聖者の生涯「ヴィヴェーカーナンダ」(7)
ナレーンドラは、父と同じ弁護士になるための勉強、修行の実践、そしてドッキネッショルにラーマクリシュナを訪ねることで、日々をすごしていました。ナレーンドラの両親はナレーンドラを何度も結婚させようとしましたが、ナレーンドラ自身が結婚に反対していた上に、なかなかふさわしい相手が見つからなかったために、両親の努力は無に帰していました。
ラーマクリシュナもナレーンドラに、完全な禁欲生活を送ることを勧め、両親が結婚するように哀願しても、耳を貸さないように注意しました。
あるとき、ラーマクリシュナがナレーンドラに対して禁欲生活を勧めているということが、ナレーンドラの両親の耳に入りました。ナレーンドラの両親は、ナレーンドラが出家してしまうのではないかと恐れ、必死でナレーンドラを結婚させるための工作をしました。しかし神の思し召しにより、すべては無に帰しました。万事万端整ったときでさえ、結婚寸前で、両者の些細な行き違いから、破綻に終わってしまったのでした。
こういうこともあって、ナレーンドラが頻繁にドッキネッショルを訪ねてラーマクリシュナに会いに行くのを両親は好みませんでしたが、あえてそれを止めることもありませんでした。それは、ナレーンドラが彼らにとって最愛の存在であったことと、ナレーンドラの性格上、無理やり拘束しようとしても、反対の結果を生むだけだということはわかっていたからです。
ナレーンドラ(ヴィヴェーカーナンダ)は後に、ドッキネッショルでラーマクリシュナとともに過ごした至福の日々を、このように述懐しています。
「師とわれわれが過ごした日々がどんなに喜びに満ちていたかを説明するのは、非常に難しい。戯れ、ふざけあいながら、また何気ない日常の行動を通して、われわれが絶えず師の薫陶を受け、知らぬ間に霊性の生活を練り上げていただいていたことには、いまだに驚くばかりだ。
強力なレスラーが少年を鍛える際には、少し手加減して相手に自分も同じくらい強いと思わせるものだ。教え子が自信に目覚めるように、やっと勝ったふりをしたり、時には負けてやることもある。師も同様にわれわれを扱われた。
バーヴァムカ(絶対世界と相対世界の中間の状態)に常に安住されていた師は、機が熟せば各自に潜む霊性の力がどのように発現するかご存知だったのだ。心にその輝ける未来像を抱いて、われわれを褒めて励ましてくださった。世俗の欲望に巻き込まれて人生最高の目的を見失わないように、われわれの行動の一つ一つを注意深く観察し、指示を与えて制御してくださった。しかし師がどれほどつぶさに見守り、制御してくださっていたのかに気づくことはできなかった。」
つづく