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クリシュナ物語の要約(30)アクルーラの賛美歌


(30)アクルーラの賛美歌

 アクルーラはその後、何とかして冷静さを取り戻すと、礼拝を捧げて、両手を合わせると、感動で声を詰まらせながら、心を集中して、ゆっくりと主を賛美し始めたのでした。

「ああ、ナーラーヤナよ。あなたに礼拝を捧げます。太古より存在される、朽ちる事なき永遠の魂よ、すべての原因の大原因よ。
 地、水、火、風、空、自我、大我、自性、魂、心、感覚器官、感覚の対象、神々、それら宇宙に存在するすべてのものは、あなたの吉祥なる身体からのみ生まれてきたのです。
 知覚される対象であるプラクリティ(自性)などは、あなたの本質を理解することはできません。あのブラフマー神でさえ、プラクリティの様態であるグナに条件付けられて、グナの彼方に存在されるあなたの実体を知ることはできないのです。
 あなたというお方を、敬虔なヨーギーは、すべての生物を形成し、神々をも支配する、すべてに宿る内制者であり、全宇宙の支配者であると見て、直接にあがめようとするでしょう。
 そして供儀に身を捧げるブラーフマナは、多くの神々となってあらわれるあなたを、三ヴェーダに記される長大な供儀によってあがめようとするのです。
 また、離欲を得た智慧ある賢者は、遍在する意識であるあなたを、すべての行為を放棄して、悟りという供儀であがめようとするでしょう。
 さらに他の者は、多様な姿としてのあなたを、そして単一の姿としてのあなたを、あなたが教えられたタントラという方法であがめようとするのです。
 そしてシヴァ派の者は、シヴァが勧める道に従い、ああ、全能の主よ、シヴァとしてのあなたをあがめているのです。
 また他の神に帰依する者たちも、実際には、すべての神を身に現す、全能の主のあなたをあがめているのです。
 すべての川は海へと流れていくように、ああ、主よ、すべての道は、最後にはあなたへと至るのです。

 サットヴァとラジャスとタマスは、あなたが持つプラクリティ(自性)の様態(グナ)なのです。それゆえ、動くものも動かぬものもすべてのものは、最後にはそれらグナへと帰り、そして主へと帰っていくのです。
 あなたを瞑想する者にとっては、火はあなたの口であり、大地はあなたの御足であり、太陽はあなたの目であり、空はあなたのへそであり、空間はあなたの耳であり、最高天はあなたの頭頂であり、神々の王はあなたの手であり、海はあなたの腹部であり、そして風はあなたの呼吸であると見なされるのです。
 木々と穀物はあなたの体毛であり、雲はあなたの髪の毛であり、山はあなたの骨格であり、昼と夜はあなたのまばたきであり、ブラフマー神はあなたの陰茎であり、そして雨はあなたの精液であると見なされるのです。
 過去にあなたが遊戯として取られた、様々な顕現を思うことで、人々は容易に悲しみを乗り越え、喜びに満たされるのです。それ故に人々はあなたの栄光を賛美するのです。
 神聖な魚となられて、世界を沈めた海を泳がれたあなたに、永久に栄光あれ!
 ハヤグリーヴァとして姿を現して、マドゥとカイタバを殺されたあなたに、永久に栄光あれ!
 マンダラ山を支えた巨大な亀のあなたに、永久に栄光あれ!
 海に沈んだ地球を持ち上げるため、広大な海の中で戯れられた、神聖なヴァーラーハ(野猪)としてのあなたに、永久に栄光あれ!
 不可思議なライオンの姿(ナラシンハ)になられて、正しき者の恐怖を取り除かれるあなたに、永久に栄光あれ!
 ヴァーマナとして降誕されて、ただ一歩で世界を踏破されたあなたに、永久に栄光あれ!
 パラシュラーマとして降誕し、傲慢なクシャトリヤたちを滅ぼされたあなたに、永久に栄光あれ!
 ラーマとして降誕して、ラーヴァナの命を絶たれたあなたに、永久に栄光あれ!
 ああ、クリシュナ、バララーマ、プラデュムナ、アニルッダよ、それらの姿であるあなたに、永久に栄光あれ!
 やがて仏陀として降誕して、何一つ間違ったことを説かれずに、魔族の者たちを惑わされるあなたに、永久に栄光あれ!
 主カルキとして降誕して、落ちぶれたクシャトリヤたちを滅ぼすあなたに、永久に栄光あれ!

 ああ、主よ、この宇宙に生きるすべての生き物は、あなたのマーヤーに惑わされて、肉体とそれに関するものを、自分だと、または自分のものだと思い、カルマの迷宮をさまよい続けるのです。
 そして愚かな私も、自分の身体や子供、妻、家、財産、親族など、それら夢のようなものを真実と思い込み、ああ、全能の主よ、それらの中を今まで迷い続けてきたのです。
 一時的なもの、真我でないもの、悲しみに根ざすもの、それらを真実と思い、相対的なものに喜びを覚えて、迷妄に覆われた私は、自分にとって最愛のお方であるあなたを知ることがなかったのです。
 無智な者が、本当の水を無視して蜃気楼を追いかけていくように、愚かな私も、あなたから目を背けて、肉体などを重視してきたのです。
 理解も乏しく、まことに迷妄なる私は、渇愛と活動に動かされて、荒ぶる感覚器官に引きずられ、とても自分の心を調御できないのです。
 それゆえ私は、非法なる者には近づきがたい、あなたの蓮華の御足に庇護を求めるのです。
 ああ、クリシュナよ、あなたへのバクティは、聖者への奉仕によって与えられ、そしてその機会は、輪廻が終わりに近づいたとき、その者にあらわれてくるのです。
 無限の力を持たれて、すべてにおいて完全な、純粋な意識の体現であり、すべての完全なる叡智の根源、すべての魂を管理する原理の支配者であるあなたに、私は心から帰依いたします!
 ああ、私はあなたに礼拝を捧げます。主ヴァースデーヴァよ、すべての作られたものの住まいであるお方よ、あなたに永久に栄光あれ!
 どうかあなたの御足に身を投げ出す私を、お守りください!」

つづく

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