yoga school kailas

「トゥンコル」

◎トゥンコル

【本文】

1-1 トゥンコル

 ①帰依と発心の詩句を唱える。
 ②グルを頭上に観想して祈願する。
 ③自分をヤブ・ユムのイダムとして観想する。

 『こののちにトゥンコルの実践に入る。トゥンコルの内容は、流派によって種々のパターンがあるが、ここではそのうちの一つのパターンを紹介する。

 (1)壺のようにいっぱいにする
 (2)車輪のように旋回する
 (3)鉤のようにひっかける
 (4)金剛縛の印を振り上げて、下に振り落とす
 (5)雌犬の吐き方によって矢のようにまっすぐにする
 (6)頭と体を動かして関節を柔軟にする

 一連のトゥンコルは、満腹時に行なってはならない。

 トゥンコルは、身体やナーディが柔軟になるまで行なう。』

 つまりこれはヨーガのアーサナ、あるいは仙道の気功、これがチベットではこういうトゥンコルっていう形で行なわれてる。でもこれを見れば分かるように、たった六つしかない。つまり、ヨーガとかほどは身体技法を重要視してはいないんだね。重要視してないけども、一応は少ないパターンのものを使ってると。
 最近チベット体操とか流行ってるけど、あれも元はこのトゥンコルだと思います。つまりトゥンコルを、欧米人がチベットで習ったやつをアレンジして、日本の人達もそれに食いついてチベット体操とかいっぱい本も出てたりするけど、元はこのトゥンコルですね。それはいろんな流派があるから、「トゥンコルといえばこれだ」っていうわけではない。流派によってちょっと違ったりする。
 で、これはいつも言うように、アーサナそして気功、そしてこのトゥンコル、合う合わないがあります。アーサナはすごく気持ちいいんだけど、気功はいつも苦しいんですとかね。あとその逆とか。でもわたしはやっぱり総合的にやると、とても相乗効果があっていいと思うね。だからアーサナ――ここは一応ヨーガ教室なので、アーサナをメインにして、たまに気功をやると。そしてたまにトゥンコルとかも入れると、相乗的に体の気の通りがとても良くなると思います。
 はい、で、ここからはちょっと技術的な指導になるね。これはちょっとできるものはやってみましょうかね、ここでね。

