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「アドブターナンダ」(10)

 あるときスワーミー・ヴィヴェーカーナンダは、カシミール旅行のお土産として、高価なショールを買い、それをアドブターナンダにプレゼントしました。

 その翌日、アドブターナンダはそのショールを着けて、ヴィヴェーカーナンダの弟子であるシャラト・チャンドラ・チャクラヴァルティの元を訪れました。シャラトがそのショールを褒めると、アドブターナンダは言いました。

「シャラト、気に入ったか? それは良かった。
 このような高価な贈り物は、私のような出家修行者のためのものではない。
 ヴィヴェーカーナンダからの贈り物だから、私は一日だけ着けた。君が受け取ってくれると私は非常に嬉しい。」

 アドブターナンダはこう言って、ショールをシャラトに渡しました。シャラトはまごつきました。
「いいえ、これは私のグルからあなたへの贈り物ですから、私が受け取るわけにはまいりません。」

 そう言って、シャラトはショールをアドブターナンダに返しました。

 後日、この話をシャラトから聞いたヴィヴェーカーナンダは、シャラトに言いました。
「君が受け取ってくれたほうが良かった。彼はあのショールを、多分別の人にあげてしまうだろう。」

 ラーマクリシュナの在家信者であったバララーム・ボースは、ラーマクリシュナの出家弟子のために、自分の家に一部屋を用意しており、幾人かの修行者たちは、ときおりそこに滞在していました。
 バララーム・ボースは、アドブターナンダにもそこに滞在してほしいと懇願しました。アドブターナンダは、自分の生活は時間が非常に不規則なので、一家に迷惑をかけるだろうと言って、辞退しました。しかしバララーム・ボースは、聖者を家に住まわせることは、祝福にこそなれ迷惑になるはずがない、われわれはアドブターナンダの不規則な生活に合わせて都合をつけることができると言い張って、強く懇願しました。
 ついにアドブターナンダは同意し、バララーム・ボースの家に行き、結局その後9年間、その部屋に住むことになったのでした。

 バララーム・ボースの家に住むようになってからも、アドブターナンダは以前と変わらぬ厳しい修行生活を送り続けていました。部屋には、小さなベッドと、茶を沸かす囲炉裏以外、何もありませんでした。
 アドブターナンダは一日のほとんどを外ですごしていましたが、朝方と夕方のほんのちょっとの時間は、この部屋で信者たちと、神聖な事柄について語り合っていました。

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