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「ヴィヴェーカーナンダの生涯」第一回(4)

【本文】

 また、父親の影響で、貧者への哀れみの心は、ナレーンドラにも深く染み付いていました。小さなころから、乞食に乞われると、母親に無断で、母親の着物や家庭用品などを乞食に与えてしまうのでした。これにきづいた母親はナレーンドラを叱って、乞食から品物を買い戻しました。
 これが何度も続いたので、ある日母親は彼を二階の部屋に閉じ込めました。それでも、通りで乞食が大声で施しを求めだすと、ナレーンドラは、母親の高価な着物を、窓から乞食に投げ与えたのでした。

 これも面白いね。お父さんの影響を受けて、ナレーンドラも、非常にそういった苦しむ人、あるいは貧しい人に哀れみの心、慈悲の心が高まったと。で、それによって――ここのシーンを見ると――まあ、これだけじゃなかっただろうけど、ここの一つのテーマとしては、「お母さんの着物や家庭用品などを乞食に与える」と。つまりおそらく女性の乞食とかが、「わたしは本当に貧しくて着る物が無い」とか、あるいは本当にお椀とかそういうのも無いんだってふうに懇願したんでしょうね。そうするとナレーンドラは、お父さんの真似をして、全く後先考えずに――つまりお金持ちだったからね。お金持ちだったからいろいろあると。で、子供だから当然――お母さんはさ、お母さんって多分、インドのお金持ちの女性だから、おそらく――お母さんも慈悲深い人だったみたいだけど、でもまあそれなりの執着とかあったと思うんだよね。「このサリーはあそこで買って」とか、「このサリーはこれくらいして」とかね。でも子供は何にもよく分からないから、「あ、乞食が服くれと言っている」と。あんな本当に汚いボロボロの服しか着ていないと。うちのお母さんたくさんいい服持ってると。じゃああげましょうって感じで、もう無断でいっぱいあげてたんでしょうね。あるいはうちのキッチンにはたくさんの台所用品があると。でもあの乞食たちは何も調理する道具さえないと。「じゃあどんどんあげましょう」と、やってたんでしょうね。お父さんもそうやってるし。で、それに気付いたお母さんは叱って、乞食から品物を買い取ったと。おそらくまあ――もう一回言うけど、子供には分からないけど、いろいろありますよね。つまり、大人になって――もちろん執着もあるだろうけど、例えば「これはお父さんから結婚記念日に買ってもらったものだ」とかね。あるいは「これは本当になけなしのお金で買った高価なものだった」とかね。あるいは「これは本当に今度のあれに着ていこうと思っていたものだった」とかね。いろいろあったと思うんだね。だから「これは必要だから」っていう感じで買い取ったりしてたんでしょうね。
 しかしそれがあまりにも続くので、「ある日母親は彼を二階の部屋に閉じ込めた」と。しかし通りで乞食が大声で施しを求める――つまり乞食も何度もくれるから分かってたんでしょうね。ここに行けばもらえるって感じで。で、大声で呼ぶと、ナレーンドラはその母親の高価な着物を窓から乞食に投げ与えたと。非常に面白いシーンだね。じゃあ次いきましょう。

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