ライトエッセイ　き・・・キールタン

　キールタン、あるいはバジャンというのは最近ではよく「歌うヨガ」などとも表現されますが、神への祈りの歌を歌うことです。これは特にバクティヨーガでは中心的な修行の一つになりますが、バクティヨーガ以外でも、キールタンを歌うことはヒンドゥー教、あるいはインドのヨーガの世界ではごく一般的な日々の実践です。

　密教の世界では、ドーハーと言って、悟りの境地を即興で歌にする伝統もありますね。チベットで最も人気のある聖者ミラレーパはこれがとても得意で、「十万歌」と呼ばれる有名な作品が後の人によってまとめられています。

　さて、もともとのインドのキールタンは、インドの楽器と独特の歌唱法による独特の音楽ですが、現代では、西洋においてはたとえばクリシュナダース、ジェイウッタル、デーヴァプレーマ、その他のミュージシャンたちが、現代的・西洋的な楽器・メロディ・歌唱法で、現代的なキールタンをいろいろと作成・演奏していますね。これはとてもいいことだと思います。

　もともと歌というのは、一般的な世俗の歌もそうですが、心に根付きやすいものです。メロディも現代人には現代人に合った、心に根付きやすいメロディがあるでしょうから、伝統にこだわる必要はないと思います。それよりもそこで歌われる言葉の内容や、あるいはどれだけ心が込められているかが重要ですね。

　このような現代的なキールタンは西洋ではよくコンサートやフェスタなどがおこなわれているようですが、日本ではあまり見ることがありませんでした。ヨーガスクール・カイラスでは以前から内輪向けにキールタンをおこなっていましたが、２０１３年に大阪と横浜で一般向けの「バクティヨーガ・フェスタ」を行ない、そこで何曲かキールタンを歌わせていただきました。その当時はあまりキールタンが日本に浸透していなかったので、やる前は「大丈夫かな？」という感じでしたが、やってみるとみんなノリがよく非常に盛り上がった覚えがあります（笑）

　その後、一般的なヨーガ教室などでも徐々に様々なかたちでキールタンをおこなう人たちが増えてきましたね。とてもいいことだと思います。

　カイラスでは、マントラや神の御名を繰り返すキールタンと同時に、日本語の歌詞をつけたキールタン（というかどちらかというとドーハーのような修行の歌）も多数作成しています。それは上述のように、歌というのは心に残りやすいので、聖典を学ぶと同時にそれらの内容を要約したような歌を何度も歌うことで、心に聖なるデータが根付きやすいと考えるからです。

　ところで、わたしもヨーガ教室の祭典などでキールタンのヴォーカルを務める機会はよくあるんですが、わたしは今まで音楽を正式に学んだことはなく、もちろん歌のレッスンなども受けたことはありません。ですからなかなか高い音が出なかったり、声が出なかったり、正確な音程で歌うのが難しいことが多いんですが、面白いのは、そのように一生懸命音程を合わせようとか、声を出そうと思って歌うとうまくいかないんですが、そういうことは考えずに、ただ神に心を合わせ、心を込めることに集中すると、自然に良い声が出て、出なかった高い音も出たりするんです（笑）。これは微妙にそうだというのではなく、劇的にそうなんです（笑）。
　やはりキールタンはただの歌ではなく、神への捧げものということですね。

　そしてこの真理は、バクティヨーガの教えに基づけば、一切に応用できる真理です。つまりわれわれが日常のあらゆる行為を表面的にうまくやろうとするよりも、神への捧げものとして心を込めておこなうならば、一切は神の意にかない、うまくいくでしょう。

追記：キールタンで思い出しましたが、カイラスでキールタンの練習をやっていると、かなりの確率で、女性のコーラスの声が聞こえます。誰かが歌っているのかと思って見渡すと、だれも歌っていません。微妙にではなくハッキリと、しかも一定のフレーズの間ずっと聞こえています。女神さまやダーキニーが参加しているのかもしれませんね。
　練習のときによく聞こえるのですが、本番のときは、聞こえないというよりも、カイラスのみんなはキールタンを一緒に大声で歌うので、聞こえていてもわからないでしょうね（笑）。カイラスの生徒さんで本格的に歌のうまい人がよくキールタンでコーラスを入れたりしてくれていますが、実はその中に女神も混ざっているかもしれませんね。
　カイラスで録音した楽曲の中にも、女性の歌声が聞こえるという声はよく聞きます。それは人によって聞こえる曲が違うので何ともいえないのですが、「ＪＡＹ　ＪＡＹ　ＭＡ　ＤＵＲＧＡ」という曲は、女神様の曲だけあって、多くの人が聞こえると言います。よかったら皆さんも聞いてみてください。特に１：０８～１：２８あたりの、

ツァメーヴァ　マーター　チャピター
ツァメーヴァ　ヴァンドゥフシュチャ　サカー
ツァメーヴァ　ヴィディヤー　ドラヴィニャム
ツァメーヴァ　サルヴァム　ママ　デーヴァ

のあたりがよく聞こえます。歌っているのはわたし一人なのですが、一緒に歌っている女性の声が聞こえます。ただ、人によって違うので、この部分で聞こえない場合は他の部分も聞いてみてください。もちろん聞こえなくても特に問題はありません（笑）。

「ＪＡＹ　ＪＡＹ　ＭＡ　ＤＵＲＧＡ」
https://www.youtube.com/watch?v=bHboWkymb_g&index=36&list=PLwd8H8l408XEnS3tgjD4X44BoNlGwLxwL