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パドマサンバヴァの秘密の教え(114)「口頭での教えの伝統を保持する」

 王はまた次のように問うた。

「『口頭での教えの伝統を保持する』とはどのような意味でしょうか?」

 師はお答えになった。

「祝福の意味を込めて、サマンタバドラはこれらの秘密の教えを、ヴァジュラサットヴァの耳にささやき説いた。
 ヴァジュラサットヴァはこれプラへーヴァジュラの耳飾りに封じ込めた。
 プラへーヴァジュラはこれをシュリーシンハの心に託した。
 シュリーシンハはこれを私、パドマサンバヴァに授けた。
 ティソン・デツェンよ、これらをあなたの心の核心に保ち続けなさい。」

 師はさらに、王に次のように指示をした。

「王よ、あなたがダルマターの生じることのない本質を理解しない限り、王としての身体に生まれたにも関わらず、あなたの人生は水の泡のように過ぎ去ってしまう。
 あなたが思考を超越した生来のダルマターの本質を経験しない限り、虹のように実体のないあなたの王国とこの世の権力は、衰え、消滅する。
 あなたがあなたの友人である自立した覚醒と共にあり続けない限り、あなたがこの世を去るとき、旅の途上に取り残された知人に過ぎない、あなたの妃、家来たち、そして臣民たちに対する愛着を断ち切ることができないであろう。
 あなたが、見解と瞑想の生来の状態を習慣づけない限り、あなたはある人生から次の人生へと、出生によってこの世に生まれ、死によってこの世から去り、水車の縁に乗るように転生し続けるであろう。
 あなたが自らの王国を慈悲という真実で治めない限り、厳格な法律は自らを破壊する毒を持った木のようである。
 偉大な王よ、私はあなたがダルマにかなった統治をするよう嘆願する。」

 また師は、次のようにも王に指示をした。

「王よ、この時代の終わりに、人々は優れた教え渇望するであろうが、それらを理解できないであろう。ダルマの言葉に従わないことによって、多くの人々は修行者であることを装うであろう。その時には、大言を吐く人は数多くいるだろうが、成就を得た人はわずかであろう。
 やがて中国、チベット、そしてモンゴルにおいてブッダのダルマに終止符が打たれるとき、人々を教えに従わせるのは難しくなるだろう。
 その時には、これらの教えがブッダのダルマを守らなくてはならないので、あなたはこの教えをテルマの宝物として隠さなくてはならない。
 王よ、あなたの最後の人生において、あなたはこれらの教えとブッダのダルマを守る人々に出会うであろう。そのときあなたは輪廻の流れをせき止め、ヴィディヤーダラの境地へと進むであろう。
 故に今はまだこれらを明らかにしてはならない。」

 王は歓喜に包まれて、黄金でできた曼陀羅の供物を捧げ、数限りない五体投地と右周りの礼拝を行なった。

 宝の封印をせよ。

 隠し場所の封印をせよ。

 委託の封印せよ。

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