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クンサン・ラマの教え 第一部 第三章「輪廻の苦しみ」(2)

(2)六道の衆生が経験する苦しみ

1.十八の地獄

(一)八熱地獄

 一番上の等活地獄から、一番底の無間地獄へと至る、これらの熱地獄の地面と外周は、白く熱された鉄のようであり、足を安全に置ける場所はどこにもなく、すべては赤々と燃え上がる灼熱の炎で焼け焦がされている。

等活地獄:この地獄では、白熱した金属の地面が、燃え盛る火に覆われ、囲まれている。ここに生まれた者たちは、憎悪のカルマにより、お互いを永遠の敵のように見なし、怒り狂って戦う。自分たちのカルマによって作られた多くの幻影の武器を振り回し、全員が殺されるまで攻撃しあう。そして空から「生き返れ」という声がすると、すぐに皆生き返り、再び戦いを始める。このようにして苦しみながら、死と再生を繰り返す。
 この地獄で生きる期間は次のようになる。人間界の五十年が、四天王天の世界の一日に等しい。その五百年が等活地獄の一日に等しく、それが五百年間続く。

黒縄地獄:この地獄では、ヤマの獄卒が、燃え盛る鉄の地面に地獄の住人を並べて体を縛り、その身体に四本、八本、十六本、三十二本と線を引き、その線に沿って、燃え盛るのこぎりで切り刻む。身体がバラバラになるとすぐに元通りになり、またバラバラに切り刻まれる。これが何度も繰り返される。
 人間界の百年が、三十三天の神々の一日に相当する。その千年が黒縄地獄の一日に等しく、それが千年続く。

衆合地獄:この地獄では、巨大な鉄の臼の中に、百万の地獄の住人たちが投げ込まれる。ヤマの獄卒が、赤く熱された鉄のハンマーを頭まで振りかざし、その者たちを激しく打ち付ける。地獄の住人たちは想像を絶する激しい苦痛と恐怖で泣き叫ぶ。つぶされて死んだ後、ハンマーが持ちあげられるとまた生き返り、同じ苦痛を何度も何度も味わうことになる。
 人間界の二百年が、ヤマ天の神々の一日に等しい。その二千年が衆合地獄の一日に等しく、それが二千年続く。

叫喚地獄:この地獄では、赤く熱された金属でできた出口のない部屋で焼かれる。地獄の住人たちは、決して逃げることができずに泣き叫ぶ。
 人間界の四百年が、トゥシター天の一日に等しい。その四千年が叫喚地獄の一日に等しく、それが四千年続く。

大叫喚地獄:この地獄では、武器を手に持った多くの恐ろしいヤマの獄卒たちが、燃える鉄の小屋に百万もの地獄の住人を押し込め、ハンマーなどで打ち据える。この地獄の住人たちは叫喚し、仮にドアを開けて小屋から出ることができたとしても、そこはまた別の燃える鉄の小屋のなかであり、深い失望と前以上の苦しみを味わうこととなる。
 人間界の八百年が、化楽天の一日に等しい。その八千年が大叫喚地獄の一日に等しく、それが八千年続く。

焦熱地獄:この地獄では、無数の者たちが、溶けた青銅の入った、宇宙ほど大きな鉄なべの中でゆでられている。表面に上がってくると、鉄の鈎で捕まえられてハンマーで打ち据えられる。気絶したときだけが、苦痛を感じなくて済むめったにない時間である。それ以外は絶えず耐え難い苦しみを味わい続ける。
 人間界の千六百年が、他化自在天の神々の一日に等しい。その千六百年が焦熱地獄の一日に等しく、それが千六百年続く。

大焦熱地獄:この地獄では、燃え盛る金属の家に閉じ込められ、ヤマの獄卒によって、赤く熱した鉄の串で踵と肛門から串刺しにされて、先端が肩と頭頂から突き出る。同時に、体は燃え盛る金属のシートで包まれる。なんと恐ろしい苦痛にさいなまれることか!
 この苦しみは、人間の時間では数えることができないほど長い期間続く。

無間地獄:この地獄は、燃え盛る金属でできた巨大な地獄であり、その周囲には十六の小地獄がある。ヤマの獄卒が、無数の者たちを、赤く焼けた鉄の山の中心に放り投げる。その苦しみは想像を絶する。たまに火の中に小さな隙間ができ、地獄の住人がそこから逃げようとすると、ヤマの獄卒が槍、こん棒、ハンマーなどで殴りつけ、溶けた青銅を口から流し込まれる。この地獄では、これまでの七つの地獄のすべての苦痛を味わうことになる。
 この地獄の長さは、大焦熱地獄のさらに倍である。
 この地獄には、五逆の罪を犯した者と、密教の修行者でありながらヴァジュラの師に背いたり敵意を持った者が生まれ変わる。無間地獄に生まれ変わる原因はその他にはない。

小地獄:無間地獄の周辺の四方には、炎を上げる火灰のある野原、腐敗した死体の沼地、いきり立った刃の平野、刀の刃でできた葉を持つ木々の森がある。それらが北、南、西、東のそれぞれにあり、合計で十六になる。中間のそれぞれの方角、南東、南西、北西、北東には、おろしがねの丘がそびえたっている。

