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「ヴァナヴァッチャ」

ヴァナヴァッチャ

 ヴァナヴァッチャは、過去世において、世尊アッタダッシンが世に現れたときに、小舟ほどの大きさの巨大ガメとして生まれた。あるとき彼は、世尊アッタダッシンが川岸に立っているのを見て、自分の背に乗せて世尊を向こう岸までお連れしたいという思いが生じ、世尊の足元に身を寄せた。世尊アッタダッシンは亀の思いを知って、亀を憐れみ、亀の背に乗った。亀は喜んで、矢のような素早さで世尊を向こう岸まで運んだ。世尊は亀のこの功徳の果報について予言して去っていった。

 彼はこの功徳によって天界と人間界を流転して、数百回にわたって、森林に住む苦行者となった。そして世尊カッサパの時代に鳩として生まれ、慈愛の心を修行する一人の修行者を見て浄信を起こした。そして死後、人間界の良家に生まれ、出家して修行に励んだ。
 その後も天界と人間界を輪廻し、世尊釈迦牟尼の時代に、世尊釈迦牟尼の生まれ故郷であるカピラヴァットゥのヴァッチャ性のブラーフマナの家に生まれた。彼の母は、臨月に入ったとき、森を見たいという熱望が心に生じ、森に入って歩き回った。するとたちどころに、カルマから生じたエネルギーが動き、彼女は男の子を生んだ。
 彼は出家前の世尊釈迦牟尼、すなわちシッダールタ王子と同年代であったため、幼いころは王子と泥んこ遊びをして遊んだ。また、彼は森が好きだったので、ヴァナヴァッチャ(森の子牛)と呼ばれるようになった。

 後にシッダールタ王子が王子の座を捨てて出家し、森で大精進に励んでいるという話を聞いたとき、ヴァナヴァッチャは、「私もシッダールタと共に森に住もう」と思い、家を出て出家し、しばらく雪山に住んでいた。そして「シッダールタ王子が悟りを開き、ブッダになった」という話を聞き、彼のもとを訪ね、弟子入りした。そして森に住みつつ瞑想修行に励み、ついにアラハットの境地に到達した。

 アラハットの境地に到達した後、彼は、カピラヴァットゥに滞在していた世尊釈迦牟尼を訪ね、世尊を礼拝した。そして法友たちに「友よ、森では快適に過ごせましたか?」と聞かれたヴァナヴァッチャは、「友よ、森において、山々は楽しいですよ」と答え、自分が住んでいた山々を称えて、次のような詩を唱えた。

「碧き雲の色を帯び、麗しく、冷ややかな水あり、清き流れあり、インダゴーパカ草に覆われたこれらの岩山は、私を楽しませる。」
 

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