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人々を引き上げようではないか

人々を引き上げようではないか
ベンガルの月刊誌「ウドボーダン」――その将来の方針

 [場所:ベルルに借りられたマトの施設 年:一八九九年]

 ベンガルで二週に一回発行される雑誌ウドボーダンが、一般民衆の中にシュリー・ラーマクリシュナの宗教的見解を広めるために、スワミジ(ヴィヴェーカーナンダ)の指示の下、スワミ・トリグナティターナンダによって始められた。
 創刊号が発行された後のある日、ある弟子がニランバル・バーブのガーデンハウスにあるマトにやって来た。スワミジは彼と、ウドボーダンについて以下のように会話を始めた。

 スワミジ「(ふざけて雑誌の名前をちゃかしながら)”ウドバンダン”を見たか?」 

 弟子「はい、師よ。素晴らしい雑誌ですね。」

 スワミジ「われわれは、この時代のスタイルに合わせて、この雑誌のアイデアや言語などすべてを考えねばならない。」

 弟子「どのようにしてですか?」

 スワミジ「われわれはシュリー・ラーマクリシュナの考えをすべての人々に公表しなければならないだけではなく、新たな活力をベンガル語に導入しなければならないのだ。例えば、頻繁に動詞を使うと、言語の力を減少させることになる。われわれは形容詞を使って動詞の使用を制限すべきである。そのように記事を書き、ウドボーダンを印刷に持っていく前に私に見せなさい。」

 弟子「師よ、スワミ・トリグナーティターナンダのこの雑誌に対する働きぶりを、他の人がまねするのは不可能です。」

 スワミジ「お前は、シュリー・ラーマクリシュナのサンニャーシンの子供たちが、ただ木の下に座って、ドゥニの火を焚くために生まれてきたと思うのか? その中の幾人かが仕事に取り掛かれば、人々はそのエネルギーを見て驚くだろう。彼らから仕事のやり方を学びなさい。
 例えばだ、トリグナーティターが私の指示を遂行するために、霊性の修行、瞑想、すべてをやめて、仕事に着手しただろう。これは小さな犠牲に過ぎないのではないか?――この仕事の精神の背後に、彼のわたしへの愛がどれだけあるのか、お前にわかるか? 彼は成功するまで仕事をやめないだろう! お前たち在家に、このような覚悟ができるか?」

 弟子「しかし師よ、スワミたちが行なっているように、ゲルアの衣をまとったサンニャーシンが家々を回るというのは、われわれの眼にはむしろ奇妙に映ります。」

 スワミジ「なぜだ! 雑誌の流通は在家信者のためだけに行なわれるのだぞ。この国に新たな発想を広めれば、国民全体が利益を得る。お前はこの無私の仕事が信仰の実践よりも劣ってると思っているのか? われわれの目的は、人類に善を行なうことだ。この雑誌から収入を得るつもりなどまったくない。われわれはすべてを放棄している。妻も子供もいないから、自分の死後に備える必要もない。雑誌が成功すれば、その収入のすべてが人類への奉仕のために使われるだろう。さらに余った金はおそらく、さまざまな場所に僧院や奉仕の家を建てるためや、人々の利益になるような仕事に使われるだろう。われわれが、在家者のようにポケットを満たすために働いていないということは疑いもないことだ。われわれのすべての活動は他者の利益のためにあるのだということを、しっかりと理解しなさい。」

 弟子「それでも、全員がその精神を評価してくれるわけではないでしょう。」

 スワミジ「だったらどうなのだ? われわれは何を得することも損することもあるまい。われわれは批判の眼で仕事に取り組むことはしない。」

 弟子「師よ、この雑誌は二週間に一度発行されます。週に一度のほうがいいと思うのですが。」

 スワミジ「ああ、だが資金はどうする? シュリー・ラーマクリシュナの恩寵によって資金が増えれば、いずれは毎日発行できる日がくるかもれないな。毎日一万部を刷って、カルカッタの街路や路地で配るのだ。」

 弟子「そのアイディアは、本当に素晴らしいです。」

 スワミジ「私は、まずはこの雑誌の事業を自立経営できるまで持っていき、それからお前たちに編集を任せたいと思っている。お前たちにはまだ、事業を自立させられるほどの能力はない。それはすべてを放棄したサンニャーシンのためのものだ。サンニャーシンは働き過ぎて過労で死ぬことはあっても、報酬をもらうことは決してない。ところがお前たちは、ちょっと反対されたり、ほんの少し非難されるだけでひどく困惑する。」

 弟子「師よ、この間スワミ・トリグナーティターナンダが印刷所で、仕事を始める前にシュリー・ラーマクリシュナのお写真に礼拝し、仕事が成功するようにあなたの祝福を求めているのを見ました。」

