yoga school kailas

準備修行


※このシリーズは、既存の6ヨーガの解説書をもとにしていますが、私の独断による大幅な付加・削除・アレンジを加えていることをお断りしておきます。
 もとの論書がお読みになりたい方は、「チベットの密教ヨーガ」(文栄堂刊)などをお読みください。

 最勝なる世尊ヴァジュラダラ、そしてヴァジュラダラと変わることなき諸々の聖なるかたがたの御足の蓮華に、大きな喜びをもって礼拝いたします。

 あらゆる功徳と神通力を備えた、自在なるヴァジュラダラの本質である、吉祥なるグルの御足に礼拝いたします。

 自在なる成就者であるティロー、ナーロー、マルパ、ミラレーパと伝承されてきた「ナーローの六ヨーガ」といわれる、きわめて甚深なるタントラの要点を集めた道、あらゆる方向に名声が行き渡ったこの道を、ここに説こう。

1:準備修行

1-1 共通の準備修行

その1:パーラミターヤーナとマントラヤーナの共通の道を学習すること

 まず、このナーローの六ヨーガの道において、パーラミターヤーナとマントラヤーナの両方に共通する諸々の基礎的な教えを学習するプロセスが必要である。

 そのように基礎的な教えを抑えたうえでこの修行を修習するならば、ナーローの六ヨーガ自体を成就するのみならず、顕教と密教の両方の道の要点に完全に導かれる。これがこの流儀の大きな特長であることを理解しなければならない。

その2:心を浄化するプロセス

 初めに、大乗のグルの定義を備えている人に対して、心身において正しく帰依すべきである。

 有暇は大変意義あるものであり、得がたいものである。
 心を浄化することによって、有暇における生き方の核心を獲得したいという大きな望みが生じる。
 その最高の核心は大乗の道に入ることであり、その入る門は菩提心そのものであり、正しい菩提心が心の連続体にあるならば、その大乗者は偽りのない者となる。しかし菩提心が言葉だけとなったならば、その大乗者も言葉だけのものとなる。
 そのように、智慧ある者は、その菩提心の妨げとなるものを順に排除してから、完全な菩提心を生起すべきである。

 初めに、この世に執着する心を退けないならば、それは大乗と小乗のいずれにとっても道の害である。よってまず、自分がこの世に長生きせずに死ぬことを想像する。そして死んだ後に、自分が悪趣のさまざまな状態にさまようことを想像する事によって、この世に対する執着の心を退けるべきである。

 次に、六道輪廻のそれぞれの世界のデメリットを思念することによって、来世の幸福に対する渇愛の心を退けて、意を解脱に向けるべきである。

 その後に、自己の寂静の安楽への執着を退けるために、慈愛と哀れみの根本を有する、偽りのない菩提心を浄化すべきである。

 次に、菩薩行という荷を負うことが可能ならば、菩薩戒を受持してから、六つのパーラミターを学習することが一般的である。特に、瞑想の本質である「寂止によって心を静寂にすること」と、智慧のパーラミターの本質である「諸々の法則は幻と空のごとしと悟る正観」について学習すべきである。

 次に、ヴァジュラヤーナのサマヤ戒という荷を負うことが可能ならば、「グル・パンチャーシカー」を学んだ後、グルへの諸々の師事の仕方を正しくして、マントラヤーナに入るべきである。

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