観察する智慧である。それはもろもろの現象を相として取らないことから生じる。

３－２－３　忍慧のステージ

　下級の忍慧は、一切の外的存在は究極の意味としては存在しないと知る智慧である。そしてそれは、一切の外的存在は無自性であると知ることによって生じる。

　中級の忍慧は、三十二相などの身口意の清浄を得るであろうと知る智慧である。そしてそれは、一切の外的存在は不生不滅であり、究極の意味としては輪廻もニルヴァーナも存在しないことを知ることによって生じる。

　上級の忍慧は、認識対象に結び付けられた心から離れ、真実の見方によって、すべては因も相もないと知る智慧である。

３－２－４　世間第一法慧のステージ

　下級の世間第一法慧は、ブッダになれば無努力でサマーディに至ると知る智慧であり、それはサマーディの修習によって生じる。

　中級の世間第一法慧は、慢心が滅尽することであり、それはサマーディに入り、ブッダから授記を受けることによって生じる。

　上級の世間第一法慧は、サマーディにおける無分別智こそがブッダに至る最高の方法であると知る智慧である。そしてそれは、菩薩と智慧の完成とサマーディが一つであると知ることによって生じる。