灼熱の火灰の地獄:長い期間の後に無間地獄のカルマがほとんど尽き、そこから出ると、はるか彼方に野原のようなものが見える。喜んでそこに飛び込むと、炎を上げた火灰の塊の中に沈んでいき、肉と骨が焼かれる。

腐敗した死体の沼地:そして次に川が見えてくる。ずっと炎に焼かれていたために非常に喉が渇いている地獄の住人は、渇きを癒そうとして川に駆け寄る。しかしそこに水はなく、腐敗した死体でできた沼地になっている。そこは人間、馬、犬などの腐敗した死体で満ち、虫が這いまわり、強烈な腐敗臭に満ちている。地獄の住人はこの沼地にはまり、鉄の口を持った虫に貪り食われる。

刃の平野:この沼地から抜け出すと、気持ちの良さそうな緑の平野が見えてきて、喜びがわいてくる。しかしそこへ行ってみると、そこには草ではなく燃え盛る熱い細長い刃が生えていて、歩くたびに足が貫かれる。足を持ち上げるたびに傷は治るが、降ろすとすぐにまた耐え難い痛みに貫かれる。

刀の森:そこから抜け出すと、今度は美しい森が見えてきて喜び駆け寄る。しかし行ってみると、森の木には葉の代わりに刀が生えており、木々が風にあおられるたびにその刀が飛んできて、地獄の住人の体をバラバラにする。すぐに体は復活し、何度も何度も繰り返し刻まれ続ける。

おろしがねの丘:ここには邪淫のカルマによって生まれ変わる。地獄の住人が丘のふもとに立っていると、丘の頂上で、かつて愛した人が自分を呼んでいる姿が見える。そこで丘を登って会いに行こうとすると、山は鋭いおろしがねに変わり、彼の体をゴリゴリとすりおろしていく。頂上にたどり着くと、カラス、ハゲワシなどに目をつつかれ、脂肪を吸われる。今度は丘のふもとから自分を呼んでいるのが見え、降りようとすると、再びおろしがねですりおろされる。やっとふもとに降りると、おぞましい姿の鉄の魔物に抱きしめられて、頭を食いちぎられ、貪り食われる。

 これら八熱地獄、小地獄とその他の地獄、おろしがねの丘での苦しみを、しっかりと理解しなさい。静かな場所に引きこもり、目を閉じて、地獄の世界に実際にいると想像しなさい。まるで自分が本当に地獄にいるかのような恐怖と苦痛を感じたら、次のように考えなさい。

「地獄におけるあらゆる痛みを想像しただけで、ひどい恐怖と苦しみを感じる。今、そのような世界に無数の生き物がおり、それらは皆、かつて自分の両親であった者たちばかりである。今生の両親、愛する者、友人たちも、死後、これらの地獄に生まれ変わらないとは限らない。地獄に生まれ変わるのは、まず憎しみから出た行ないが主な原因であり、自分自身も今生でそのような行ないを数限りなく積み重ねてきた。自分も遅かれ早かれこのような地獄に生まれ変わるだろう。」

「今わたしは、完全な自由と条件の備わった人間の生を得ている。真の師に出会い、ブッダの境地に至る可能性のある深い教えを受けている。だから今こそ、地獄のような三悪趣に再び落ちることから救ってくれる方法を、一生懸命修行しなければならない。」

 何度も何度も、この地獄の苦しみを考えなさい。真摯な後悔をもって過去の過ちを懺悔し、ゆるぎない決意を固めて、地獄に生まれ変わる原因となるような行ないを、命にかけても二度としないようにしなさい。今、地獄にいる者たちに大きな慈悲を持って、まさに今この瞬間にも三悪趣から自由になれるようにと祈りなさい。

(二)八寒地獄

 八寒地獄は、すべてが雪と氷でできており、絶え間なく吹雪が吹き荒れている。この地獄の住人はみな真っ裸で、寒さにさいなまれている。
 「水ぶくれ地獄」では、寒さで体じゅうに水ぶくれができる。
 「破れた水ぶくれ地獄」では、その水ぶくれが破れる。
 「歯がガチガチ地獄」では、耐えがたい寒さに歯を食いしばる。
 「アチュチュ地獄」は、チベット人はあまりに寒いときにアチュという悲鳴をあげることからそう呼ばれている。
 「うめき地獄」では、声が枯れて、唇の隙間から長いうめき声が漏れる。
 「青蓮華地獄」では、皮膚が青くなり、四つの花弁のように裂けてしまう。
 「紅蓮華地獄」では、赤い肉が見え、八つに裂ける。
 最後の「大紅蓮華地獄」では、肉は暗い赤色になり、十六に裂け、三十二に裂け、さらにたくさんの肉片に変わる。裂けた肉には虫が入り込み、鉄の口で地獄の住人の体を貪り食う。 

