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アディヤートマ・ラーマーヤナ(26)「ダンダカの森へ」

第一章 ダンダカの森へ

◎ヴィダーラの救済

 ラーマはそのアシュラムでその日の残りを過ごし、翌朝に聖仙に別れを告げて、旅立つ準備をした。
 彼は聖仙にこう仰った。

「おお、聖なる御方よ! われわれは皆、多くの苦行者たちが暮らしているダンダカとして知られる森へと行きます。どうか、われわれを祝福してください。
 どうか、われわれに道案内をしてくれるよう、あなたの何人かの弟子に御指示ください。」

 ラーマのこの言葉を聞いて、大聖仙アトリは微笑みながらこう言った。

「おお、ラーマよ! あなたは神々さえをも支えております! あなたは一切の衆生の先導者であられます。ゆえに、どうして誰かがあなたに道を示すことなどができましょうか? それでも世界の慣習に従われますならば、われわれが道を案内しましょう。」

 そう言うと、彼は何人かの弟子に目的を命じ、彼自身は少し離れたところまでラーマについて行った。ラーマに帰るよう説得されて、聖仙はそれに従いアシュラムへと帰って行ったのだった。
 一クローサ(約900M)の距離を歩いたとき、彼らは大河に出くわした。

「この河はどうやって渡るのですか?」

とラーマに尋ねられ、アトリの弟子はこう答えた。

「おお、ラグ族の気高き末裔よ! そこにはそのための素晴らしい舟があります。われわれが短時間であなた方を連れて河を渡りましょう。」

 そして彼らは舟を取って来ると、そこにラーマとシーターとラクシュマナを座らせ、若い苦行者が河を漕いで一行を渡らせたのだった。
 ラーマは彼らが見せたその技術を非常に高く評価した。彼らはその後、アトリのアシュラムへと帰って行ったのだった。
 そしてラーマ一行は非常に恐ろしく、木の生い茂ったダンダカの森へと入って行った。虫のけたたましいさえずりが響き、さまざまな種類の動物が至る所に生息し、ライオンや虎のような危険な野生動物がうろついていて、もの凄い顔つきの悪魔たちがその地域にはびこっているその森は、あらゆる者の身体に鳥肌を立たせるであろう。森へ入るとラーマは、スミトラーの息子ラクシュマナにこう仰った。

「ここから先は、非常に注意深く旅をしなければならない。私と共にお前は弦を張った弓と矢を手に用意しておくべきだ。私は前を歩くから、お前は後ろを歩け。シーターはまるで幻影の力であるマーヤーがパラマートマン(至高の真我)とジーヴァ(個別化された魂)の間に立つように、われわれの間を歩きなさい。
 周りをよく見て歩きなさい。おお、勇敢なる者よ! ダンダカの森は多くの悪魔がはびこっていることで悪名高いのだ。私はこれについて前にも聞いたことがある。」

 このように会話を交わしながら旅を続け、彼らがさまざまな種類の蓮華と睡蓮がたくさん咲き乱れる冷たく澄み透った水の湖を見つけたときには、なんと一ヨージャナ(十数キロ)も進んでいた。その湖に近づくと、彼らはそのおいしい水を飲み、しばらくその岸辺の陰で座った。すると、もの凄い顔をした怪物が彼らの前に現れた。
 その怪物は凄まじい牙を持ち、その唸り声は辺り一帯に恐怖を与えた。左の肩には三叉戟を置き、その先には突き刺さったいくつかの人間の身体があった。彼は動き回り、見つけた野生動物は何でも食べた。――たとえそれが、象、虎、ライオン、あるいは野牛であっても・・・・・・。その怪物を見ると、ラーマは使う準備の整っている弓を持ち上げて、ラクシュマナとシーターにこう仰った。

「弟よ、われわれの前にいるものを見てみろ。巨大な身体をした悪魔がわれわれのもとにやって来た。彼の容貌は、臆病な者どもには恐ろしくてしかたないであろう。弓を持って待機しているのだ。怖がってはいけない、おお、ジャナカの娘よ。」

 そう言うと、ラーマは弓と矢を手に持って、山のように悠然と立ち上がった。
 シーターとラクシュマナと共にいるラーマを見つけると、その怪物は凄まじい牙を外に出し、脅えさせるようにしてこのように言った。

「木の皮を着て、髪をジャータにした苦行者の格好をしているが、手に弓矢を持ち、女を連れているお前は誰じゃ? お前は美しく、非常にふしだらなやつじゃ。ああ! お前はもうすぐ私のごちそうとして私の口の中に入るであろう。お前はなぜ、このさまざまなどう猛な生き物のはびこる恐ろしい森に愚かにも入って来たのだ?」

