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要約・ラーマクリシュナの生涯(6)「ゴダドルの少年時代」

6 ゴダドルの少年時代

◎修行者たちとの交わり

 クディラムの長男のラムクマルは、クディラムの生前からすでに家計を支えていたが、クディラムの死後は、よりいっそうその責任が重くなったことを感じた。また、ラムクマルの妻も、悲しみにうちひしがれるチャンドラデーヴィーをよく助けた。

 ゴダドルは、内面はどうだったかは別にして、外面的には以前と変わらず快活でいつも楽しげであった。ときどき火葬場やマンゴー林などの人気のないところをさまよっているのが見られたが、人々は少年にありがちな落ち着きのなさ故だと考えていた。しかし実はゴダドルはこの頃から、以前よりもより孤独を愛するようになっていた。

 またこの頃からゴダドルは、村にやってくる僧や修行者たちのところへ行き、積極的に交わった。この村には、聖地プリーに行く街道に面して、修行者用の一件の家があったのだ。ゴダドルはしばしばそこを訪れ、僧や修行者たちが毎日どのような儀式をおこなっているか、どのようにして、施しで得た簡素な食物をまず彼らのイシュタ(理想神)に捧げ、その後でそれを食べるか、どのように一切を神に任せきって、重い病にも辛抱強く耐えているか、またどのように、自分の切羽詰まった要求をも、人を騒がせまいとの配慮から、口に出すのを控えるか、というようなことを観察したのだった。
 しかし彼はまたときどき、彼らに混じって、清らかな僧を装った偽善者が、どのように自分の利己的な目的のために彼らの生き方を真似しているかということも観察した。
 そしてゴダドルは日々、木や水を持ってくるといった小さなことで、彼らを助けた。修行者たちも、この愛らしい少年に心惹かれ、神への祈りや賛歌などを彼に教えた。また托鉢で得た食物を一緒に食べて楽しんだ。

 ゴダドルが修行者たちをしばしば訪ねていることを知って、チャンドラデーヴィーは最初は特に心配せず、修行者たちのために食物その他の必需品をゴダドルに持たせてやったりしていた。しかしそのうちゴダドルは、修行者の灰を体に塗って帰ってきたり、額に印をつけたり、修行者の衣をまとって帰ってきたりした。そこでチャンドラデーヴィーは、修行者がゴダドルを拐かして連れ去ってしまうかもしれないと心配し、泣き始めた。ゴダドルがいくら心配するなといっても、母をなだめることはできなかった。そこでゴダドルは母に、もう修行者たちのところへは行かないと約束し、母を安心させた。
 そしてゴダドルは最後に、修行者たちのところへ別れを告げに行った。理由を聞いた修行者たちはチャンドラデーヴィーのところへやってきて、ゴダドルを連れ去ろうなどという考えは自分たちは考えたこともない、幼い子供を両親の許しも得ずに連れ去ることは誘拐であり、そのような悪業を修行者がおこなうはずがない、と説明して、チャンドラデーヴィーを安心させた。こうしてゴダドルはまた、修行者のもとへ通うことができるようになった。

◎聖糸を身につける

 ゴダドルがまもなく満九歳になろうとするとき、兄のラムクマルは、ヒンドゥー教の伝統である聖糸授与式(ウパナヤナ)の準備を始めた。
 この少し前に、鍛冶屋のカーストに属するドニがゴダドルに、もし聖糸授与式のときに彼女から布施を受け、彼女を『母』と呼んでくれるなら、とてもありがたい、と言った。ゴダドルは彼女の信仰と愛情に心を打たれ、その願いを叶える約束をした。貧しいドニは、少年の約束を信じて、力の及ぶ限りお金や品物を蓄えて、その日がくるのを待っていた。
 あるときゴダドルはこの約束をラムクマルに話したが、ラムクマルは、そのような伝統に反することはしてはいけない、と言って反対した。ゴダドルは反対されてもドニとの約束を守ることを主張し、そのような約束を破る不誠実な人間は、そもそも聖糸を帯びる資格はない、と主張した。
 結局、クディラムの友人だったダルマダース・ラーハーの仲裁によってラムクマルが折れ、聖糸授与式は滞りなく行われ、約束通りにドニは布施をおこなった。彼女は、自分の人生に神の恵みが与えられたと考えて歓喜した。

 
◎バーヴァ・サマーディ

 その年のシヴァラートリー(年一回行われるシヴァ神の大祭)の夜、ゴダドルは断食をし、強烈な信仰心をもって、すべての神々の源泉である大神シヴァを礼拝していた。そして礼拝の四分の一が終わり、ゴダドルがシヴァの瞑想にふけって座っていると、突然、友人たちがやってきた。彼らの言うところによると、近くのシーターナート・パインの家で、シヴァの栄光を物語る芝居が上演されることになっているのだが、シヴァを演じる役者が突然、病気になってしまったので、代わりにゴダドルにシヴァの役をやって欲しいとのことだった。ゴダドルは最初、礼拝の妨げになるという理由で断ったが、友人たちは、もしシヴァの役を演じるなら、その間中、ずっとシヴァのことを思わなければならない。それは礼拝と同様によいことだ、と主張して、ゴダドルを説得した。
 ついにゴダドルは承諾し、シヴァに扮して、パイン家でおこなわれる芝居の舞台に上がった。もつれた髪と、ルドラークシャの数珠、そして体中に灰を塗ったゴダドルは、その瞬間、シヴァの思いに深く没入し、バーヴァ・サマーディと呼ばれる状態に入り、外界の意識を失った。ゴダドルがいつまでも意識を回復しないので、結局その夜の芝居は中止になった。
 このとき以来、ゴダドルはときどき、この種の忘我状態に入った。瞑想をしたり、神々を称える歌や音楽を聴いたりしている内に、自分を忘れ、外界も忘れ、バーヴァ・サマーディに入るのだった。
 そしてその状態から覚めた後に、尋ねられると、そのように通常の意識を失っている間中、神の姿を拝して、信じがたいほどの喜びを経験していたのだ、と説明した。
 その後、ゴダドルは頻繁にこの状態を経験する内に、これに慣れ、自分の意志でこの状態を制御できるようになった。

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