パトゥル・リンポチェの生涯と教え(66)
◎パトゥル、老人ラマから教えを受ける
ある老人ラマがシャーンティデーヴァの入菩提行論を教えていた。彼の聴衆の中には、パトゥルがいた。彼は人知れず、普通のみすぼらしい放浪ラマとして座っていたのだ。数日後、老人ラマがテキストの半分を教え終えると、説法を中断して、弟子たちに言った。
「偉大なパトゥル・リンポチェがシュリー・シンハ哲学大学で教えを説くためにゾクチェン僧院に来るらしい。彼は彼の専門である入菩提行論を教えるであろう。そこへ行って、話を聞こうではないか。」
老人ラマは、みすぼらしいラマ(パトゥル)が際立って熱心な聴聞者であることを知っており、彼を見つけ出して言った。
「さあ! 君も行こう!」
彼らは皆、教えを聞きにシュリー・シンハ大学に向かった。彼らが到着したとき、老人ラマは席を見つけて座った。
すると、パトゥルが出てきて法座に座った。
パトゥルを見て、老人ラマは叫んだ。
「おや、わたしの生徒がいるではないか! 」
パトゥルは答えてこう言った。
「ちょっと、わたしの先生がいるではありませんか!」
彼はからかうように言い足した。
「あの人はわたしに入菩提行論を説いてくれた人の一人だ。まだ半分しか終わっていないけどな!」
パトゥルは老人ラマを法座の近くに上らせ、すぐ傍に座らせた。老人ラマは、信仰と恥ずかしさが入り混じった心境でそこに座っていた。
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