 悪魔のこの言葉を聞くと、ラーマは微笑みながらこうお答えになった。

「私はラーマである。これは私の愛する弟ラクシュマナ、そしてこれは私の妻シーターだ。父上の御命令により、われわれはこの場所をお前のような恐ろしい輩どもから解放するためにここに来た。」

 ラーマのこれらの言葉を聞くと、その悪魔は恐ろしい牙を出して、口を大きく開き、両手に三叉戟を握って、すぐさまこのように叫んだ。

「おお、ラーマよ! お前はこの世界に名高いヴィダーラのことを聞いたことがないのか? すべての苦行者がわしを恐れてこの森の地域から去って行ったのじゃ。命が欲しければ、その武器を捨て、シーターをここに置いてただちにここから立ち去れ。さもなければ、お前らを一人残さず食ってやる。」

 こう言うと、悪魔はシーターを捕まえようと突進してきた。そこでラーマはいとも容易く、たった一本の矢で彼の両腕を切断した。
 それから、怒り狂って口を大きく開けながら、悪魔はラーマへ向かって走って来た。突進してくるヴィラーダと対面し、ラーマは全く驚いたことに、いとも軽々と彼の二本の足を切断したのだった。
 するとヴィラーダは、まるで彼を貪り食おうとする蛇のように、ラーマへと這い寄って来た。そしてラーマは半円の矢で、彼の頭を切り落とし、その頭はその地の血の河に落ちた。そこでシーターはラーマの偉大なる御業を褒め称えたのだった。
 そして天界のケトルドラムが鳴り響き、天人とアプサラスはガンダルヴァとキンナラが歌っている中で踊ったのだった。

◎ヴィラーダの賛美

 ヴィラーダの身体から、鮮やかで、素晴らしい衣を纏い、輝く黄金の装飾で飾られ、空に浮かぶ太陽のように光り輝いている非常に美しい姿をした者が現れた。
 そしてその穏やかな容貌を持った者は、彼の前に礼拝を捧げ、庇護処を彼に求める一切の者たちの悲しみを破壊し、輪廻の中のジーヴァという言葉を終わらせることがお出来になり、そして慈悲という真の宝石であられるラーマの前に何度も何度もひれ伏して礼拝したのだった。
 ヴィラーダはこう言った。

「おお、蓮華の眼をしたラーマ様! 私はヴィディヤーダラと申します。昔、私は特別な理由もないのに、怒りの化身である聖仙ドゥルヴァシャスに呪いをかけられてしまいました。今日私はあなたによってその影響から解放されました。
 輪廻から解放されることで、私の心が常に、あなたの蓮華の御足を思い続けることができますように。私の言葉が永遠に、あなたの高貴なる御名を唱え続けることができますように。私の耳が永遠に、あなたの物語という甘露を飲み続けることができますように。私の手が絶えず、あなたへ供養を捧げ続けられますように。私の頭が永遠に、礼拝してあなたの御足の許に置かれていますように。私の存在、身体、心、そして魂の全てがこのように、あなたへの奉仕に没頭されますように。
 シーターと共におられる至高者であり、世界の創造者であられるラーマに礼拝し奉ります。一切の特性を持たず、あなたは純粋意識の本性であられ、常にあなた御自身の真我に没頭されております。あなたの御足への帰依者である私をお守りください。あなたの許可を得て、おお、ラグ族で最も気高き御方よ! 私は私の天界の住居に帰りとうございます。あなたのマーヤーが決して私の視界を曇らすことがありませんように。」

 ヴィラーダがこのように祈ると、気高きラーマは大いに喜び、大歓喜のムードに入ってヴィラーダに恩寵を授けられた。
 彼はこう仰った。

「おお、ヴィディヤーダラよ! お前はもう行ってもよい。私を見ることで、お前は一切のマーヤーの制約を乗り越えた。お前はまさにこの瞬間に自由となり、最も偉大な智者の段階へ昇ったのだ。
 この衆生の世界で、私への純粋なる信仰はほとんど見つけられない。もしこのようなバクティを得たら、人はただちに解脱を得て、この繋縛された存在の世界にもはや存在することはなくなる。ゆえにバクティを授かったお前は、私の命により解脱を得るであろう。」

 ラーマはこのどう猛な悪魔を破滅させたが、それによってその悪魔は解脱を得た。彼はラーマの祝福の恩寵を受けて、再びヴィディヤーダラの状態を手に入れた。ゆえに、ほんの少しでもラーマに仕え、彼の賛美を歌うならば、すべての者は人生の一切の祝福を得るであろう。

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