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パトゥル・リンポチェの生涯と教え(12)

◎タゴ僧院のある僧

 パトゥルは、入菩提行論を教えることで有名であった。彼は、数日、数週間、あるいは数ヶ月かけて、その全文を解説し、簡潔でエッセンス的なものから、広範囲にわたって複雑なものまで、常にその場に最も適したレベルで教えを説いていた。彼はしょっちゅう生徒に、教えの解説を受ける前に、そのテキストを読んでおくように勧めていたようであった。解説が終わると、彼は、解説した本文をあと100回読むようにと生徒に言った。

 パトゥル自身は、入菩提行論の教えを百回以上受けており、百回以上教えていたが、それでもまだ、その意味を十分に理解してないと常々言っていた。

 ある夜、タゴ僧院のある僧の夢に、一人のラマが出てきた。そしてその僧は、そのラマが入菩提行論の著者シャーンティデーヴァご自身であると感じた。翌朝、一人の放浪ラマがタゴ僧院に到着した。その僧は彼に見覚えがあった――昨晩夢に現われたラマの姿そっくりだったのだ!

 僧はそのラマ(パトゥル)に近づいていき、恭しく礼拝すると、入菩提行論の教えを説いてくださるようにと懇願した。そのラマは会釈をし返して、同意した。

 パトゥルは教えを与えた。パトゥルが去るとき、パトゥルを夢で見たその僧は、パトゥルに同行し、数日間かかる道を同伴して歩いたのだった。

◎入菩提行論の花

 パトゥルはザムタンの数千人の群衆に、入菩提行論の第四章の教えを詳細に説いた。玉座に座る代わりに、彼は、高原でよくみられる自然の造形物で、ポルトと呼ばれる草で覆われた小さな丘の上に座った。

 パトゥルが教えを説き終わると、現地の人々は、草で覆われたその小さな丘に、花が――さまざまな種類の色とりどりの花が咲き始めていることに気づいたのだった。

 夏の季節にカム地方の高原の牧草地にたくさん咲く鮮やかな黄色い花がある。その可愛らしい牧草地の花は「シェルチェン」と呼ばれ、五枚の花弁をつけるのが一般的だ。しかし、しばしば、パトゥルが教えを説いた地では、それぞれの花が五枚だけではなく、十三枚、あるいは十五枚の花弁をつけるのであった。人々は、これらの特別な花を「入菩提行論の花」と呼んだ。しかもそれらの花は、夏でなくとも咲いたのである!

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