 スワミジ「まあ、シュリー・ラーマクリシュナはわれわれの中心点だからな。われわれ一人一人がその中心点の光の放射線なのだ。だから、トリグナーティターは仕事の前にシュリー・ラーマクリシュナに礼拝していたのだろう。そうではないか? 素晴らしいことだ。だが、トリグナーティターはそんなことは私に一言も言ってこなかったぞ。」

 弟子「師よ、彼はあなたを恐れているのです。昨日彼は、雑誌の創刊号についてのあなたの意見を聞くようにと私に頼んできました。その後にあなたと会う予定があったのにもかかわらず。」

 スワミジ「次にトリグナーティターに会ったら、”私は君の仕事を大変喜んでいる”と伝えてくれ。彼に私の愛の祝福を届けるのだ。そしてできる限り、お前たちも彼の手伝いをするのだぞ。お前たちはそれによって、シュリー・ラーマクリシュナの仕事をすることになる。」

 そう言うと、すぐにスワミジはスワミ・ブラフマーナンダを呼んで、必要ならばスワミ・トリグナーディターナンダにもっとウドボーダンの資金を与えるようにと指示された。
 そしてその晩の夕食会の後、スワミジはまた、以下のようにウドボーダンの話題に触れられた。

 「われわれは、ウドボーダンで大衆に肯定的な理想を提示すべきだ。否定的な思考は人間を弱くする。両親が息子たちに読み書きを教えるのに苦労して、”お前たちは何も学べないよ!”などと言って子供たちを”馬鹿者”呼ばわりすると、後に様々な場面で、その子供たちは本当に親に言われた通りになっているのを見たことがないか? もしお前たちが少年たちに優しい言葉をかけて励ませば、少年たちは間違いなく、時と共に進歩するだろう。子供たちの長所を伸ばせば、同時に高度な思考においても子供たちの良い部分を伸ばすことになるのだ。もし肯定的な理想を与えられれば、子供たちは成長して大人になったあと、自立できるだろう。語学と文学、詩と芸術――すべてにおいて、考え方や行動が間違っているということを人々に指摘するのではなく、彼らが徐々に考え方と行動を良くしていけるように導いてやらねばならない。過ちを指摘されると人間の心は傷つく。シュリー・ラーマクリシュナは、われわれが見下げ果てた者だと思う人たちをも励まし、その人たちの人生を変えたのだ! 彼の教え方は、唯一無二の不可思議なものであった!」

 少し間を置いて、スワミジは話を続けた。

 「何事につけても、どんな人をも、鼻であしらうようなことをする宗教は、決して広めてはならない。物理的、精神的、霊的――すべてにおいて、肯定的な発想を人々に与えねばならないのだ。誰かを嫌ったりすることなどはあってはならない。お前たちに堕落をもたらすのは、お前たちの互いの嫌悪である。
 さあ今から、肯定的な思考をばら撒いて、人々を引き上げようではないか。このようにしてわれわれは、まずはヒンドゥーの民族全体を、そしてその次に全世界を復興させなくてはならないのだ。これがシュリー・ラーマクリシュナがこの世に降誕された理由である。彼に気持ちを傷つけられた人は一人もいなかった。彼は最も堕落したような人たちにも希望と励ましの言葉をかけて、彼らを引き上げた。われわれもまた、彼の跡を継ぎ、皆を引き上げ、目覚めさせねばならない。わかるか? 
 歴史、文学、神話、その他すべてのシャーストラ――これらはただお前たちを脅えさせるだけだ。ただ単に『お前たちは地獄に堕ちる。お前たちはもう終わりだ!』などと説いているだけである。無気力がインドの中枢に忍び込んだのは、それゆえである。だからわれわれは、ヴェーダとヴェーダーンタの最高の思想を、シンプルな言葉で人々に説かねばならないのだ。道徳的指針、善なる行為、教育を伝えることによって、チャンダーラ(不可触民)をブラーフマナ(聖職階級)のレベルにまで引き上げなければならない。
 さあ、今言ったことすべてをウドボーダンに書き、皆を――若者、老人、男、女の皆を目覚めさせるのだ。そうしてはじめて、私はお前たちのヴェーダとヴェーダーンタの研究が達成されたのだと理解しよう。どう思うか? これがお前たちにできるか?」

 弟子「あなたの祝福と命令を受ければ、なんでも達成できると思います。」

 スワミジ「話は変わるが、お前たちは肉体を頑健にする方法を学び、他の者たちにもそれを教えなさい。私が今でも毎日ダンベルで筋力トレーニングをしているのを知らないか? 朝晩歩き、肉体労働をしなさい。体と心は平行して鍛えなければならない。すべてを他人に頼るのはよくない。肉体を鍛える必要性を痛感したら、人々はそれに奮闘するだろう。今現在、教育が必要だということがわかれば、人々はこの必要性を実感するだろう。」 

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