「私が見たアドブターナンダ」より抜粋「師ラーマクリシュナとの出会い」(1)
◎師ラーマクリシュナとの出会い
ラームダッタはよく、シュリー・ラーマクリシュナがお説きになった、深い真理を説明している素朴な例え話を繰り返し話していた。――そしてそれはラトゥの心に強く訴えかけたのだった。
それらの例え話は、彼の中に、神への愛、神への情熱を呼び覚ました。
彼の心は、シュリー・ラーマクリシュナに会うことを切望した。
その熱望が苦悩となり、その苦悩で彼は落ち着かなくなり、彼の心の中に数えきれないほどの疑問が沸き起こった。
「えっ? そのパラマハンサとは誰だろうか?
このような素晴らしい言葉を語る御方は、どこに住んでおられるのだろう?
ドッキネッショル? ここから遠いのかなあ。
ご主人様に頼んだら、一回だけでもそこに連れて行ってくださるだろうか?」
強烈な切なる思いに襲われて、自分の気持ちを抑えきれなくなり、ラトゥはある日曜日に、勇気を出して手を合わせ、興奮して早口でこう言った。
「そこに行かれるのですか? 是非とも、僕も連れていってくださいませんか?
僕はあなたのパラマハンサに会いたいです。
僕を彼に会わせてくださいませんか?」
自分のお気に入りの少年から発された、これらの簡素で愛のこもった懇願の言葉は、ラームチャンドラの心を掴み、ラトゥはその日にドッキネッショル寺院に連れて行ってもらえたのだった。
ラトゥがシュリー・ラーマクリシュナに初めて出会った年については、いくつかの若干相反する説があるが、1879年というのがかなり信憑性のある説である。
二人が最初に出会ったときには、他には誰もいなかったという説もあるが、われわれはそれとは異なる説を立てる。
われわれは、二つの情報源からこの情報を得た。
まず最初に、シュリー・ラーマクリシュナの甥であるシュリー・ラームラル・チャッタールジから聞いたことを述べよう。
「ある日私は、ラーム・バーブが少年の召使を連れてきたのを見た。
その召使は背丈が低く、強健で、がっしりとしていた。
見た目は小太りではあったが、非常に力強いということを思わせるものがあった。
私はそのときは、彼の名前を知らなかった。
私は、その少年が西側のベランダに立っているのを見た。
ラーム・バーブは部屋の中にいて、おそらく、シュリー・ラーマクリシュナを探しているようだったが、彼はそのとき部屋の外にいたのだった。
シュリー・ラーマクリシュナは、シュリー・ラーディカーのムードで、鼻歌を歌いながらベランダへと来られた。
師はこの詩を即興で歌っておられた。
『そのとき、私は扉のそばに立っていた。
けれども、私の愛するクリシュナとお話をする機会は、
ちっとも巡ってこなかったわ。
それは兄弟バライ(クリシュナのお兄さん、バララーマ)が彼と一緒にいたから。
私は彼と言葉を交わすことができなかったの……』
ラーム・バーブは、その歌を聞いて、部屋から出てきたようだった。
そのとき、タクル(シュリー・ラーマクリシュナはこう呼ばれていた。神という意味)は、ベランダにお着きになった。
彼はラーム・バーブにこう尋ねられた。
『この子を連れてきたのは、お前なのか?
この子をどこで手に入れたのだね?
彼にはサードゥのしるしがある。私にはそれがわかる。』
そう言うと、タクルとラーム・バーブは部屋に入った。
しかし、ラトゥはそこで立ったまま待っていた。
私は、彼に入るように言った。
タクルが彼を呼ぶと、彼は入るか否かを考えていた。」
この部屋の中での出来事を、われわれは運良くラーム・バーブから直接聞くことができた。
ある日、シュリー・ラーマクリシュナの驚くべき御力について話しをしている時に、ラーム・バーブは以下の話を語った。
「サードゥなのか紳士なのか見てもわからないようなサードゥに私が礼拝していたとき、どんな思いや感情がラトゥの心に浮かんだのか、私にはわからない。
私がシュリー・ラーマクリシュナに礼拝して、頭を上げたとき、私は、ラトゥが主の御足を掴み、頭をそこに置いているのを見た。
タクルは、まるでその少年に全く気付いていないかのように、私と話を始められた。
そしてラトゥは起き上がって、合唱して彼の前に立ち、その間ずっと彼の言葉に聞き入っていたのだ。
タクルはいつものように笑いながら話をしていたが、時々、ラトゥの方に視線を投げかけていらっしゃった。
彼は仰った。
『ほら、お座り。なぜ座らないのかね?』
そのときのわれわれの話題は、永遠に自由で、マーヤーの手中に決してさらされない魂についてだった。
彼はこう話された。
『その永遠に自由な魂は、皆、生まれ変わりはするのだが、決して真の本性、宇宙の主との関係を見失ったりはしない。
彼らはまるで、石で出口を塞がれた泉のようなものだ。
石工が泉の吹き出し口を見つけてその石を取り除けば、ただちに水が勢いよく見事に湧き出てくるよ。』
そう言うと、シュリー・ラーマクリシュナは突然、ラトゥに触れた。
そのとき、その少年の中に凄まじい感情が湧き上げてきたのだった。
彼は肉体と外界の意識を失った。
まるで、われわれの誰もが知らない国へと運ばれていったかのように見えた。
彼の体の毛はすべて逆立ち、声は詰ってものが言えなくなり、頬には絶え間なく涙が流れ、唇は激しく震えていた。
私は、この前代未聞のラトゥの感情の高まりに驚いて、口をぽかんと開けたまま、ただただ立ちすくんでいたのだった。
しかし、ラトゥがその状態のまま、一向に収まる気配を見せずに泣き続けているのを見て、私は我に返り、師に取り成した。
『確かに、これは間違いなく、あなたがおやりになったのでありましょう。
しかし、この少年はずっと泣き続けております。』
すると、師は再びその少年に触れた。
その瞬間に、あんなに激しく泣きじゃくっていた少年は、正気に戻ったのだった。」
少年の感情が収まると、タクルはラームラルに、少しばかりのプラサードを彼にあげるように仰った。
プラサードを食べると、彼はすっかり普通の状態に戻り、タクルは彼に寺院に行くように仰った。
初対面で、シュリー・ラーマクリシュナは、このチャプラ地方出身の無学の少年――激しいサーダナーによって、ほとんど計りしれないような霊性の巨匠となるであろう輝かしい霊性の未来を担った、少年の心の内なる働きを理解した。
それゆえに、ラーム・バーブがその少年と共に帰る準備をしていたときに、シュリー・ラーマクリシュナは彼に、その少年を時々ドッキネッショルに送るようにと、愛情を込めて仰ったのだった。
そして、ラトゥに彼はこう仰った。
『また時々ここへおいで。わかったかい?』