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アディヤートマ・ラーマーヤナ(18)「ラクシュマナのグハ王への助言」

第六章 チトラクータへの途上におけるラーマ

◎ラクシュマナのグハへの助言

 ラーマが寝静まった後、グハは、涙で溢れんばかりの眼で彼を見つめ、謙虚にラクシュマナにこう言った。

「ああ、兄弟よ! 分かりませぬか? 素晴らしい布団がひかれた黄金のベッドのみに寝慣れておられるこのラグ族の王子が、今シーター様と共に草のベッドに横たわっているのです!
 洗脳されたカイケーイーがラーマ様にこの悲しい状況をもたらしたことは運命であります。しかしこれは、カイケーイーがこの罪深い行為を犯した原因となった邪悪な助言をしたマンタラーによって、間接的に行われたのです。」

 これを聞くと、ラクシュマナはこう答えた。

「おお、友よ! 私の言うことを聞きなさい。この世界の中で、誰が誰の悲しみの因となっているのだ? そして、誰が誰の幸福の因となっているのだ?
 人の楽しみと苦しみの因は、その者自身の過去生の行為(カルマ)である。
 人に幸福と苦しみを引き起こすその人自身の外側には何もない。それらをまた他の別のものによって引き起こされるとしての経験のせいにすることは、邪道に陥った知性である。そのような行為を『私がやっている』と人に考えさせるのは、無駄な虚栄心である。この世界は、言うなれば、自分自身の行為という糸で吊るされている。 
 この世界において、人は他者を、友、縁者、敵、それらの中立の者などとして見なしている。しかし、人の行為における責任は全く自分自身にある。われわれは不当にも、それらの原因を先に述べた他者のせいにするのだ。己のカルマの奴隷となった者たちは、己のカルマの果報として自分に降りかかる幸福と苦しみに付き従わなくてはならない。彼はそれらを経験している間、己のカルマの果報には心を動かさないようにすべきだ。彼にこう考えさせるのだ、『私はボーガ(快楽)に対する欲望もないし、それらを避けてもいない。それは来るがままに、去るがままにするがよい』と。このように考えることで、人は快楽への奴隷から解放されるべきなのだ。
 己の善悪の行為の果報は、誰からでも、どんな方法によってでも、どんな場所や時においてでも生じるのであるから、その場ですぐに経験されなければならない。
 人は、幸福を経験する時も調子に乗ってはならないし、苦しみに打ちのめされたときも絶望してはならない。運命が人のカルマに従って人と調和したものは、彼がデーヴァであろうと、阿修羅であろうと、誰によっても乗り越えることができない。
 善と悪の行為から生産されたこのわれわれの身体は、常に幸福と苦悩に支配されている。人の人生はそのように経験の集積である。
 ちょうど昼夜がそれぞれにつき従うように、そのように人は、今幸福を経験したら、その次には苦しみを経験し、その苦しみの後にはまた幸福を経験するというようにして生きている。
 幸福の中には苦しみが生じ、苦しみの中にも幸福が生じる。水と泥が密接に混じり合っているように、幸福と苦しみもそのようなのである。ゆえに、悟った者は、それらの快、不快の経験をマーヤーあるいはただの現象であると熟考し、喜びにも絶望にも従わずに心を動かさないのだ。」

◎グハ王との別れ

 グハとラクシュマナがこのように話をしていると、かすかな光が空に広がり始めた。そして、ラーマが眠りから起き、沐浴をして朝の儀式を行ったときに、夜が明けた。
 次にラーマはグハにこのように言った。

「私に良い舟を用意しておくれ。」 

 狩人の王グハはそれに従って、出来の良い舟を自分で漕いでそこに持って来た。そして彼はラーマにこう言った。

「ああ、主よ! どうかシーター様とラクシュマナ様と共に舟にお乗りください。私が完璧に舟を漕いでゆきましょう。」 

 その申し出に同意すると、ラーマはシーターがそこに乗り込むのを手伝い、それから御自身がグハの手をとって乗り込まれた。次にラクシュマナはすべての武器を舟に置いてから、そこに乗り込んだ。
 グハ王が彼らを乗せて舟を漕いで、ガンガーの中央に来ると、シーターがこのように河の女神に祈りを捧げられた。

 「おお、ガンガー女神よ! 汝に礼拝し奉ります! 私がラーマ様とラクシュマナと共に森での生活から帰還した後、私は再び汝に礼拝を捧げましょう。
 大いなる信仰を持って、私は酒や肉を含む多くの供物と共に汝に礼拝し奉ります。」

 そしてそのすぐ後に、彼ら一行は対岸に到着したのだった。
 そしてグハ王はラーマにこのように言った。

「ああ、偉大なる王よ、私もあなた方と共に参ります。どうか、その許可を私にお授けください。もしあなたがそうしてくださらなければ、私は命を絶ってしまいましょう。」

 狩人の王のこれらの言葉を聞くと、シュリー・ラーマは彼にこう仰った。

「十四年間ダンダカの森で暮らした後、私は必ずや帰還する。私の言うことは真実だ。ラーマの言葉は決して非真実にはならないのだ。」

 このように言うと、彼はその帰依者を抱擁し、何度も何度も彼を慰めると、彼を何とかして送り返した。そうしてグハ王は悲しげに帰って行ったのだった。

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