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パトゥル・リンポチェの生涯と教え(87)

◎似た二人

 パトゥルとミパムは、ライフスタイルという点で非常に共通していた。パトゥルは在家修行者の衣をよく着ており、ザチュカ、ゾンサル、デンコクなどの人里離れた地の隠遁所で多くの時間を過ごしていた。ミパムもまた、型にはまらない行動をとった。
 あるときミパムはジャムヤン・キェンツェー・ワンポに会うために、ゾンサル僧院へ向かって旅していた。リュックを背負って、ずっと独りで歩いていた。突然、ミパムは追剥ぎのギャングに襲われ、リュックを降ろして彼らに渡すようにと命令された。

 ミパムは言った。

「どうぞ、持って行ってください! 私の持ち物はご自由にお使いください!」

 そしてリュックを彼らにあげると、大きな岩の上に静かに座って、祈り始めた。
 そこに座って祈りを唱え、くつろいでいると、小さな薬瓶が衣の中に入っていることを思い出し、それを取り出した。瓶はメノウ石でできていて、中国の散薬が入っており、ミパムはよく鼻の病気の苦痛を和らげるため、それを鼻から吸っていた。
 ミパムが鼻からその散薬を吸っているのを見た追剥ぎの一人が近づいてきて、こう言った。

「おい、おまえ! 金品を奪られたってのに、えらい幸せそうじゃねえか! その立派な小瓶も、渡してもらおうか?」

 そう言われると、ミパムは立ち上がり、完全に別人のようになった。

「わたしは、偉大な王ゲサルの大臣である!」

 ミパムは怒鳴った。

「おまえのような貧弱な能なしが、私に盾突こうというのか?」

 ミパムは巨大な岩を持ち上げて、それにあるマントラを吹き込み、それをパチンコにつがえると、まるで小石を飛ばすかのように、軽々とその巨大な岩を追剥ぎに向けて飛ばしたのだった。追剥ぎたちは恐ろしくなって逃げ出した。
 ラマ・ミパムは、追剥ぎたちが置き去りにしていったリュックを拾うと、それを背負い、またのんびりとゾンサルに向けて旅を続けていったのだった。

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