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「ナーグ・マハーシャヤ」(10)

 ラーマクリシュナの病は悪化の一途をたどり、寝たきりの状態になっていました。
 そんなある日、訪問に訪れたナーグに対して、ラーマクリシュナは言いました。

「おお、よく来た。医者たちは私の病気を治すのをあきらめたが、おまえは病気を治す呪文を知っているかい? もしおまえに治療できるのなら、診察してみなさい。」

 ナーグは、しばらく頭を垂れて考えた末、その強力な意志の力によって、師の病気を自分の体に引き受けようという決心を固めました。ナーグはこう叫びました。

「そうです、そうすればよいのです。師よ、私は知っています。あなたの恩寵によって、私はすべてを知りました。今この瞬間にも、あなたの病気は治るのです!」

 ナーグがそれを実行しようとすると、ラーマクリシュナは弟子を守るために、それを止めました。そしてこう言いました。

「その通りだ。お前にはそれができる。お前は病気を治すことができる。」

 ラーマクリシュナがついにこの世を去る日の5、6日前、ラーマクリシュナの部屋にナーグが入っていくと、ちょうどラーマクリシュナが、弟子にこう話しているのを耳にしました。

「アマラキーは、今の季節でも手に入るだろうか。私の味覚は駄目になってしまった。でもアマラキーの果実を食べれば、味覚を取り戻すことができると思うのだよ。」

 その場にいた信者の一人は、こう言いました。
「師よ。今はアマラキーの季節ではありません。どこで手に入りましょうか。」

 しかしナーグは、師の神聖な口からアマラキーという言葉が出たのだから、必ずどこかで手に入るに違いない、と考えました。そして誰にも告げずに静かにそこを去り、アマラキーの果実を探しに出かけました。
 しかしどこに行っても、季節はずれのアマラキーは見つかりません。ナーグは三日間、あちこちの果樹園を当てもなくさまよい続けました。
 三日目に、ナーグは、手にアマラキーの果実を一つ持って、ラーマクリシュナの前にあらわれました。ラーマクリシュナの喜びには際限がありませんでした。子供のように大喜びして、こう言いました。
「ああ、何と美しいアマラキーだろう! おまえはどうやってこの果実を見つけてきたのだい。」

 その後、ラーマクリシュナは、ナーグに食事を用意するようにと、弟子のシャシに命じました。シャシは言われたとおりに用意しましたが、ナーグは手をつけようとはしませんでした。皆が勧めても、黙ったままでした。実はこの日は断食の日だったので、ナーグはそれを固く守っていたのです。
 シャシからその報告を受けたラーマクリシュナは、ナーグの食事を持ってくるように言いました。そして食物の一つ一つにほんの少しずつ舌を触れて、その食事をプラサード(神や師にささげられた供物のお下がり)にしました。
「さあ、これを彼に与えなさい。きっと食べるだろう。」

 ナーグの前にそれがならべられると、ナーグは、
「プラサード! プラサード! 神聖なプラサード!」
と叫び、皿の前にひれ伏してから、食べ始めました。
 すべての食事を平らげた後、ナーグは、なんと皿代りにされていた葉っぱまで、すべて食べてしまいました。ナーグは、プラサードとして与えられたものは、何一つ残すことができなかったのです。この出来事以来、ラーマクリシュナの弟子や信者たちは、ナーグには決してプラサードを葉の上に乗せて出すことはありませんでした。たまたま葉に乗せられたプラサードが出されることがあっても、彼らはナーグのことを注意深く監視して、彼が食事を終ると、葉まで食べてしまわないようにすぐに葉をひったくるようにして片付けるのでした。

つづく

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