アディヤートマ・ラーマーヤナ(16)「ラーマの霊的な正体についてのヴァーマデーヴァの解説」
第五章 ラーマの森への旅立ち
◎民衆の反応
ラーマがラクシュマナとシーターと共に公道を通ってやって来るのを見て、その近くに住むすべての民たちは、お互いの顔を見合わせ、それについて述べ合った。
それらの民たちは、カイケーイーに与えられた恩寵について聞くや否や、悲しみに苛まれて、こう言った。
「ああ! 女の扇動のせいで、ダシャラタ王はあんなにも徳高く、誠実な息子を犠牲にしてしまったのだ。王は女房に甘過ぎるのだ。そのような者が、どうして誠実であるだなどと認められようか?
あのカイケーイー様は、どうしてこのように残忍、邪曲となり果てたのだろうか? どうして、あのように誠実で、皆を利してくださるラーマ様のような王子を国から追放するなどとお考えになられたのだろうか? 彼女はまさしく、愚かで無情な女であるに違いない。おお、友たちよ! このように不法と残酷な行為が行われる国など、われわれがこれ以上住むにそぐわない。今日にでもわれわれも森へ行こうではないか。
ラーマ様が御自身の妃と弟ぎみと共に行かれる場所へわれわれも行こう。見ろ、ジャナカ王の娘のシーター様が道を裸足で歩いておられる!
この世界のどこにも対等する者を見出すことができない美しさをお持ちのシーター様は、今までは、親類縁者以外の者たちには一切見られることなく、世を忍んでおられた。しかし見よ、そのシーター様が、お顔を覆うことさえなく、混雑した公道を裸足で歩いておられる!
ラーマ様も、馬にも象にも乗られることなく、歩いておられる。見ろ、全世界で最も美しいわれらの気高き主がどこかへ去っていかれる!
あのカイケーイーという悪魔は、完全なる破滅をもたらすであろう。ラーマ様の御心は、道を重い足取りで歩かれるシーター様を見る悲しみで、間違いなく身もよじれる思いであられよう。これはまさしく、人間の努力では到底及びもつかない神の御意思の一撃であろう。」
◎ラーマの霊的な正体についてのヴァーマデーヴァの解説
善人たちが皆このように嘆いていると、彼らの中にいた大聖仙ヴァマデーヴァは、彼らを慰めるために前に進み出てきて、こう仰った。
「ラーマやシーターのことを考えて、悲しんだり、気を落としたりなさるな。私が彼らについての真理に関して語ることに耳を傾けなさい。
あのラーマは至高者マハーヴィシュヌ、アディ・ナーラーラナ御自身である。ジャナカ王の娘であるあのシーターは、ヴィシュヌのヨーガマーヤーとして名高いマハーラクシュミーである。あなたたちがラクシュマナとして知る御方は、彼に追随するアディ・シェーシャなのだ。マーヤーと御自身を結合させて、主は、私がこれから語るさまざまな御姿をおとりになられた。
ラジャスの性質をとり、彼は創造神ブラフマーとなられた。同様に、サットヴァの性質をとり、彼は世界の守護神マハーヴィシュヌになられたのだ。そして最後にタマスの性質をとり、彼は破壊神ルドラになられるであろう。
昔、魚の御姿をとり、彼は帰依者ヴァイヴァスヴァタ・マヌを舟に乗り込ませ、大洪水の終末まで彼を守護された。
また、乳海が攪拌され、攪拌棒に用いられたマンダラ山が海に沈み、スタラの世界まで落ちた時、ラグ族の指導者である彼は、亀の御姿をとり、自らの背中でその山を支えられた。
プララヤの時代、地球がラサターラのレベルまで沈んだ時、あのラグ族の気高き御方は、猪の御姿をとり、その牙で地球を持ち上げられた。
また昔、人獅子の御姿をとってプラフラーダを守護し、御自身の爪で、世界の迫害者である悪魔ヒラニャカシプの胸を引き裂かれた。
神々の母であるアディディーが、バリによって天界から追放された息子の神々たちの助けを求めに来たとき、彼は倭人の御姿で顕現され、その神々を助け出された。
邪悪なクシャトリヤたちという重荷を地球から取り除くために、彼はブリグ族のラーマ(パラシュラーマ)として化身された。
そしてそれと同様の宇宙の主が、今、ラーマとして化身されているのだ。
彼はラーヴァナと何千もの悪魔たちを滅ぼすだろう。悪魔ラーヴァナは人間の手によってのみ殺すことができるゆえ、彼は人間の姿をおとりになられたのだ。過去生において、ダシャラタ王はハリが自らの子供となって誕生されることを願って、苦行を通じてハリを礼拝していた。ラーマは今人間として降誕されたそのマハーヴィシュヌなのだ。
ラーヴァナどもを滅ぼすために、彼はラクシュマナを連れて、今日にでも森へと行くだろう。あのシーターは、宇宙の創造、維持、破壊の原因であるヴィシュヌの御力、マーヤーである。
カイケーイーもダシャラタ王も、それら一切の御計画に対して少しの責任もない。ナーラダがその重荷を地球から取り除いてくださるように祈られたのは実に昨日のことであり、ラーマ御自身は、その翌日に森へ行くであろうとお答えになられた。ゆえに、あなた方、無智な人々よ、ラーマが原因で生じた悲しみを捨てなさい。
この世界で、絶えずラーマの御名を唱え続ける者は皆、死やその他の苦難の恐怖に打ちのめされることは決してない。ならばあなた方はそもそも、どうしてあのラーマが悲しみに打ちのめされているのではないかと疑うことができようか?
世界を祝福するために、彼は人間の慣習を模倣されているのである。帰依者たちに、彼らの心を信仰心と奉仕に集中させるための対象を与えるために、ラーヴァナに破滅をもたらすために、そしてダシャラタ王の祈りを成就させるために、彼はこの人間の御姿をおとりになられたのだ。」
このように言うと、聖仙ヴァーマデーヴァは再び無言になった。
ヴァーマデーヴァのこれらの言葉を聞くと、そこにいたすべての信仰深い人々の心の疑念は晴れ、彼らは神聖なる存在として、ラーマを瞑想し始めたのだった。
このラーマとシーターの秘伝の教えを絶えず熟考する者は皆、輝きと共に、ラーマへの確固たる信仰心を得るであろう。
「この秘密の教義は、用心深く守られるべきである。あなた方は皆、ラーマにとって、とても愛しい存在なのだよ。」
聖仙ヴァーマデーヴァはそう言うと去って行った。信仰深い帰依者たちは、至高者そのものであられるラーマの正体を理解したのであった。