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パトゥル・リンポチェの生涯と教え(101)

◎パトゥルがある遊牧民の一家に騙される

 パトゥルがザチュカに帰っていたときのある日、パトゥルが小さなヤクの毛のテントを設営している場所からそう遠くないところで、裕福な遊牧民の一家の祖父が亡くなった。一家は、祖父のために儀式を行なってくれるようパトゥル・リンポチェに頼もうと思ったが、パトゥルがそれに同意してくれる可能性は極めて低いということを知った。
 そこで、パトゥルの性格――特にパトゥルが慈悲深いということを知った長男は、面白い作戦を立てた。家族の願いが無事に叶うことを願って。
 長男は祖父の死体を、古くて汚い巨大なフェルトで包み、次に、祖父がコレクションしていたサンゴやトルコ石などの高価な石を、古くて価値のある黒い茶碗と一緒に、使い古された汚い皮袋で包んだ。そして、死体を粗末に包んだものの上に、その汚い袋をそんざいに結びつけ、それを丸ごと、とんでもなく寒い寒空の下、一家のテントの入口からさほど離れていないところに捨てた。
 長男は根気強く待っていた。そして遂に、パトゥルが一家のテントの前を通った。息子はパトゥルに向かって叫んだ。

「ラマ・ラ! どうか、よろしければ、お入りになってわれわれとお茶を飲んでいってください!」

 パトゥルは同意し、テントの中に入った。そしてヤクの毛皮の小さな絨毯の上に座を提供され、お茶を供養された。
 お茶をちびちびと飲みながら、パトゥルは長男にこう言った。

「テントの入口の外に捨ててある袋みたいなものは何ですか?」

「あれですか? ああ、まあ、特にたいしたものではありませんよ。」

 長男はさわやかに答えた。

「さきほどぽっくりと死んでしまった召使いの死体です。身よりもない哀れな男でした。鳥葬場まで運んでくれる者がここにはいなかったので、そこに捨てて、そのままにしておいただけです。ラマを呼んで祈りを唱えたり、ポワの儀式をやってもらう必要はありません。だって別に、誰も気にしないでしょう?」

 すぐにパトゥルは祈りを捧げ、意識の移し替えの儀式を執り行なった。そしてパトゥル自ら近くの鳥葬場に遺体を運んで行き、処理した。
 包まれた死体を背負ったとき、パトゥルは汚れた皮袋が縛ってあることに気づき、その中身を長男に尋ねた。

「それですか? ああ、特にたいしてものではありませんよ。」

 長男は先ほどと同じように、さわやかに答えた。

「それは、その老いた召使いが、最初ここに来たときに持っていたものですが、われわれはその中身について何も知りません。誰も、その汚い袋を開けてみようと思ったことさえありません! 持って行って、好きなようにしてください!」

 パトゥルは死体とその袋を持って行った。頭の切れる長男は、非常に満足した。なんとかしてパトゥルに祖父のための意識の移し替えの儀式を行なってもらえただけでなく、うまく誤魔化して布施まで受け取ってもらえたのである!

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