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要約・ラーマクリシュナの生涯(11)「サーダナーと神の酩酊」③

 このように母なる神の中に没入しているゴダドルの境地は、それを理解できない者が客観的に見ると、奇妙な光景に映ることが多かった。後にフリドエは、この頃に目撃したゴダドルの一見奇妙な行動を、次のように語った。

「私は、おじさん(ゴダドル=ラーマクリシュナ)がハイビスカスとビルヴァの葉でできたアルギャを用意し、それで自分の頭と胸と四肢と足にまで触れ、その後にそれを宇宙の母の蓮華の御足に捧げるのを見ました・・・・・・。」

「私は彼の胸と目が、酔っぱらいのように常に赤みを帯びているのを見ました。その状態でよろめきながら、彼は礼拝者の席を立ち、祭壇に上って愛情深く母なる神のアゴに手を触れながら彼女を愛撫し、歌ったり笑ったり、彼女と冗談を言ったり話したりし始めました。ときには彼女の両手を取って踊ることもありました・・・・・・。」

「私は、彼が母なる神に調理された食物その他を捧げながら、突然立ち上がり、一口分のご飯とカレーとを皿から取って母なる神の口元に持っていき、『母よ、お上がりなさい。さあお上がりなさい、母よ』と言うのを見ました。その後で、たぶんこう言ったのでしょう、『私に食べよと仰るのですか。あなたは後で召し上がるのですか。けっこうです。私が食べます』。そう言いながら彼は一部分を自分で食べ、残りをまた彼女の口に持っていって、『私は食べました。今度はあなたがお上がりなさい』と言いました。
 またある日私は、食物奉献のときに、猫がニャーニャー鳴きながら正道に入ってきたのを見ました。彼は、『どうぞこれを召し上がれ、母よ』と言いながら、母なる神に捧げるはずの食物をその猫にやりました・・・・・・。」

「ときには、彼が夜、『私に横になれと仰るのですか。わかりました、そうします』と言いながら、しばらく彼女の銀のベッドの上に横たわるのを見ました・・・・・・。」

「私はまた、彼が礼拝に座って深く瞑想に没入し、長い間外界に対して全く意識を持たないでいるのも見ました・・・・・・。」

「おじさんは朝たいそう早く床を離れ、母神カーリーに捧げる花輪の花を集めました。そのときもやはり私には、そこに誰かがいて、彼がその人を愛撫し、ともに語り、笑い、冗談を言い、大いに浮かれてしつこくせがむ子供を演じているのだと思われました・・・・・・。」

「さらに私は、おじさんが夜一睡もしないのを見ました。私が目を覚ましたときにはいつも、霊的感動に圧倒されて、話をするか、歌うかしていました。ときにはパンチャバティに行って瞑想に没入していました。」

 
 フリドエ以外の人々もたびたび、このようなゴダドルの奇妙な振る舞いを見て、カーリー寺院の職員たちに文句を言った。職員たちはそれを聞いてやってきて、すべてを見た。しかし、何かの力に動かされているかのようなゴダドルの熱のこもった容貌、ためらいのない振る舞い、恐れを知らぬ内的集中状態を見て不思議な恐れを感じ、何を言うことも、止めることもできなかった。彼らは事務所に帰って相談した結果、
『彼は気が狂ったか、または幽霊に取り憑かれたに違いない。でなければ、礼拝のときに、あんなふうに聖典に基づかないやり方で行動はできない。ともかく、礼拝も供養も、その他の祭祀も、実際は行われていないのも同然だ。彼が一切をダメにしてしまっている。寺の持ち主に相談するより他に道はない。』
という結論に達した。

 こうしてゴダドルの奇妙な振る舞いは、モトゥルに報告された。モトゥルは、
「じきに自分が行ってみて適当な処置をするので、それまでは彼に自由に礼拝その他の奉仕をさせ、それを妨げないようにせよ」
と手紙で言ってよこした。職員たちは手紙を受け取り、
「彼は今度は解雇されるに違いない。バブーが来たら、きっと追い出すだろう。神々を怒らせたのだもの! 彼らがいつまでも許しておおきになるはずがない」
などと盛んに言い合いながら、モトゥルの到来を待ちわびた。

