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「ナーグ・マハーシャヤ」(14)

 ラーマクリシュナの信者の一人であった故バララーム・ボース邸は、ラーマクリシュナのお気に入りの場所でした。ラーマクリシュナの出家した弟子たちは、カルカッタに来るとこの家に宿泊し、ナーグもここでしばしば彼らに会いました。
 ある時、何人かの出家者たちがこのバララーム・ボース邸に集まり、様々な話題について語り合っていました。するとそこに、ナーグがやってきました。すると出家者たちは、さまざまな話題をやめ、話のすべてがラーマクリシュナに集中しました。
 ナーグが家に帰ろうとしたとき、ブラフマーナンダが言いました。
「ナーグ・マハーシャヤがここに入ってきた瞬間、師のことが自然に思い出され、他のすべての話題は落ちてしまったのだ。霊性が今なおインドに現存しているのは、彼のような偉大なる魂たちが存在しているからである。ナーグ・マハーシャヤに、真に栄光あれ。」
 
 ナーグの方も、ラーマクリシュナの出家した弟子たちに対して、最も高い尊敬を抱いていました。ナーグは彼らについて、よくこう語っていました。
「彼らは人間ではありません。主との遊戯のために、人間の姿をとった神々なのです。誰が彼らを知ることができましょう。誰が彼らを理解することができましょう。」

 ナーグの父のディンダヤルは、ナーグが世俗的な義務に無関心であると言って、しばしば非難しました。あるときディンダヤルは言いました。
「お前のような生き方をして、どのようにしておまえは食事や衣服を手に入れるのだ?」
 これに対してナーグはこう答えました。
「お父さん、あなたがそのことで心配する必要はありません。木々は数え切れないほどの柔らかい葉につつまれています。私はこの生涯において、いかなる女性をも色欲的な目で見たことはありません。私はまさに、母の子宮から生まれたままです。私は身につける物は何一つ必要ないのです。」

 また別のおり、同様の問題でナーグとディンダヤルは激しい口論となりました。ナーグは興奮して言いました。
「私は生涯一度も女性を知ることはなかった。またいかなる性欲でさえも、私はこの世界にいかなる関係も持ってはいない。」
 それから、「私ではない、私ではない」と言いながら、ナーグは着物を脱ぎ捨て、真っ裸で家を出ていきました。ナーグの妻は泣き出しました。のちにナーグの信者が、彼を家に連れ戻しました。

 デオボーグに住む中年の未亡人が、ナーグのもとをたびたび訪問していました。しかし実は彼女は、信仰心からナーグを訪ねていたのではなく、ナーグに対して強い性欲を抱き、ナーグを何とか自分のものにしようとしていたのでした。それを知ったナーグはこう言いました。
「ああ! 禿鷹や犬でさえも、骨と肉でできた檻である、卑しむべきこの肉体を食うことは望まないであろう。彼女がこれに執着したことは謎だ。おお、いかに多くの方法で、師は私を試されるのだろう。
 全く、人間が性欲と貪欲を克服することは難しい。それらは主の恩寵によってのみ抑制されうるのである。」

 またナーグはよくこうも語っていました。
「性欲を断つことによって、神に近付くことができる。」

 ナーグの父、ディンダヤルの最期の時が近づいてきました。ナーグの努力によって、死の前の数年間のディンダヤルの修行の進歩は目覚ましく、世俗的な執着は消え、心身ともに健やかでした。
 ある日、ディンダヤルは脳卒中により、突然意識を失って倒れました。しばらくして意識を回復したとき、ナーグは父の耳元で、聖なるマントラを繰り返し、父も一緒にそれを唱えました。
 間もなくしてディンダヤルは、主の御名を唱えながら亡くなりました。ナーグは、父が主の御名を唱え、意識を保ったまま亡くなったということに慰められました。

つづく

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