 八寒地獄の期間は、次のとおりである。
 コーサラの秤で計った二百升分の容器にゴマがたっぷりと入っている。百年に一粒ずつその容器からゴマを取り出し、容器がすっかり空になるまでの時間が、「水ぶくれ地獄」の寿命である。
 「破れた水ぶくれ地獄」の寿命は「水ぶくれ地獄」の十二倍であり、「歯がガチガチ地獄」はさらにその十二倍、というかたちで順に増大していく。
  
 このような苦しみを、心の中で自分自身に置き換えて、熱地獄のときと同様に、その苦しみを想像しなさい。今生の人間の世界でも、冬の風に吹かれて、外で裸で立っていることが、ほんの少しの時間でもどれだけ耐え難いかを考えなさい。自分の欠陥を懺悔して、二度としないと誓いなさい。そして、これらの寒地獄にいる生き物たちに慈悲を持ちなさい。

(三)弧地獄

 弧地獄はあらゆる場所にあり、その苦しみもまたさまざまである。岩でつぶされる、石の中に閉じ込められる、氷漬けにされる、熱湯で煮られる、あるいは火で焼かれることもある。誰かが木を切ると、自分が木になったかのように手足を切り落とされる苦しみを味わうこともある。自分の体が、臼、箒、皿、扉、柱、工具、縄などになったと感じて苦しみを味わうこともある。
 これらの実例には、ヤルドク湖でリンジェレーパが見た魚や、成就者タントン・ギャルポが石の中に見たカエルの話などがある。

 ヤルドク湖と呼ばれる青緑色の湖は、ダーキニー・イエシェー・ツォギャルがヤルドクで瞑想をしているときに、ボン教徒が投げ入れた純金が水に変わって出現した湖である。あるとき、偉大な成就者であるリンジェレーパが、この湖を見てすすり泣きはじめ、「なんてかわいそうな! 誤った供物をささげてはいけません!」と言った。
 一緒にいた人々がどうしたのかと問うと、リンジェレーパは、「誤った供物をささげたラマの意識がこの湖で弧地獄に生まれ変わり、恐ろしい苦しみを味わっている」と答えた。
 人々がその様子を実際に見たがったので、成就者は奇跡的な力で湖を一瞬で空にした。するとそこには巨大な魚がいて、全身を小さな虫に食べられ、苦痛に悶えていた。
 リンジェレーパのお供の者が、こんな悪いカルマを積んだのは誰ですか、と尋ねると、リンジェレーパは、「彼はツァンラ・タナクチェンというツァン地方のラマである」と答えた。
 ツァンラ・タナクチェンは、その言葉に偉大な力を持ったラマであった。彼のことを見ただけで、霊が引き起こした障害が癒された。このため、ウとツァン地方では大変尊敬されていた。しかし彼は、死者のための供養などのときにたくさんの馬と牛をいけにえに殺していた。その悪業によって、このような弧地獄に生まれ変わったのであった。

 あるとき成就者タントン・ギャルポが、大きな岩の上でチャクラとエネルギーのヨーガを修行していると、その岩が真っ二つに割れた。その中には大きなカエルがいて、たくさんの小さな虫に生きたまま体を食べられており、そのひどい苦痛に口をパクパクさせていた。一緒にいた者が、どうしてこうなったのかと尋ねると、タントン・ギャルポは、動物をいけにえに殺していた僧侶がこのように生まれ変わった、と答えた。

 ゴルの高位の僧院長であったパルデン・チューキョンがデルゲにいたとき、多くの僧侶をグルダ川に遣わして、今日川を流れてくるものがあったら何でもよいから持ってくるようにと命じた。午後になって、大きな丸太が浮かんでいるのを見つけ、僧侶たちはそれを僧院長のところへ持って行った。
 「これに違いない。開けてみなさい。」
とパルデン・チューキョンは言った。丸太を割ってみると、その中には大きなカエルがいて、大量の虫に生きたまま食べられていた。僧院長は浄化の儀式を執り行ない、このカエルはかつてポギェという名のデルゲの財務相であり、寺の財産管理を任されながら大変な不正を働いたために今こうして苦しんでいるのだと言った。

 お釈迦様の時代に、夜には決して動物を殺さないと誓いを立てた屠殺業者がいた。彼はある種の弧地獄に生まれ変わった。夜は何事もなく楽しく過ごし、美しい家に住み、四人の美女に食べ物や飲み物などで歓待された。しかし日中はその家が炎をあげる熱い鉄の家に変わり、四人の美女は恐ろしい茶色の犬に変わって彼の身体を食べた。

 ブッダ・カッサパの時代、食事の時間に口論ばかりしている僧たちがいた。彼らもある種の弧地獄に生まれ変わった。彼らは普段は普通に僧院で暮らしているのだが、食事の時間になると僧院が燃え盛る鉄の家に変わり、托鉢のお椀やコップなどは武器に変わり、僧侶たちはそれらを手に持って互いに傷つけあうのであった。

 以上の八熱地獄、八寒地獄、小地獄と弧地獄で十八の地獄となる。それぞれの地獄で過ごす時間、苦しみ、そこに生まれ変わる原因などを思索して、地獄にいる衆生への慈悲を瞑想しなさい。そして自分と他の誰もこのような地獄に生まれ変わらないように努力しなさい。
 

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