 ある日モトゥルは誰にも知らせずに突然やってきて、ゴダドルの行動を、長い間つぶさに観察した。ゴダドルは霊的感動に満たされ続けており、モトゥルには全く気づかなかった。この状態が、モトゥルがまず注目したことだった。
 またモトゥルは、ゴダドルの振る舞いを観察して、すべては彼の、母なる神へのひたむきな信仰と愛から生じているということを理解した。もしこのような誠実でひたむきな信仰が神の悟りをもたらすことができないのだったら、他の何がそれをなし得るだろうと、彼は思った。
 礼拝中のゴダドルの目からときどき涙が流れ落ちるのを見たとき、そして彼がときには誠実な無上の喜びを感じ、ときには外界意識を全く失って不動になるのを見たとき、モトゥルの心は深い至福に満たされた。モトゥルは、神聖な聖堂内が現実に、生きた神の実在の手に触れうるような強烈な雰囲気に満たされているのを感じた。
 モトゥルは、ゴダドルが本当に宇宙の母の恩寵を受けているのを確信した。目にいっぱいの涙を浮かべ、心は信仰心に清められて、モトゥルは、
「女神をここに奉斎したことの目的はついに達せられた。今は、女神が本当にここに鎮座ましまし、真の礼拝がここでおこなわれている」
と考え、母なる神とその非凡な礼拝者に、遠くから幾たびも敬礼した。彼はそのまま事務所には何も言わずに家に帰り、翌日、「彼がどのような方法で祭祀をおこなっても、それを妨げてはならない」という命令を職員たちに送った。

 この頃からしばらくの間、信仰の愛の大波の故に、様々な異常な変化がゴダドルの身体を襲った。修行の最初の時期からあった身体が焼けるような感じが、しばしばいっそうひどくなって苦しんだ。

 このことについて、ラーマクリシュナは後に弟子たちに向かってこのように話している。

「サンディヤーや礼拝をおこなっているときに、私は、聖典の指示に従って、内なるパーパプルシャ(過去の悪いカルマが擬人化されたもの)は焼き尽くされた、と考えた。しかし当時(実際に)身体の内部にパーパプルシャなるものがいて、またそれが実際に焼き尽くされ滅ぼされうるものだなどとは誰が知っていただろうか?
 焼け付く感じは、サーダナーを始めた頃から身体を襲っていた。私は『この病気は何だろう?』と思っていた。それは次第に悪化し、耐えられないものとなった。医師の指示で様々な薬をつけたが、どうしても良くならなかった。
 ある日、パンチャバティの下に座っているとき、私は、赤い眼の恐ろしい様子をした真っ黒な人間が酔っぱらいのようによろめきながらここ(自分の身体)から出てきて、私の前を歩くのを見た。私はまた、黄土色の衣服を着て三叉戟を持った落ち着いた風采のもう一人の男が身体から出てきて、先ほどの男を激しく襲い殺すのを見た。身体の焼ける感じは、そのヴィジョンを見た後、少しの間は軽くなった。私はそのパーパプルシャが焼き尽くされるまでの間、六ヶ月間、その焼けるような感じに悩まされ続けたのだ。」

 パーパプルシャが焼け尽くされた後、しばらくして、再びゴダドルは、身体が焼け付く感じに襲われた。これは、ゴダドルの神への信愛が、一般の限度を遙かに超えてしまっていたからであった。焼ける感じはどんどん強くなり、それは、頭上に濡れタオルを乗せてガンガーの中に三、四時間身体を浸していても治らないほどだった。

 さて、モトゥルは、ゴダドルがおこなっている並外れた礼拝のことを、ラニ・ラスモニに話した。信仰深いラニは、それを聞いて非常に喜んだ。

 しかしその後、母なる神の絶えざる示現によりゴダドルの信仰と高揚は極まり、毎日の勤行も時折の女神の祭祀も、全くおこなうことが不可能になってしまった。彼は常に霊的ムードに我を忘れ、好きな時間に好きなやり方で母なる神を礼拝した。また、もし母なる神に没入して我を忘れるその状態が少しでも薄れ、少しの間でも母を見ることができないと、圧倒的な不安感に襲われて地に倒れ伏し、地面に顔をこすりつけて激しく泣いた。このようなときは死にものぐるいで息も止まりそうであり、切り傷で全身が血だらけになっても、火の上に転んでも、水中に落ちても気づかなかった。

 ゴダドルのこのような状態を知って、モトゥルは、ゴダドルが寺院の規則的な礼拝をおこなうことはいよいよ不可能になったと知り、仕事を探しに来ていたゴダドルの従兄弟のラームターラク・チョットパッダエに、ゴダドルが通常の状態に戻るまでの間、女神の祭祀を司るようにと命じた。これは一八五八年のことであった。

 ゴダドルはラームターラクのことを、いつもホロダリと呼んでいた。ホロダリは優れた学者であり、聖典に命ぜられている儀式や行為に熱心なサーダカであった。「バーガヴァタ」や「アディヤートマ・ラーマーヤナ」などの聖典に詳しく、毎日それらを読んでいた。

 そしてその後一ヶ月ほどしてから、今度はフリドエがカーリー女神の祭祀の担当となり、ホロダリはラーダーゴーヴィンダの祭祀を任されることとなった。

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