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クリシュナ物語の要約(25)「クリシュナの帰りを待つゴーピーたちの歌」

(25)クリシュナの帰りを待つゴーピーたちの歌

 クリシュナが森へ放牧に出かけていくと、ゴーピーたちはひどく悲しみ、一日中、次のように主の遊戯を歌って過ごすのでした。

「ああ、ゴーピーたちよ。
 クリシュナが優雅に眉を動かし
 左ほほを肩につけて
 横笛を唇に添え
 指をあてて調べを奏でられるや
 その素晴らしい響きに
 愛の矢に心を打たれて
 顔を赤らめ
 恍惚となりて気を失う
 裾のほころびも気づかずに。

 ああ、乙女たちよ。
 この不思議な様を、どうか聞かれよ。
 稲妻が胸に宿りしナンダの御子が、
 苦しむ者たちを喜ばせようと、
 真珠の笑みを浮かべて
 横笛を奏でられる。

 遠くから響くその調べに
 森のシカや牛、ヴラジャの牡牛たちは
 眠ってしまったかのように、絵のように固まって耳をそばだてて
 それに聞き入ろうとする。
 あまりにも心魅せられ、
 口に草の葉をくわえたままに。

 ああ、友よ。
 クリシュナがその身体を、
 クジャクの羽や若葉や鉱石で
 闘士のように飾り
 仲間やバララーマとともに
 牛たちの名を呼ばれるや、
 河は流れを止めてしまい
 主の御足の塵を風の中に求めて、
 命あるもののように、腕を伸ばそうとする。
 でも私たちと同じく、彼女もまた功徳なきゆえに、
 御足の塵を得られずに、ついには腕を静めてしまう。

 ああ、クリシュナは、
 真我のように永遠の輝きを放ち、
 従者が讃える中、横笛を奏でて、
 森のなかを歩かれる。
 草をはむ牛たちの名を呼ぶや、
 厳かなその御声に、
 森の木々やツタたちは、華や実を実らせ、
 礼拝を捧げるかのように、低く枝を垂れ下げる。
 こみ上げる愛ゆえに、喜びに身を震わせて、
 あふれんがばかりに蜜を滴り落として。

 ああ、森の花輪のトゥラシーに酔う黒蜂の歌を讃えて、
 ティラカを描かれしクリシュナは、
 唇に横笛を添え、
 妙なる調べを奏でられる。
 湖の白鳥や鶴たちは
 甘きその響きに魅せられ、
 クリシュナのそばに群がり集まり
 静かに目を閉じて、沈黙のうちに
 主を思い続けんとする。

 ああ、ヴラジャの乙女たちよ、
 至福の海なるクリシュナは、
 耳に花の房を飾りて、
 バララーマとともに、山の頂に立たれて、
 全宇宙を満たさんと、横笛を奏でられる。
 雲もその調べに合わせて、
 やさしく轟を響かせる。
 主への不敬を恐れるかのように、
 花のような雨でその友を覆い、
 傘のように大きくその上に影を広げて。

 ああ、ヤショーダーよ、
 牛飼いの遊びに巧みな、あなたの御子なるクリシュナは、
 ビンバの実のごとき赤き唇に
 横笛を添え、調べを奏でられる。
 インドラや他の神々でさえ、
 心と首を傾けて、それに聞き入らんとする 
 神秘なるそのわざを
 詩人なれども理解できずに
 ただ心を惑わされるばかり。

 ああ、クリシュナが横笛を吹きて
 ゾウのように雄々しく歩かれるや
 牛の蹄で傷ついたヴラジャの土は
 ヴァジュラや旗や蓮華のしるしがある
 主の御足にて慰められる。
 その恋のまなざしに
 われらも愛の火をともされて
 優雅な立ち居振る舞いに
 樹のように命なく立ち尽くす。
 深き惑いゆえに
 髪と衣の乱れにも、もはや気づくことなく。

 ああ、かぐわしき香りを立てるトゥラシーの花輪を飾り
 美徳の海なるクリシュナは
 数珠を手に持ち、牛たちを数えられる。
 友の肩に手を置き、森のどこかで歌われる。
 麗しく響くその御声に、
 黒鹿の妻なる牝鹿たちは
 ひどく心を乱されて
 クリシュナの下にとどまり続けんとする。
 私たちのように、ひとたびクリシュナに会うや、
 家へ帰る望みを捨ててしまって。

 ああ、汚れなきヤショーダーよ。
 あなたの愛するナンダの御子は
 ジャスミンの花輪を飾り
 牛や牛飼いを喜ばせ
 ヤムナーの岸辺で遊ばれる。
 そよ風も白檀の香りを運び
 主に礼拝をささげんとする。
 ガンダルヴァは詩人となって
 歌や調べ、供物を捧げて
 主を迎えんとする。

 ヴラジャの民と牛たちにやさしき
 ギリダラ(山を持ち上げる者)であるクリシュナは
 一日が終わるや、草をはむ牛たちを集めて
 仲間が讃える中、横笛を奏でて、
 ブラフマー神などにあがめられながら
 ここに帰ってこられる。
 牛のたてた塵で花輪を覆われ
 見る者に喜びを与えながら、
 疲れてはおられても、親しき者たちの望みをかなえるために、
 もうすぐここに帰ってこられる。

 ああ、森の花輪を飾りしヤドゥの王は
 喜びで目を回して、仲間たちを喜ばせながら
 ほほを金の耳飾りで光らせ、
 ナツメの実のような青いお顔で
 ここに帰ってこられる。
 ゾウの王のように優雅に歩いて
 ヴラジャの乙女たちの、昼の間の苦しみを癒さんと
 夜空に輝く王(月)のように、
 もうすぐここに帰ってこられる。」

 心と理性をクリシュナにささげたヴラジャの女性たちは、このようにしてクリシュナの遊戯を賛美しながら、大いなる喜びに心を満たされて、昼の間を過ごしていったのでした。

つづく

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