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モトゥルナート・ビスワスの生涯(2)

 
 奉納の式典の三か月後、ヴィシュヌ寺院にあるクリシュナの像が壊れ、寺院の僧が解雇された。シュリー・ラーマクリシュナが後任に任命されたが、一年もしないうちに聖母カーリーの祭司という兄の仕事を引き継ぎ、彼の霊的な探求が始まった。その後の14年間のシュリー・ラーマクリシュナの人生の中で、モトゥルは非常に重要な役割を果たした。シュリー・ラーマクリシュナはのちにおっしゃった。

「あのような神聖で高揚した状態にあって、わたしはもはや決まりきった礼拝を行なうことができなかった。
 わたしは言った。
『母よ、誰がわたしの面倒を見てくださるのですか? わたしは自分の面倒を見る力がありません。あなたに関する話だけを聞きたいです。あなたの帰依者に食事を供養したいです。わたしが偶然出会う人々を少しばかり手助けしたいです。どうしたら、これらすべてが可能になるのでしょうか、母よ? わたしを援助してくれる裕福な者をお与えください。』
 そういうわけで、モトゥル・バーブがわたしに大変よく尽くしてくれたのだよ。」

 寺院の職員はすぐに、シュリー・ラーマクリシュナの変わった振る舞いと礼拝の仕方に気付いた。彼は祭壇に上がって、聖母に愛情を示して軽く触れられたのだ。彼は歌い、笑い、冗談を言い、彼女とお話しになった。ときには母に捧げられる前に供物の食べ物を召し上がることもあったし、猫にその供物を与えてしまうこともあった。職員たちがモトゥルに不満を漏らすと、シュリー・ラーマクリシュナの行動を決して邪魔しないようにとモトゥルは彼らに求めた。彼は自分でその状況を見たいと思った。
 ある日、モトゥルは連絡もなしにドッキネッショルを訪問し、寺院の中でシュリー・ラーマクリシュナをこっそりと観察した。彼が見たことから判断すると、シュリー・ラーマクリシュナは精神障害ではなく、あのような彼の礼拝のやり方は聖母への心からの深い愛の結果であると確信した。彼はすぐに、非凡な礼拝者を得たとラーニー・ラースマニに語り、シュリー・ラーマクリシュナの好きなように礼拝を行なわせるようにと、寺院の職員たちに伝言を送った。
 しかしそれでも彼は、シュリー・ラーマクリシュナの安全に気をもんでいた。師への愛情と敬愛が日に日に増すにつれ、師に対する懸念も増していった。

 ある日、シュリー・ラーマクリシュナはシヴァ寺院の一つに入って行かれ、以下の詩を含む、シヴァの賛歌、シヴァ・マヒンナハ・ストートラを朗唱し始められた。

 おお主よ、青い山がインクなら、大洋はインク入れ
 天界の木の一番大きな枝はペンであり、地球は文字を書ける葉
 知識の女神が永久にお書きになっても、
 それでも、汝の栄光を書きつくすことは決しておできにならないでしょう。

 シュリー・ラーマクリシュナはこの詩を朗誦なさると、感情で胸がいっぱいになった。涙が頬を伝い、声をあげてお泣きになった。

「おお主よ、どうしてあなたの無限の栄光を表わすことができましょうか?」

 寺院の使用人と役人はすぐに彼の周りに集まり、冗談でこのように言った。

「彼はいつもよりいっそう狂気じみている。」

「彼はシヴァの肩に登るつもりじゃないか? 彼を寺院の外に引っ張り出す時間はまだあるぞ。」

 その間にモトゥルが寺院にやってきた。シュリー・ラーマクリシュナが神の像に接近していたので、彼を祭壇から無理矢理引き離そうと、役人の一人が真剣に提案した。

「君がクビになってもいいなら、彼に触れなさい!」

とモトゥルは激しく言った。間もなくシュリー・ラーマクリシュナは外界の意識を取り戻された。モトゥルと彼の周りにいる役人たちをごらんになり、おびえている子供のようにお尋ねになった。

「わたしは何か間違ったことをしましたかい?」

「いいえ、違います。」

とモトゥルは答えた。

「あなた様はちょうど賛歌を朗唱しておられました。誰にもあなた様の邪魔をさせないように、わたしはここに参ったのです。」

 しかしシュリー・ラーマクリシュナが、カーリー寺院の聖廟に座って訴訟事件に思いを巡らしていたラーニーの頬を引っぱたいたとき、モトゥルは彼の正気を疑った。シュリー・ラーマクリシュナのいつもの振る舞いは精神異常によるものか、神聖な陶酔によるものか、どちらなのかモトゥルは確信を持てなくなった。それでラーニーの同意を得て、ガンガー・プラサードという有名な医者の予約を取り、綿密な検査と薬の処方を師に施した。正常な状態に彼のお体が回復することを願って、モトゥルはまた特別な食事と冷たい飲み物を用意した。
 またある日、彼らは彼の部屋に売春婦を連れて行った。

「わたしを試験し、またわたしの狂気を治すためでもあった。」

 のちにシュリー・ラーマクリシュナは信者に語られた。

「彼女はかわいらしい目を持ち、見た目は美しかった。わたしは『おお、母よ! おお、母よ!』と叫んで、急いで部屋から出て行ったよ。ハラダリのもとに走って行って、彼にこう言った。

『兄弟、わたしの部屋に入っていた人を見に来てよ!』

 わたしはハラダリとほかの者皆に、この女性のことを話した。」

 モトゥルの疑いはまだ残っていた。師をさらに試そうと考え、彼はある日、こう言った。

「神でさえご自身の法に従っております。法が神によって定められると、彼でさえそれを破ることはおできになりません。」

 シュリー・ラーマクリシュナはお答えになった。

「本気で言ってるのか? 法をお作りになった神が強くお望みになるなら、それを壊すこともおできになるし、別の法に置き換えることもおできになる。」

 しかしモトゥルはこの見解を受け入れることを拒み、こう言った。

「赤い花の木がただ赤い花を咲かせ、決して白い花を咲かせないというのは、神がお作りになった法です。彼が赤い花の木に白い花を咲かせることができるなら、お見せください。」

 シュリー・ラーマクリシュナは自信たっぷりにお答えになった。

「よろしい。彼はあらゆることをおできになるのだ――赤い花の木に白い花を咲かせることさえね。」

 翌日、松林へ行く途中に、シュリー・ラーマクリシュナは二つの花をごらんになった。それらは赤いハイビスカスの木の同じ枝の上に咲いていて、一つの花は赤く、もう一つはまばゆいばかりの白だった。彼はすぐに枝を折り、モトゥルのもとへお持ちになった。当然、モトゥルは驚き、シュリー・ラーマクリシュナにこう言った。

「ええ、ババ。わたしの負けでございます。」

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