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勉強会講話「聖者の生涯 ナーロー」⑤(6)

◎両親を殺そうとする男

【本文】

 再びナーローは旅を続け、一人の男に出会いました。その男は自分の父親を杭で刺し、母親を地下牢に閉じ込め、今まさに両親を殺そうとしていました。ナーローが、グル・ティローを見なかったかと聞くと、男は、
「俺を不幸な目に合わせた両親を殺すのを手伝ってくれ。そうすればティローのところに案内してやろう」
と言いました。ナーローが断ると、こんな声が聞こえてきました。

『これとあれという二分法という名の
 両親に由来する三毒を滅ぼさないのであれば
 グルを見出すことは難しい。
 明日は出かけて物乞いをしよう。』

 男は消え、ナーローは気絶して倒れました。

 はい、これも、まずけがれとしてこれを見るのならば、これも同じ無智の現われね。つまり両親の殺人と。あるいは両親に酷いことをすると。
 つまりさっきも言ったけども、無智っていうのは何もしないわけじゃない。逆に非常に行動的なんだね。行動的なんだけども、親殺しっていうのは仏教では五逆の罪といって最悪の悪業といわれるわけだけども、これは世間でもよくあるわけだけどね。「親がおれにこんな酷いことをした」とかすごい逆恨みをして、親に暴力を振るったり殺してしまうってことがあるわけだけども。それは大いなる無智の一つの現われですね。
 はい、で、そうじゃなくて、これを肯定的にアドバイスとしてとらえた場合、この両親っていうのは前の方でも出てきたけども、一つは執着と、それから怒りの現われなんだね。これはこの男が両親にしようとしていることでも分かる。「父親を杭で刺し、母親を地下牢に閉じ込める」。ね。つまりこのまず「杭で刺す」――これが怒りとか憎しみの現われ。で、「地下牢に閉じ込める」。つまり閉じ込めるイコール執着。つまり執着っていうのは何かを縛り付ける。あるいは逆に自分が縛りつけられる。何かに閉じ込められる――ということが一つの表現だね。だからこの両親っていうのは、父母っていうのはね、悪い意味で、悪い例えとして、執着と怒りの表現としてよく使われるんだね。
 はい、そして、「これとあれという二分法という名の両親に由来する三毒を滅ぼさないのであれば」って書いてある。「これとあれっていう二分法」、つまりこれは相対的な世界。つまり「わたしがいてあなたがいる」と。ね。この二元的な相対的な世界を「両親」で表わしている。
 つまり両親っていうのは、当たり前だけど二人いるよね(笑)。われわれは、ちょっと変な言い方をすれば「二」から生まれてきたわけです。「二」から生まれてきた(笑)。すでに生まれるときに二人から生まれてるから、完全に二元性の中に生まれてるわけだね。それが一つの両親の象徴ね。
 逆に、みんな知らないかもしれないけど、インドとかチベットの神様でエーカジャティーっているんですね。これは女神なんだけど。エーカジャティー。これはあんまり有名じゃないから知らないかもしれないけど、エーカジャティーって女神がいて、このエーカジャティっていうのは「エーカ」っていうのは「一つ」っていう意味なんだね。「ジャティー」って「生まれた」とかそういう意味なんだけど。で、このエーカジャティーってどういう神様かっていうと、全部一個なんです。全部一個っていうのは、目玉一個、歯も一本っていう(笑)、

(一同笑)

 全部一個だから(笑)。まあそれは象徴だと思うんだけどね。つまり一元の世界というか――をあらわしている象徴だと思うんだけど。だからそれは一つの象徴なんだけど、同様にわれわれが二人から生まれたイコール、もう完全に二元性に生まれたときから取り込まれているっていうことの一つの象徴でもある。
 はい、つまりわれわれはその二元性という名の両親から生まれ、そこから三毒――つまり執着、そして執着の裏側の怒り、そしてその全体を取り囲んでる無智ね。この執着・怒り・無智っていう三毒としてわれわれは二元性の両親から生まれてきたんだよと。
 はい、そういう観点でいうと、ここはとても面白い。つまり、この一見酷い男に見えた男が、じゃあナーローに何を言ったのかというと、
「さあ、われわれをこの三毒という形でこの酷い世界に生み落としたこの『これとあれ』――つまり二元性といわれる両親を一緒に殺そうぜ」
って言ってくれてる。まさにこれはグルの偉大なる導きなんです。グルが現われて、「さあお前。お前のこの苦悩の原因はそもそも、これとかあれとかいう二元性に取り込まれたからだ」と。「その二元性を一緒に打ち砕こう」ってこう言ってくれてるわけですね。でもナーローはもちろんそれが理解できないから、それを断ってしまう――というのが、ここの肯定的なね、意味の見方ですね。

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