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シュリー・チャイタニヤの生涯(10)

【カージの変容】

 ジャガイとマダイの改心は人々に多大な影響を及ぼし、ニマイの信者は驚異的に増加する結果となり、ナディアの通りには昼も夜も神の賛美歌が鳴り響きました。学識ある地域の貴族階級のブラーフマナ達は、ニマイの寛大な受入れ姿勢と彼の教義を、まったく喜びませんでした。特に霊的問題においてのカースト放棄は、彼らに忌み嫌われていました。そしてそのことが社会においての彼らの重要性と影響力の消失につながるだろうと考えていました。

 そのためブラーフマナ達は、ベンガルのイスラム君主の地元総督であるカージのところへ行き、土着宗教を弱体化させているニマイと信者達の行為が阻止されない限り、いずれは社会情勢の不安定化につながると訴えました。ムスリムにとってはブラーフマナもヴィシュヌ派と同様に異教徒でしたが、カージは国家の安定性に影響を及ぼす問題であるなら自らの介入は義務だと感じました。しかし彼が即座に布告した賛美歌禁止令も効果はなく、逮捕するめに出動させた警察もニマイらを取り巻く巨大な群集に揉まれてしまいました。これがカージを激昂させ、反抗的集団を容赦なく攻撃するためのアフガン軍隊が解放されました。
 人々の心にあった恐れは、神への無私の愛と強い信仰心によって取り除かれました。しかし町の一角が攻撃を受けた時、別の場所でしばらくキールタンを続けていた一行も、遂には黙ってしまいました。

 そして今、主ご自身がこの問題に着手しました。召集された人々は、主を中心にした巨大なキールタン集団となりました。信仰的狂乱ムードの中、カージの家へ向かった人々は、カージとの会見を求めました。主と向かい合ったカージの強い態度は即座に変化し、彼は謙虚な態度で話すようになりました。主を「ハリ・ガウル」と呼びかけ、今までの自分の行動は自らの意志ではなく、ヒンドゥー教徒に駆り立てられたためだと言い、また、
「ヒンドゥー教徒がナーラーヤナと呼んでいる、神のみがただいらっしゃるのです。人々はあなたこそが彼だと言っていました。そうなのでしょうか?」
と聞きました。すると主はカージの指を握りしめて、
「お前は、ハリ、キールタン、そしてナーラヤナという聖なる名前を口にした。すべての罪は赦された。」
と仰いました。カージは直ちに変容し始め、その目から滝のように涙を流しながら、謙虚で従順な姿勢で主の前にひれ伏しました。カージはすぐに、誰もキールタンの妨害をしてはならないという命令を発布しました。

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