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無上の正しい覚醒を得るための因――如来の本性

第一章 無上の正しい覚醒を得るための因――如来の本性

◎すべての衆生に如来の本性があること

 輪廻という錯乱状態から解脱して、無上の正しい覚醒を得ることが必要ですが、われわれのような愚かな衆生が、そのような覚醒を得ることができるのだろうか、と考える人がいるかもしれません。
 しかし正しい努力によって、正しい覚醒は必ず得られるのです。なぜなら、すべての衆生の本質には、如来の本性があるからです。

 法身・空性というものはすべてに遍満し、真理の本質・真如というものは、時間も空間も越え、なんらの区別もありません。よって今錯乱しているすべての衆生も、如来の本性を持っているのです。

◎五つのタイプの衆生

 本来、衆生はすべて如来の本性を有してはいますが、輪廻においてつくってきたさまざまなカルマの働きにより、現在、衆生は以下の五つのタイプのいずれかの一族に属するようになっています。

①なかなか覚醒できない一族
②未決定の一族
③声聞の一族
④独覚の一族
⑤大乗の一族

◎なかなか覚醒できない一族

 なかなか覚醒できない一族に属する衆生は、以下のような特徴を備えています。

・悪業を犯しても、自分自身や他者に対して恥じる気持ちがない。
・悪業を懺悔する気持ちが少しもない。
・輪廻を厭う気持ちが少しもない。
・仏陀や真理への信が少しもない。
・衆生への慈悲心が少しもない。

 これらの印を具えた衆生は、なかなか覚醒できない一族であり、ひたすら悪業を行なうことが決定しているので、大変永い間、輪廻で苦しみを味わい続けることになります。
 しかし彼らもまた、永遠に輪廻から救われないというわけではありません。いつかもろもろの条件が整い、真理の実践に努力することによって、彼らも必ず正しい覚醒を得るときが来るでしょう。

◎未決定の一族

 未決定の一族とは、今後、どのような道に進むかまだ決定しておらず、縁によっていかようにもなり得る衆生のことです。
 彼がどのような師につき、どのような法友と出会い、どのような教えを学び、どのような教えを信じるかによって、声聞、独覚、大乗のいずれかの道に進むであろう衆生のことです。

◎声聞の一族

・輪廻の苦しみを恐れる。
・ニルヴァーナを信じる。
・衆生への慈悲が少ない。

 これら三つの印を具えた者が、声聞の一族に属する衆生です。

◎独覚の一族

・輪廻の苦しみを恐れる。
・ニルヴァーナを信じる。
・衆生への慈悲が少ない。
・慢心が大きい。
・師に頼らない。
・一人でいることを好む。

 これら六つの印を具えた者が、独覚の一族に属する衆生です。

◎声聞・独覚から大乗へ

 声聞や独覚の道においても、ニルヴァーナ(涅槃)に到達することはできるといわれますが、実は、声聞や独覚の道で到達する世界は、修行の究極目標であるマハー・ニルヴァーナ(大涅槃)とはいえないのです。

 彼らがニルヴァーナと呼んでいる状態は、ある種のサマーディの状態ではありますが、実は真のニルヴァーナではありません。

 お釈迦様は、多くの弟子たちには、まずこの声聞や独覚の道を説きました。なぜなら、多くの衆生は輪廻の苦しみに疲れきっており、はるかなる大乗の道にいきなり入ることは難しかったからです。

 そしてこの声聞や独覚の道によって得るサマーディの中で、十分に彼らが安らいだ後、仏陀は、彼らをそのサマーディから目覚めさせます。そして彼らにこのように言うのです。

「修行者たちよ、あなたのそのニルヴァーナは、真のニルヴァーナではない。あなたは全智者の境地を目指して、よりいっそう、精進しなさい。そうすれば必ずや、全智者の境地を得るでしょう。」

 そのように仏陀に勧められて、声聞や独覚の者たちは、偉大なる正しい悟りに向けて発心するのです。そして永い時をかけて菩薩行を行じ続けて、ついに仏陀となり、真のニルヴァーナへと到達するのです。

◎大乗の一族

 大乗の一族に属する衆生の中にも、その潜在的な本性が目覚めている者と、まだ目覚めていない者があります。
 
 まだ目覚めていない者が目覚めるためには、正しい縁が必要です。
 そのうち、内側の縁とは、本人が、真理を求めたいという欲求を持つことです。 
 そして外側の縁とは、真理を説いてくれる正しい師と出会うことです。

 大乗の一族に属する者の印は、以下のようなものです。

・言葉や行ないが乱暴ではなく、柔和である。
・欺きやごまかしがない。
・衆生に対する慈悲がある。
・大乗の教えに信を持ち、理解する。
・苦難もものともせずに耐える。
・正しく善行を行なう。

 この大乗の一族に属する者こそが、最も仏陀の境地に近い者たちなのです。

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