yoga school kailas

「解説『スートラ・サムッチャヤ』」第一回(7)

 はい。で、そしてその信をしっかりとこう、得てきた者っていうのは、まず、「善男子や善女人が、優れた心によって、無上の正覚に発心することが、信である。」――これは一つの信だと。つまり、「無上の正覚に発心する」――つまりこれは菩提心っていうことです。つまり、まあこれもなかなかね、言葉では説明できない領域なんで、ストレートにパッパッパッっていきますよ。はい。菩提心――つまり、「わたしはみんなのために仏陀になろう」と。「わたしはわたし一人のために修行するんではなくて、多くの衆生を救いたい」と。そのためには今のわたしの力では、全く役不足であると。ね。「わたしはもうみんなを救いたい!」っていう気持ちは、強い気持ちはあるんだけど、気持ちだけでは全くどうにもならないと。ね。もっともっと仏陀のような智慧を持ち、あるいはパワーを持ち、エネルギーを持ち、あるいは強い慈悲を持って――わたしもね、何回も言うけども、よく昔そういうこと考えたんです。まあこれも何度も言ってる話ですけど、新しい人もいるんでね、言うと――まあ何回かわたしインドに行ったわけだけど、まあ一人で行ったこともあるし、何人かと行ったこともあるんだけど。で、一人でインドに行ったときとかに、まあインドだから乞食がいっぱいいるわけですね。で、単純にその貧しいっていうだけではなくて、まあ乞食とかとよく接してると、まあしょうがないんだけども、精神的にも非常に貧しい状態にあったりする。つまり乞食同士で奪いあってたりとか、あるいは騙したりとかね。それはもちろんそういう状況におかれてるから、しょうがないっていえばしょうがない。で、まあわたしはそういう乞食とかによく食べ物とかお金とかあげてたわけだけど、あるときこう考えたわけですね。「本当に彼らを救いたい」と。「どうすればいいんだろうか」と。いろんなパターンっていうか、いろんなこと考えるわけです。もちろん例えば、いろんな人がボランティアでやってるようなね、食事を布施するとか、あるいは病人の看護をするとか、それはそれで素晴らしいと思うね。そういう役目を持ってる人たちは、それで素晴らしいと思う。でも、わたしの心はそれでは満足できなかった。つまり、食事を与えても、あるいは病気を治しても、彼らのもともとの心とか、カルマが変わらないうちは、あまり本質的な救済にはならないんじゃないかということを、いろいろ考えたわけだね。そういうことずーっと考えて、一つの結論としては、「彼らをみんな解脱させるしかない」と。ね(笑)。もうここに行き着くんだね。
 で、それをわたし本気で考えたわけです。「あいつら全員解脱させるしかない」と。で、それを次に具体的に考えてみる。「ちょっと待てよ。あのインドの乞食たちを解脱させるってどういうことだろう?」と。ね。あるいはもちろんインドだけじゃなくて、世界に目を向けると、多くのね、貧しい人もいれば――まあ貧しくはないんだけど、精神的に病んでる人がいっぱいいると。彼らを解脱させるってどういうことだろう? 例えばインドに目を絞ってみたとしてね、インドの街中で乞食やってる人たちを、まずヨーガさせなきゃいけないわけだから(笑)。「そこにもっていくのって相当大変だな」と。「今のおれにできるのかな?」と。そういうこといろいろ考えるわけです。あるいはそれを世界にまで目を向けたら、世界中の人をもし解脱させるとしたら、今の自分ね、この今の自分のスキルと智慧と力では、全く不可能だと。現実的にね。そこで、不可能だから、まず現実的なことからやる。これは一つだよね? でもそこで終わるんじゃなくて、可能なぐらい自分を引き上げようと。で、わたしがそのときに本気で思ったのは――これはまあかっこいい発願なんだけど――「もう面倒くさいことは抜きにして、誰かがわたしを見ただけで悟るような(笑)、」

(一同笑)

「それくらいの聖者になろう!」と。ね(笑)。無料体験の人が来て、「こんにちはー。あ、ヨーガ教室ですか」――ハッ! とこう(笑)……

(一同笑)

