「密教の修行を拒んではならない」
◎密教の修行を拒んではならない
はい、「密教の修行を拒んではならない」。これはもちろん密教に入ってなかったらいいんだけど、入った場合――まあもちろん、みなさんがこれからどういう修行を例えばやるかは別にして――まあ例えばですよ、これは実際こういうことをやるっていうことじゃなくて、一例としてね。さあ、みなさん今日は特殊な密教の修行をやりましょうと。で、儀式としてまず酒を飲む、飲みますといって酒が配られる。
ミラレーパとガンポパの話でそういう話があって、ミラレーパのもとに一番弟子のガンポパが初めて会いに来た。ガンポパっていうのは、ミラレーパのもとに来る前は、エリートお坊さんだったんです。エリート的なお坊さんだった。しかもそのさっき言った、ゲルク派とかが流れを汲む、カダム派っていうんだけど、アティーシャっていう人が作った、非常に戒律に厳格な仏教のお坊さんの出だったんだね。
そこである程度の学識を身につけて、で、夢にミラレーパが出てきたんで、「この人こそわたしの師匠かもしれない」っていってミラレーパを訪ねていった。そしたらそこで、ミラレーパがガンポパを迎え入れて「よく来たな」と。「さあ、飲め」って酒を出したんです。
そこでガンポパは、一瞬躊躇したんです。それは――わたしは仏教の僧であると。仏教の僧が酒を飲むなんてとんでもないことだと。しかも、もう一つ自分のプライド。そこには大勢の人がいた。みんなが見ている。みんなが見てる前で、この清らかな僧であるわたしが、酒を飲むなんてできるだろうかと。
しかしミラレーパに強い信があったガンポパは、飲み干したんだね。そこでミラレーパは喜んで、「ああ、本当におまえはよく飲み干した」と。わたしとおまえの強い縁を示してると。
つまり、さっきも言ったように、師匠が密教の道でやることっていうのは非常にいろんな深い意味がある。あるいは師匠じゃなくて、密教で決められているいろんな修行も、基本的な仏教の教えとはちょっと反することもいろいろ出てきたりする。しかしこのガンポパは、もちろん躊躇しながらも飲んだんだけど、ガンポパが躊躇したみたいに、「わたしは清らかな僧だから」「仏教の教えではこうなってるから」とか、あるいは「人に見られたら恥ずかしいから」とか、そういうもので密教のいろんな特別な教えを、もしみなさんがそういうのをやる機会があったらですよ、機会があったらそれを拒んではいけないと。
まあ、これはだから密教の戒律だからね、密教の戒律だから、その人はもちろん密教に入ってるんだけど、密教に入ったら、自分の観念と違う教えがやってきたとしても、それは受け入れなきゃいけないっていうことだね。それはさっきも言ったように、自分は無智なんだからっていうことだね。
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