第一章 土台(6)五つのコーシャ
(6)五つのコーシャ
シャクティ(この宇宙のすべてを創造する力)が働くとき、プルシャ(魂)は、五つのコーシャ(殻、鞘、容器)に包まれる。
①第一のコーシャ--チッタ(心)
プルシャを包む最も内側の殻はチッタで、これは聖音オーム、時間、空間、アヌ(宇宙原子)という四つの要素で成り立っている。またこのチッタは至福(アーナンダ)を楽しむ場所であるので、「アーナンダマヤ・コーシャ」という。
②第二のコーシャ--ブッディ(理性)
第二の殻は、真理を識別する理性である。ここはジュニャーナ(叡智)の場なので、「ジュニャーナマヤ・コーシャ」という。
③第三のコーシャ--マナス(感覚意識)
第三の殻は、感覚意識(マナス)の場なので、「マノーマヤ・コーシャ」という。
④第四のコーシャ--プラーナ(気、生命エネルギー)
第四の殻は、プラーナでできた体なので、「プラーナマヤ・コーシャ」という。
⑤第五のコーシャ--肉体
一番外側の殻は、物質でできた肉体である。これは食物(アンナ)によって養われるので、「アンナマヤ・コーシャ」という。
シャクティのエネルギーがこうして五つのコーシャを作り出すと、心の内奥に眠る「智慧と慈愛」が引力となり、宇宙原子は互いにひきつけられ、凝集して、地・水・火・風・空という五大元素となる。これによってこの宇宙に、太陽や月や惑星が登場する。そしてその中でも特にプラーナの働きが強く現われたものとして、植物の世界が現われる。
五つのコーシャのうち、感覚意識をつかさどるマノーマヤ・コーシャに自我意識が集中すると、外側の感覚的喜びを追求する世界である動物界とつながり、その魂は動物となる。
単純に感覚的快楽を追い求める感覚意識を調御し、ジュニャーナマヤ・コーシャに自我意識が集中すると、正しいことと間違ったことを理性によって識別するようになり、その魂は人間となる。
人間が、その理性も超え、心の内奥にある「聖なる慈愛」に集中したとき、最も内側の殻であるチッタが出現し、その魂は歓喜に包まれたデーヴァター(天人)となる。
この一番内側の殻であるチッタさえも脱ぎ捨てると、もはやその魂をこのマーヤーである現象世界につなぎとめるものは何も無くなる。そうしてその魂は、完全なる自由を得た解脱者となり、聖なる光の世界に入るのである。
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