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パトゥル・リンポチェの生涯と教え(30)

◎とある僧の懺悔

 シュリーシンハ哲学大学での、月に二回、僧たちが参加することを義務付けられている、ソジョンという懺悔の会の日のことだった。寺院に招集をかける合図の銅鑼が鳴った。皆は遅れないように駆けだした。手に杖を持って、継ぎはぎのフェルトのチュバ(コート)を着たパトゥルも(彼は夏もチュバを着ていた)、寺院へと向かっていた。

 大勢の人々が寺院へと駆け込み、階段を急いで登って行った。みすぼらしいパトゥルはその群集の中にいた。突然、ある僧がパトゥルを後ろから押しのけ、パトゥルはそれでバランスを崩して、階段から転げ落ちてしまった。パトゥルを乱暴に押しのけた僧は、パトゥルを、サンガしか参加できない儀式にこっそりと潜入しようとした乞食の泥棒だと勘違いしていたのだ。

 ようやく全員が寺院の中に入り、座を取った。その僧も席に座った。そして彼が講壇を見上げると、その玉座には、ソジョン(懺悔)の会の指揮を任された人物が座っていた。そして、その玉座に座っていた人物とは、その僧が先ほど乱暴に押しのけたみすぼらしい男、パトゥルだったのである。

 その最悪な状況をどうにかしようと、顔面蒼白となったその僧はすぐに立ち上がり、公然と述べた。

「私は、懺悔すべき罪を犯してしまいました。そして、私が危害を加えてしまったその御方の前で、私はその罪を懺悔いたします!」

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