ヨーガの基礎(13)
◎トンレン
はい、ではもう一つ瞑想をいきますが、瞑想ってね、本当にたくさんあるんですが、おおまかに言うとまず、心を無にしていく、つまり空っぽにしていく瞑想がありますね。それから、物理的にエネルギーであるとかヴァイブレーションを利用する瞑想があります。それは今やったマントラとかもそうだし、あるいは今日はやらないけども、体中をエネルギーを回していくような瞑想とかいろいろあります。で、もう一つ、心を浄化する瞑想があります。で、そういったものを組み合わせなきゃいけない。
で、特にね、この心の浄化の瞑想って大切です。なぜかというと、もちろん最初のうちは大丈夫なんだけど、みなさんのヨーガ修行が進んでくると、さっきも言ったように、ちょっとこう深い心の世界に入っていきます。で、それはとてもいいことなんです。つまりみなさんの表面の、つまり建前みたいなのがどんどん崩れてきて、本当に本当の自分が現われてくる。本当の自分が現われるってとてもいいことなんだね。で、それをきれいにしてしまえば、みなさんはもう本当に心から幸せな人生が待っている。でも汚い場合、つまり深い意識にけがれがいっぱいある場合、それが出てきちゃったら、ただのわがままな人になってしまう(笑)。
あるいは非常に、逆にヨーガをやったおかげですごい怒りっぽくなったりとか、それは実際あるんだね。それはしょうがないっていえばしょうがないんだけど。それをこういった精神的な浄化の瞑想で補うわけですね。そういうのをやってると、みなさんがヨーガが進んできて深い意識に入ってきても、あまり困らない。逆に根っからの非常に幸せな人になります。
はい。で、その心を浄化する瞑想っていろいろあるんですが、その中でも代表的な今日は――聞いたことあるか分からないけど、トンレンっていう瞑想をいきます。
トンレンっていうのはこれは、簡単にいうと慈悲の瞑想です。で、これをちょっと今からわたしが誘導していきますので、ちょっとね、まあ人によっては「え!? そういう考え方は初めて聞いた」と、「それは怖い」とかあるいは「できそうもない」っていう人がいるかもしれないけど、思い切ってやってください。イメージの瞑想なので、思い切っていろいろイメージしていってください。
◎自己を癒す瞑想
はい、じゃあいきますよ。
じゃあ目をつぶって今から言うことをイメージしていってください。
これはいくつかのプロセスがありますが、今日はまあパッパッパッパッとやっていきます。
はい、目をつぶって――自分の目の前に、もう一人の自分をイメージしてください。もう一人の自分。
つまり自分を二つに分けて、目の前にもう一人の自分がいます。で、この目の前に座っている自分は、自分の中のネガティブな部分をすべて背負った自分です。
つまり過去のさまざまな失敗、過ち、あるいは思い出したくもないこと、あるいは否定的な感情、あるいは悪い性格とか、いろんなものを背負った自分です。
で、こっち側の今座っている方の自分は、そうじゃない、自分の中のポジティブな、非常にいい部分、清らかな部分、あるいは過去のさまざまなよかったこととか、そういうのを一身に持った方の自分です。
はい、この二つの自分をイメージして、自分の呼吸に集中してください。
呼吸をコントロールしなくていいです。ただ集中します。
つまり、吸ってるなあ、吐いてるなあっていうのに集中します。そして自分が息を吸うたびに、その目の前に座っているネガティブな自分の苦しみ、後悔、嫌な思い、全部吸い取ってあげます。つまりこっち側のいい方の自分が、呼吸と一緒に全部吸い取るイメージをします。
逆に息を吐くたびに、その苦しんでるネガティブな自分に対して、許しであるとか、癒しであるとか、安心であるとか、そういったものをパーッてすべてこっち側の自分が白い光として相手に与えてしまいます。相手って、相手も自分なんだけど。
これを呼吸に合わせて繰り返していきます。つまり自分で自分を癒す瞑想ですね、これは。
はい、じゃあまずこれを少し繰り返しましょう。
自分が過去から心の奥に隠してきたさまざまなネガティブな思い、卑屈さ、後悔の気持ち、こういったものをすべてグーッと吸い取ってあげて、それに対する許しや癒しや安らぎをパーッて与えることを繰り返します。
◎愛する人へのトンレン
はい、みなさん家でこれをやるときは、一個一個プロセスを十分にやった方がいいと思いますが、今日はちょっとパッパッと次に移ります。
次のプロセス。今度はいったんその目の前の自分を消して……今度は目の前に、自分の愛する人を一人思い浮かべてください。誰でもかまいません。家族でもいいし、恋人でもいいし、友人でもいいし、あるいは憧れてる人でもいいので、自分の好きな愛する人を誰か一人チョイスして、目の前にリアルに思い浮かべます。
はい、そしてその目の前の愛する一人の人が、何らかの形でとても苦しんでいる姿をイメージしてください。何でもいいです。精神的、肉体的、あるいは極端にいえば地獄に落ちて苦しんでるでもかまわない。何らかの形でその愛する人が苦しんでいます。それを見て、当然その愛する人が苦しんでいるので、自分の中に強い慈悲の思いが湧いてきます。で、これは瞑想なので、意識的に湧き起こさせてください。意識的に、「ああ、かわいそうだ」と、「なんとかしてあげたい」と。もっといえば「自分が身代わりになってもいい」「なんとかこの苦しみから彼を救ってあげたい」っていう強い思いを意識的にグーッと湧き起こさせてください。
