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シュリーラーマチャリタマーナサ(20)「妖怪の行列」

第三章

「妖怪の行列」

 パールヴァティー様は、穏やかは笑みを含みながら答える。

「智慧深い七人の聖者様方! それはなんてよいことでしょう。シヴァ様はカーマデーヴァを焼き滅ぼされたのですね。とすれば、シヴァ様はいままでは欲望に執着されていたということになります。でも、シヴァ様は永遠の不犯の行者です。不生不滅、至高至尊、無私無欲、誰よりも克己心の強い聖者です。わたしがそう信じて、心、体、行為のすべてをあげて愛をもってシヴァ様にお仕えするならば・・・・・・、おお、聖者様方! お聞きください。慈愛心の権化であるあの方が、きっとわたしの誓いを成就させてくださるでしょう。あなた方はいま、シヴァ様がカーマデーヴァを焼き滅ぼされたと申されましたが、大きな思い違いです。霜は火の側には決して近づくことができません。近づけば必ず融けてしまいます。それが火の本質なのです。大神シヴァ様とカーマデーヴァの関係も、そう考えるべきです。」

 この言葉を聞き、パールヴァティー様の愛情と信心の深さをあらためて確認して、七賢人は深く喜び、世の母パールヴァティー女神にうやうやしく頭をさげて立ち去る。七賢人はそのあと、山脈の王ヒマーチャルのところに行って、成り行きを詳しく話して聞かせる。カーマデーヴァが焼かれて灰と化したことを知ると、ヒマーチャルは声を放って嘆き悲しむ。しかし、カーマデーヴァの妻ラティーが無上の神約を授けられたことを知ると、わがことのように喜ぶ。

 シヴァ様のご加護を祈りながら、ヒマチャルは至尊の七賢人を丁重にもてなす。ヴェーダ経典の定めに従って、星宿(星座)、吉祥の日、吉祥の時間を調べさせ、祝賀の日取りを決め記帳させる。こうして結婚契約書をしたため終わると、七賢人に接して、一人ひとりの足に手を触れて善処依頼する。七賢人は結婚契約書を備えて創造神ブラフマー様のところへ行く。読みながらブラフマー様はもう、愛情と歓喜がいっぱいに溢れて心のなかに収まりきれないほど感激される。

 ブラフマー様が声高らかに結婚契約書を読み上げられると、仙人、天人、諸天善神の社会は、いっせいに歓喜のどよめきに包まれる。空からは花の雨と伎楽の妙音が降る。十方の方角に、華やかな祝賀の尖塔が飾り立てられる。天人たちは思い思いの飛行乗物ビーマンを、きらびやかに飾りあげる。そこらじゅう至るところに、幸せを予告する瑞兆が現れる。天女たちは甘美な声で一心に祝いの歌を歌い続ける。

 一方シヴァ様の側近たちは、さっそく花婿としての身なりをととのえにかかる。篷髪を束ねてまげを結い、頭頂には花の冠に代わる蛇の冠を乗せる。蛇で作られた耳飾りと腕輪をつけ、全身に火葬場の灰を塗りたくり、布の代わりに虎の皮を身にまとわせる。秀でた額には二日月の標章、頭髪はガンガーを象る。三個の目玉、蛇の肩かけ紐、喉には毒薬、首から肩にかけて髑髏の首飾り、―――見るからに、不潔不浄のいでたちである。それでいてシヴァ様のご本体は、眉目秀麗、威風堂々、輝くばかりの白皙の肌である。一方の手に三叉鉾、片方の手には鼓が握られている。吉祥の海、慈愛心の宝庫シヴァ様は、そのような恰好で牡牛に跨って先頭を行かれる。楽器が鳴り響く。太鼓が叩かれる。天人たちはシヴァ様の行列を見て、微笑を浮かべながら口々に囁き交わす。

「この花婿にふさわしい花嫁は、いったいどこにいるのでしょかねえ?」

 ヴィシュヌ神、ブラフマー神をはじめとする天界の集団は、それぞれに乗り物を美しく飾りたてて出発する。天人たちは、どこを見ても非のうちどころのない素敵な装いをしている。それだけに、奇怪きわまりないいでたちの、この花婿には似つかわしくない。

 ヴィシュヌ神が各方面の守護神たちを残らず呼び集めて、愉快そうに笑いながら指示される。

「方角の頭領であるみなさん方は、ご自分の一団をまとめてそれぞれに違う道を進まれるのが上策でしょう。わたしどもの行列は、今日の花婿には全くふさわしくありません。他国まで出かけて行って、物笑いの種になるのはかないませんからね・・・・・・」

 ヴィシュヌ神の奨めを受けて、方角の頭領たちは苦笑いをしながら、各自配下を統率して別々の道を進む。大神シヴァ様は成り行きを見ながら、心のなかで密かに微笑んでおられる。

「ヴィシュヌ様の悪ふざけは、相変わらずだな・・・・・・」

 敬愛するヴィシュヌ神の稚気溢れる愉快な軽口に煽られて、シヴァ様も負けてはいられないぞと側近のブルンギを送って一族郎党を呼び寄せられる。命令を承って、全員が集まってくる。それぞれ蓮華にも例うべきシヴァ様の御足に頭をつけて礼拝する。一種異例な乗り物、奇怪ないでたち、醜怪な顔つきをした多種多様の妖怪変化どもを見て、シヴァ様はいかにも楽しげに笑われる。

 口のない奴、たくさんの口を持つ奴、手足のない奴、何本もの手足を持つ奴、多くの目を持つ奴、一個の目玉も持たぬ奴、あるものはぶよぶよに太り、ある者は干物のようにやせ細っている。若くて生きのいい奴、しなびて元気のない奴、脂ぎった奴、干からびた奴、不潔な衣服をまとう奴、こざっぱりした服装をする奴、どいつもこいつも不気味な装身具を身につけている。手には生首を掲げ、体中に新鮮な生き血をぬたくりつけている。驢馬、犬、豚、ジャッカルに似た顔がずらりと並ぶ。数えきれないほどのシヴァ様の一族郎党のおぞましい姿を、誰が説明できようか? ほかにもあまたの死霊、食肉鬼、女夜叉などの集団が随行する。その情景を言葉で説明できる者は誰もいない。

 死霊や悪鬼どもは、手拍子足拍子で歌い踊る。どいつもこいつも、並はずれのおどけ者ばかりである。姿形は正視できないほど醜い。一風変わった奇妙な意思伝達をする。死霊や悪霊の行列も、いまや花婿にふさわしい行列となる。道中、面白おかしく、戯れ、悪ふざけ悪乗りが繰り返される。

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