 見ただけで、パパパーッと悟るくらいの、大聖者になろうと。ね。それが可能かどうか分からない。しかし、それが可能かもしれないぐらいに、マックスまで自分の聖なる領域を引き上げればいいと。つまり仏陀の境地までいけばいいと。つまりこれが菩提心なんです。
 つまりわたしは、まあかっこよく言えばね、自然に菩提心が出たわけだね。そういう意味ではね。それが皆さんの心にもし芽生えたとしたら、これが菩提心であって、そしてそれが純粋な信なんです。
 ここの信っていうのは、つまり確信だね。「わたしの人生っていうのは、それしかないじゃないか」と。「わたしの生きる道っていうのは、それしかないんだ」と。「わたしが今与えられた生命の意味っていうのはそれしかないんだ」と。「縁のある衆生のために、わたしが修行するしかない」と。
 あるいは、わたしがまた別の観点からよく考えたのは、これも皆さんによく言うけども――これはね、自分のプライドを利用した考え方でもあるんだけど、「どうせみんなやんないだろう」と。ね。「おれがやるしかないじゃないか」と(笑)。ね。もちろんみんなにもこう、励ましはするわけだけども、みんなっていうのは、周りっていうのはさ、結局最後は自己責任だから。最後はどうしても自己責任になってしまう。だから例えば、「誰々さん頑張って、みんなを救ってくれ」っていうのは、ちょっと無責任なんだね。だからみんなはちょっと期待できないと。ね。あるいは、もちろんこういう修行仲間は別にして、自分の家族とか親類とかを見渡した場合ね、ちょっと無理かなと。まあ将来的には別にして、五年、十年でね、悟る人いないだろうと。「じゃあこの縁のある一族とか友達とかを救えるのは、おれしかいないじゃないか」と。「おれに任せろ」と。ね。「おれがみんなを引っ張ろう」と。しかしそれは、いつも言うように言葉だけじゃ駄目で、そのためには、わたしがリアルに本当の意味で悟るしかないと。そして、さっきも言ったように、「それこそがわたしの生まれてきた意味なんだ」と。こういうような信ですね。
 で、ここにおいて、今ちょっと論理的な言い方をしたけども、この論理っていうのは後付けであって、この論理が入りこまない、純粋な確信があるんだね。これはちょうどだからわれわれがね、われわれが、いろんなけがれを今負ってるわけだけど、そのけがれがちょっと煤がのけられて、ちょっとだけ心の輝きが出てきたときに、バチッとはまるんです。よく分かんないけど、「あ、これだ!」と。「わたしが生まれてきた意味はこれしかないんだ」と。「みんなのために仏陀になる。これだけなんだ!」ってところに、皆さんが――あのね、この一瞬でもいいですよ。例えばね、一瞬そこにパチッと心が合う。「あ、やっぱこれなのかな? わたしが生まれてきた意味はみんなのためなのかな? そのために仏陀になんなきゃいけない」――例えばIさんがそういう気持ちになったとしますよ。Iさんが一瞬、「そうだ!」――でも普通この二、三秒後に現実的なことが出てきます。「でも修行辛いし、ちょっと社会的にいろいろあるし、お金稼がなきゃいけないし、でもわたし――」Iさんがよく言うのは、「わたし根性なしだし」とかね。なんだっけ、あの、「へたれだし」とか(笑)。つまり余計なね、否定的な情報とか、余計な合理的発想がいっぱい出てくるんですね。これは全部けがれです。ね。でもその一瞬でも、「あ、そうなのかな? わたしは仏陀の道を歩かなきゃいけないのかな?」――これが信なんです。純粋な信なんです。だからこれを大事にしろって言ってるんです。これが一瞬でも出たら、できるだけそれを盛り上げる。自分でね。で、あっためて、あっためて、それから心が外れないようにする。
 まあちょっと話がずれるけど、よくね、無料体験とかでもよくそういうのあるんだね。例えばよくわたしが無料体験とか担当してね、まあそれは多分縁が目覚めるんだと思うんだけど、こうなんとなく「痩せたい」とか言って、来た女の子とかでも、こういろいろ話してると、だんだんこう盛り上がってきて、「もう、わたしこの道しかないような気がしてきた」

(一同笑)

 で、「もう絶対やります!」とか言うんだけど……で、連絡来なくなるの(笑)。

(一同笑)

 あれ? あの盛り上がりなんだったんだ(笑)?――つまりそれは、多分縁があって、もともとその人も修行者の素質があって、わたしとの交流とかで縁が目覚めたんだけど、でも、その信が多分パッと消えちゃった(笑)。家に帰る途中とかに消えて(笑)、もしくは家に帰って、家族と話してるうちに消えちゃったのかもしれない。で、そういうことが多々あるんだね。だから皆さんもそれは気をつけなきゃいけない。
 つまり教えを学んだりね、例えば今回みたいに合宿とかしたりとか、そういう修行にがんばってるときに燃えあがる信の炎ね。その信の炎が消えないように。だからもう自然に任せちゃ駄目なんです。ほっといたら悪いカルマによって消えるかもしれない。だから自分で意識的にその純粋な心、純粋な信が消えないように、消えないように、気をつけなきゃいけない。逆にいうと、消えそうになったらまずいと思って、それをもっと燃えあがらせると。「あ、なんかわたしの心は、一週間前よりもちょっと心が下がってきててね、あんまりその、修行とか菩提心とかから離れてるな」と。「純粋な信がなくなってるな」って思ったら、まあ教学するなり、修行するなり、あるいはてっとり早くムドラーして気を上げるなりして、その信を高める作業に入んなきゃいけないっていうことだね。

share

  • Twitterにシェアする
  • Facebookにシェアする
  • Lineにシェアする