「ナーグ・マハーシャヤ」(17)
あるとき、ナーグ・マハーシャヤの信者である若者が、ナーグに会いたいと強く願い、ナーグの住むデオボーグに向かいました。彼はダッカから列車でナリアングンジに到着しました。季節は雨期であり、この時期のこの地方は洪水で水浸しとなり、移動にはボートを使わなければなりませんでした。
空は重い雲で覆われ、夜の闇は深さを増していきました。そして激しい雨が休むことなく振り続けていました。しかも困ったことに、ナーグの家に行くためのボートを、どこにも見つけることができませんでした。そこで若者は、泳いで行く決心をしました。ナーグ・マハーシャヤの祝福を祈り、水に飛び込んだのです。
そうしてナーグの家にたどり着いたときは、夜の九時ごろになっていました。冷たい水と激しい運動によって、若者の肉体は疲弊しきっていました。彼を見るなり、ナーグは叫びました。
「ああ! 君は何ということをしたのです。なんと向こう見ずな子なのだろう! この時期この辺一帯には、毒蛇がうようよしているのだよ。君は、雨が激しく降りしきるこのような嵐の夜に、このような大胆で軽率な行動を取るべきではなかった。」
ナーグの妻も、彼の軽率な行動を叱りました。若者は涙を流しながら、ナーグ・マハーシャヤに会わずに生きることはつらかったのだ、と語りました。
ナーグの妻は、若者のために暖かい料理を作ろうとしましたが、火をたけるような乾燥した燃料がないことに気が付きました。それを知るや否やナーグ・マハーシャヤは、若者が止めるのを一切無視して、家の棟木を切り始めました。
彼は妻に言いました。
「なあに、私に会うために、毒蛇のうようよいる水の中を、大事な命の危険も顧みずに泳いできた人のためなら、こんなわずかな犠牲など何でもない。」
また別の時、その同じ若者は、大学に通うためにカルカッタに住んでいました。彼はそのころ、苦悩の日々を送っていました。彼の心はまだ叡智の輝きによって照らされていず、最愛の師ナーグ・マハーシャヤに会えない日々は、彼の心を日に日に重苦しくしていました。
ラーマクリシュナの他の弟子たちは、そのころ彼のことを知らなかったので、道を同じくする法友たちと、聖なる交わりをなすこともできていませんでした。
ナーグ・マハーシャヤは毎年、ドゥルガー・プージャーのための必需品を購入するためにカルカッタを訪れてはいたのですが、若者はそれを待つことができず、思いつめてこう考えました。
「たとえ私がナーグ・マハーシャヤのような偉大なる魂の恩寵を得ることができても、その至福を実感することができないならば、私の一生は何になろう。」
彼は絶望のあまり、テラスから飛び降りて命を断とうと決心しました。そして飛び降りようとしたその瞬間、
「あなたは明朝、ナーグ・マハーシャヤに会うであろう」
という声がしました。若者は恐怖で震えました。なぜならそこには誰もいなかったからです。彼は部屋に戻り、ベッドに横になりました。
翌朝目覚めると、誰かが自分を呼んでいるのが聞こえました。ドアを開けると、そこにはナーグ・マハーシャヤが立っていました。ナーグは言いました。
「なぜ君は、あのようなぞっとする考えを抱くのですか? 君のことが心配で心配で、私は君のためにここに来なければならなかった。
シュリー・ラーマクリシュナの世界に入った者が、何を煩う必要がありましょう? 焦ってはいけません。自殺は非常に憎むべき罪なのです。」
ナーグはさらに続けてこう言いました。
「この間までは、君は浅い小川を漂っていました。しかし今、君は深い海に入ったのです。」
それからナーグは、ベルル・マートに若者を連れていき、ラーマクリシュナの出家した弟子たちに彼を合わせて、言いました。
「この若者は非常に落ち着きがありません。どうか彼にあなた方の祝福を惜しみなく与え、彼がグルの恩寵を得ることができるように手助けしてください。」
つづく
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