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パトゥル・リンポチェの生涯と教え(終)

◎彷徨からグルに呼びかける:信仰と渇仰の歌

――三つの系統の祝福の懇願――

 わが師に、恭しく礼拝いたします。

 原初の土台の広がりは、不変。
 輪廻とニルヴァーナが不可分である純粋なる領域において
 何も修飾されていない空性の意識の広大な広がりの中で
 一切の現象は、絶対なる本性ダルマターにおいて完全に枯渇している。
 ダルマカーヤであるグル、ティメ・ウーセルよ、原初仏よ
 スガタの曼陀羅の一切に遍在する主よ、どうかわたしのことを思ってください!
 
 現われと空性が不可分である純粋なる領域において
 生起と究竟の段階は合一する。
 マハームドラーの広大なる広がりの中で
 すべての道と段階は、原初の土台において完全完璧である。 
 サンボーガカーヤのグル、キェンツェー・ウーセルよ、眩い鏡のような本性の存在よ
 原初の智慧の主よ、どうかわたしのことを思ってください!

 存在を変容する無数の顕現は 
 原初の智慧、偉大なる至福、
 巧みな方便をもった無条件の慈悲において、すべて一味である。
 ニルマーナカーヤのグル、根本グルよ、慈悲の権化よ
 菩薩たちの主よ、どうかわたしのことを思ってください!

 三身の系統は、勝者たちの”心から心に受け継がれる伝承”において
 一つとして顕現する。
 あなたは、非二元的現象世界である曼陀羅の大海であるがゆえに
 絶えず存在する原初の智慧
 覚醒の空性のエッセンス、変化身の土台であります。 
 一切の帰依処、師やブッダが一つとなった御方よ、どうかわたしのことを思ってください!

 悟りの境地である、ブッダの智慧の究極の広がりは
 原初の広がりであり、意識と切り離すことができない。
 この完璧なる純粋な広がりは、大海のような至高なるダルマによって示される。
 この智慧を悟った者たちが、至高のサンガを構成する。
 三宝が一つのものとして集結した根本グルよ、どうかわたしのことを思ってください!

 ダルマカーヤのブッダの本性は、
 一切の現象が枯渇して生じる智慧の心である。
 サンボーガカーヤの生起する曼陀羅は、
 その究極の場所に到達する意識の輝きである。
 ニルマーナカーヤは、
 生じ、拡大する意識そのものとして顕われる。
 三身が一つのものとして集結した根本グルよ、どうかわたしのことを思ってください!

 あなたは、一切の師が一体となった御方であり、さまざまな姿に見事に顕現しておられます。
 あなたは、不可分の広がりという曼陀羅の大海の主。
 あなたは、その悟りの力で、真の本性という空を飛翔しています。
 三つの根本(グル、イダム、ダーキニー)が一つのものとして集結した根本グルよ、どうかわたしのことを思ってください!

 輪廻を恐れることなく、あなたの心は、止めることのできない慈悲を備えておられます。
 ニルヴァーナに固執することなく、
 あなたの智慧の心の広がりは、勝者のそれと一体です。
 あなたは、見解という種を悟りという果実に成熟させました。
 一切のブッダそのものであられる根本グルよ、どうかわたしのことを思ってください!

 あなたは、衆生の前に有用な姿で巧みに現われる。
 あなたの慈悲と智慧と大いなる純粋性は、菩薩のしるし。
 あなたの瞑想と後瞑想は、原初の智慧の中で完成されています。
 勝者の素晴らしい行ないを成し遂げる恐れなき菩薩よ、
 勝者の継承者よ、どうかわたしのことを思ってください!
 
 幸福を奪われて、苦しみという厳しい現実に耐える衆生に対して
 あなたの心は四無量心で溢れんばかり。
 至高なる歓喜と一体である無条件の慈悲で溢れかえった
 菩薩の勇敢なる継承者よ、どうかわたしのことを思ってください!

 片手で迷妄を取り払い
 優れた道を示しながら
 あなたは、道を進むわれわれを導かれます。
 あなたは、自ら修行し、自ら布施を実践して
 六つのパーラミターに従事することで、実例によって道を示されるのです。
 変革される必要がある衆生を引き付ける、
 四つの巧みな方便という智慧を携え、
 利他行を成し遂げる恐れなき継承者よ、どうかわたしのことを思ってください!

 完全に純粋な広がり――悟りの境地のエッセンス――は、
 土台のダルマカーヤ。
 浄化の道の悟りは、均衡のダルマカーヤ。
 浄化の結果――二重の浄化――は、究極のダルマカーヤ。
 一つのものとして集結した三つの系統を示すグルよ、どうかわたしのことを思ってください!

 見解によって、あなたは真の本性、遮られることのない覚醒の空性にとどまる。
 あなたはその果実――拒絶と願望から解放された原初の解放――を楽しむ。
 見解、瞑想、行為、結果が一体となった無造の原初の智慧の、
 優れた偽りなき道を身をもって示してくださる師よ、どうかわたしのことを思ってください!

 誤った信仰によって誤った方向に導かれ、
 無知によって引き起こされる迷妄の増大に覆われてしまい、
 悪しき道へと入ってしまった衆生に対し、
 あなたは、困惑することのない、堅実な誤りなき道を示されます。
 解脱の道にわれわれを導くグルよ、どうかわたしのことを思ってください!

 一度、真の本性へと解放されれば、
 悪しき想念、悪しき思考は、
 通常のように増大、展開していくことはなくなる。
 一度、心の本性へと導き入れられれば、
 悟りは、自発的に生じる。
 求めることなく、拒絶することなく、
 人は、至高なる行為に従事する。
 ダルマカーヤの原初の智慧をお与えくださるグルよ、どうかわたしのことを思ってください! 

 無努力【自然】の境地においては
 人の意志は、努力する必要なく達成される。
 概念なき、原初の智慧の修行は
 けがれなくシンプルであること――それは迷妄を粉々に砕く。
 ”目覚めている”という状態は、
 瞑想を必要としない禅定である。
 われわれを直接的に内なる智慧の心に導き入れてくださるグルよ、どうかわたしのことを思ってください!

 一切の無智を滅ぼす智慧を見るということが、
 究極の達成。
 結果として生じる洞察力は、知るべきことをすべて包含し、
 それゆえに、人を一切衆生の導き手にする。
 輪廻とニルヴァーナを超えた境地に達した、
 一切の見返りを持たない愛を持つ慈悲深き主よ、どうかわたしのことを思ってください!

 師よ、どうかわたしのことを思ってください! 
 どうか、わたしのことを覚えておいてください!

 この哀調を帯びた詩「彷徨からラマに呼びかける」は、
 深い信仰の高まりから現われた。
 最も優しき御方よ、あなたの慈悲とあなたのご加護を希う私の詩が、
 あなたの智慧の耳に届きますように。

 信仰の道は、信ある者たちに頓悟(瞬間的解放)をもたらす。
 ダルマカーヤの連続体の中で、
 日々の活動、後瞑想、そして悟りは、不可分に結合し、
 高まり増大し続けるブッダの活動を通じて
 それぞれがかつて母であった一切の衆生を解放する。
 どうか、無努力の成就が生じますように!
 グルよ、どうかわたしのことを思ってください! 

 ルンドゥプ・ドルジェの懇願により、アブ・シュリー(パトゥル・リンポチェ)は、心に浮かんできたものをすべて書き留めた。
 このアドヴァイスは、師の素晴らしい性質に関するものであるから、 そこには何かしらの利益があるだろう。もし利益があるのならば、それが無量の衆生に捧げられますように。

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