「スレンドラナート・ミトラ」(1)
スレンドラナート・ミトラの生涯
ラームチャンドラ・ダッタはスレンドラとは近所同士であり、スレンドラが苦しんでいることを知っていました。 ラームチャンドラ・ダッタはスレンドラを救うために、彼を師ラーマクリシュナの元に連れていこう思ってました。しかしスレンドラは、いつもそれを拒否しました。
彼はこのように言いました。
「いいかい! お前が彼を尊敬するのは勝手だが、でもなぜ私がそこへ行かねばならないのだね? 私にはその場所は合わないよ。鶴の中に白鳥がいるようなもんだ。もうかんべんしてくれないか。」
ラームチャンドラ・ダッタは、自分の師に対して述べられた皮肉にとても傷つきましたが、それでも決してあきらめませんでした。
幾多の説得の後に、ついにスレンドラは、
「よろしい! そこまで君が言うなら、行ってみることにしようではないか。
しかしその聖者が偽物だったら、彼の耳をつねってやるからな。」
と言いました。
1880年頃、スレンドラが初めてドッキネッショルを訪れた時、ラームチャンドラ・ダッタとマノモハンも一緒でした。
その日、師の部屋は多くの供物でいっぱいでした。スレンドラは、彼の批評家としての立ち位置を譲らないことを決めていました。だから彼はラーマクリシュナに何の挨拶もせずにその場に座りました。
師は、
「なぜこの男は、子猫のようではなく、若い猿のような態度をとっているのだね?
母猿は動き回るので、子猿は自分の努力によって母親にしがみつかなければならない。
しかし子猫は、母親が来てくれるまでミャーミャー泣くだけで、母親はやさしく抱きとってくれるのだよ。
若い猿は時々母親につかまる手を離してしまう。そして地に落ちてしまい、ひどく傷ついてしまうものだ。
しかし子猫はこのような危険な目には遭いはしない。なぜなら母親自らが、あちこちに運んでくれるのだから。
神に自身を明け渡すことと、自分自身で試みようとすることは、全く違うものだ。」
とおっしゃいました。
師の言葉はスレンドラに深い印象を与えました。そしてこの初めての師との謁見が、彼の人生の大きなターニングポイントになったのでした。
ここで彼は気付きました。
「たしかに私は若い猿のように振る舞っている。それがすべての問題の原因だ。これからは、自分の内側に宿る母なる女神様に、どんな状況であってもすべて捧げきろう。」
彼はそのとき、強い内的力と、偉大なる神の姿を感じました。
彼が帰るとき、師は彼に「必ずここへまた来なければいけないよ」とおっしゃいました。
スレンドラはこのときにはへりくだり、そして喜んで師に礼拝を捧げました。
帰り道、彼は、
「ああ!師は私の間違った概念を変えてくれた! 私の耳をつねってくれたのだ!
このような方がこの世におられるなんて、まるで夢を見ているようだ。信じられるかい? 彼は僕の深い意識を的確に読み取ったんだ。
今、自分の人生には何か多くの意味があるのだということを感じるよ。」
と、仲間たちに言いました。