はい、そしてその強い慈悲の思いを持ったまま、また自分の呼吸に集中して、息を吸うたびにその愛する人の苦しみが黒いエネルギーとなってグーッと自分の中に吸収されるイメージをします。逆に息を吐くたびに、自分の中の幸せのエネルギーがパーッと白い光となってその愛する人に注がれるイメージをします。はい、これを呼吸とともにゆったりと繰り返すことで、目の前の愛する人はどんどん苦しみから解放されて幸福になっていくというふうにイメージします。
逆に自分自身は、その相手の黒いエネルギーを吸い取ってるんだけど、それで自分がけがれたりはしません。逆に自分の中のエゴが破壊されて、より純粋で透明な自分になっていくというふうにイメージします。はい、ではこのイメージを少しまた呼吸に合わせて繰り返しましょう。
◎人数を増やす
はい、ではこれをさらに続けながら、目の前の愛する人の人数を増やしていってください。つまり一人ではなくて、二人、三人と、好きな人、愛する人を思い浮かべてください。この段階ではまだ愛する人だけでいいです。自分が愛してる人、あるいはこの人に愛情を持ってるって思う人を一人、二人、三人と、だんだん増やしていきます。で、全く同じことをします。みんな、その愛する人々が苦しんでいて、その苦しみを全部グーッと自分が呼吸とともに吸い取り、自分の幸せをすべてパーッて彼らに与えるっていう瞑想をまた繰り返します。
◎無関心な人へのトンレン
はい、次にまだその瞑想を継続しながら、目の前の人々の中に、好きでも嫌いでもない人を入れていきます。つまり知り合いで、別に好きでも嫌いでもない、あるいは顔を知ってるし名前も知ってるけどあまりよく知らないとか、そういう人々。つまり無関心になりがちな、好きでも嫌いでもない人を一人一人思い出して、目の前のその輪の中に入れていきます。で、全く同じことをします。つまりあまり自分が関心がない、好きでも嫌いでもない人たちも苦しんでいる。その苦しみをまたグーッと吸い取る練習をします。逆に自分の幸せを彼らにも分け隔てなくパーッと与える瞑想をします。呼吸とともにね。この辺からちょっとエゴが嫌がり出します。ちょっとやりにくくなってきますが、思い切ってやってください。
◎嫌いな人へのトンレン
はい、次はまたその瞑想を続けながら、いよいよ今度は自分の嫌いな人を目の前のグループに入れていきます。嫌いな人がもしいなかったら、苦手な人とかでもいいです。つまりちょっとネガティブなイメージを抱きがちな人。過去にちょっと嫌なことをやられたとか、そういった苦手な人、嫌いな人、そういう人々を目の前にまた思い浮かべます。で、全く同じことをします。
つまりその自分の嫌いな苦手な人々もまた苦しんでいて、で、その苦しみを呼吸とともに黒いエネルギーとしてグーッと吸い取ります。で、逆に息を吐くたびに、自分の中の幸せのエネルギーを白い光と変えて、パーッとその嫌いな人々にも捧げる瞑想をします。これによってその目の前の人々はどんどん幸福になり、苦しみから解放されます。自分はというと、よりいっそう透明、純粋な状態になっていくっていうふうにイメージします。はい、ではしっかりと呼吸に合わせてイメージを繰り返しましょう。
◎すべての衆生へのトンレン
はい、では最後に、目の前に自分がイメージできる限りのこの宇宙の多くの生き物、つまり人間だけじゃなくて、動物やあるいは他の生命体も含めて、多くの宇宙の生き物を思い浮かべ、同じことをします。つまりもうこの宇宙の全部の苦しみを自分一人で引き受けるぐらいの気持ちで、グーッと黒いエネルギーを吸い取ります。逆に自分の中の幸せはすべてこの世界に差し出すような気持ちで、パーッと白い光を吐き出します。これによってこの宇宙のすべての生き物がどんどん幸せになり、苦悩から解放されるというふうにイメージします。逆に自分はよりいっそう純粋、透明な状態になっていくっていうふうにイメージします。
はい、ではしばらく繰り返しましょう。これはみなさんの心を強烈に浄化して、非常に幸福感を与える瞑想です。
あとチベットではこれは病気の治療にさえ使われている瞑想です。病気も治ってしまうぐらいの力がある瞑想ですので――病気って自分の病気がね、治ってしまうぐらいの力があるので、しっかりと心をこめてやってみてください。
◎心を安定させる瞑想
はい、では瞑想を終わりましょう。さっきも言ったように、瞑想もいろんな瞑想がありますが、一つ一つしっかりと身に付けていけばかなり――例えば今やった瞑想もね、非常に力があります。非常にわれわれの心を改革してくれるものがあるので――まあ今の瞑想なんてね、本当に、「さあ、はい、瞑想しましょうか」ってかしこまってやらなくても、普段からやってもかまわない。普段こう道を歩いてて、いろんな人を見かけて、「みんなの苦しみよ、はい、グーッと来い」と。「自分の幸福は、パーッとみんなに行け」ってやるだけでも相当力があります。力があるっていうのは何度も言うけども、自分の心が非常に安定します。
ちょっとなんか逆説的なんだけど、本当なんです(笑)。これをみなさんがしばらくやっていると、あれ!?って感じで安定します。
これはだから心の仕組みを利用してるんです。だから一つ一つの瞑想が非常に深い意味があるので、ぜひ固めてほしいですね。
はい。で、これから段階的にまたさまざまな行法を、次のもの、次のものっていう感じで教えていくようになると思います。
はい、ではいったん行法の実習はこれで終わりにして、あいさつとして、さっきのね、ア・ウ・ンのマントラがありましたよね。あれを三回声を合わせて一緒に唱えます。さっきはちょっとバラバラに唱えましたが、三回、ちょっと短めに一緒に唱えます。これはインドのヨーガ道場とかでやるあいさつ。これをみんなでやります。三回ね。はい。
【アウム】
はい、ありがとうございました。
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