◎壺のようにいっぱいにする

 まず一番最初、「壺のように一杯にする」。
 はい、これは壺の呼吸法っていう呼吸法がチベットにあって、それもいろんなパターンがあるんだけど、その一つのパターンだね。
 で、これはちょっと細かく今は読まないけども、二段階に分かれてます。この呼吸法はね。まずその第一段階からいってみましょう。
 はい、第一段階、まずやり方をいうと、顔を左に向け――これ右鼻からって書いてあるけど、これは普通できません。つまりこうやって手を使わないで右鼻だけ吸えって言われても、普通できないよね。これ慣れてくるとできるって言われるんだけど、これは別に両鼻でもいいです。こう左を向いて両鼻からゆっくり吸って、吐くわけですね。
 じゃあ皆でやってみましょうかね。あっ、やってた(笑)? じゃあ次、右を向いて、はい、吸います。はい、吐きます。はい、じゃあ前を向いて吸って、吐くと。はい、これをあと二セット繰り返します。また左を向いて、はい、右を向いて、はい、前を向いて。はい、また左を向いて、右を向いて、はい前を向いて。
 はい、ここまでが準備ね。で、本番は一杯に息を吸って――まず準備として手の親指をこういうふうに握り込んで下さい。で、膝の上に置きます。で、まず最初にやることをいうと、いっぱいに息を吸って息を止めます。で、このときにムドラーとは違って――ムドラーはお腹をへこませますが、逆にお腹を突き出すようにします。で、丹田――へそのちょっと下のところにぐっと力を込めて突き出します。ただ突き出すだけだと気が下に下がってしまうので、同時に肛門を締めます。肛門は締めるけど、お腹は突き出します。で、このへそのちょっと下の辺りにぐーっと力を込めます。で、できるだけ長く、このへそに意識を集中してできるだけ長く息を止めます。
 これ、最後の方は面白いんだけど、苦しくなったら吐くんじゃなくて(笑)、苦しくなったらツバを音を立てずに飲み込みます。まあ立ってもいいけどね。ゴックンってツバを飲み込んで、さらに頑張ると。ね(笑)。いったん「もう駄目だー!」って思ってから、ゴックンって飲んでもうちょっと頑張ると(笑)。もうちょっと頑張って、もう本当に駄目になったら、息を吐くと。これで一セットです(笑)。
 じゃあやってみましょうかね、はい。じゃあ、ちょっと深呼吸から。息を大きく吸って、吐いて、はい、じゃあ完全に吐き切って、はい、吸います。大きく息を吸って、息を止めます。はい、止めたらぐっとお腹を突き出して、へそに集中し肛門を締めて、お腹に集中すると、もう顔が真っ赤になるくらい、「うー!」ってくるはずです。もうそれでいいんで、ぐーっとお腹に集中してください。で「もう駄目だー!」ってなったらツバをゴックンっと飲んで、もうちょっと耐えて下さい。肛門も忘れないで締めて下さい。
 三十秒経過。さあ頑張って。もう失神しそうになるぐらいまでぐーっと力を込めて。四十秒経過。四十五秒経過。はい、終わった人はちょっと休んでいて下さい。五十五秒経過。はい、一分経過。一分十秒経過。一分二十秒経過。一分三十秒経過。はい、みんな終わったかな?
 はい、これ、やって分かったかもしれないけど、これね、ちょっと危険な呼吸法でもあります。一人ではあんまりやらない方がいいかもしれない。ちょっと気を失いそうになるときあるんだね、これやると。ふーって意識が飛んでしまう。
 これをムドラーって言ってもいいんだけど、ヨーガのムドラーに比べると、ヨーガのムドラーの方が上昇の効果はあります。ちょっとこれはどちらかというと気を上げる呼吸法ではない。これはどちらかというと、エネルギーを強めて、ぐーっと深い意識に入る呼吸法だね。だからどっちがいいとは言えないんだけど、これも合う合わないがあるから、これが好きな人はもちろんこれやっても構わないんだけど、これはあんまり気を上げるって感じじゃないね。気を上げたかったら、ヨーガのムドラーの方がいいです。
 これは完全に深い意識に入っていく。これが気に入った人はやってもいいけども、一人でやる時は気をつけた方がいい。本当に気を失いそうになるから、何回かやってると。本当にうわーってこう意識が完全に深く入ってしまうというか。
 はい、これが一番目の「壺のようにいっぱいにする」っていうやつですね。

◎車輪のように旋回する

 はい次、二番目、「車輪のように旋回する」。これは簡単です。まずは蓮華座を組める人は組んで、で、このそれぞれの親指をつかむわけです、普通に。で、これは呼吸を入れても入れなくてもいいと思うけど、腰を右に三回左に三回回す。やってみましょう、右に三回回して左に三回こう回します。はい次、上体を左右に倒す。こういう感じですね。これを何回か行ないます。これもアーサナみたいですね。はい、上体を前後に倒す。

【実演】

(生徒)そんなに!

(一同爆笑)

 これは実はね(笑)、この部分っていうのは、これは流派によっていろいろあるんだね。これが蓮華座でない場合もあります。蓮華座じゃなくて、まさにヨーガのアーサナみたいに両足を伸ばした姿勢でやる場合もあります。これはまさに完全にヨーガの「パシュチモーターナ・アーサナ」ですね。
 ここでは蓮華座ってなってるけども、まあとにかく、何らかの姿勢を保ったまま回したり横にしたり前後に倒したりっていうやつですね、ここはね。

◎鉤のように引っかける

 はい、じゃあ次、三番目、「鉤のようにひっかける」。
 はい、じゃあこれも皆でやってみようかね。これ、やったことある人もいると思うけど、これは立って行ないます。じゃあ立ってみましょう。立ち上がって、まず手は親指を出したグーです。親指を出したグーをこう合わせるんです。で、こう胸の前にまず持ってきます。はい、これは呼吸を入れた方がいいと思うんだけど、この姿勢から息を吐きながら前に押し出します。これをね、全体的に左にこう持ってきて、で、弓を引くように右手を右脇にぐーっと持ってきます、息を吸いながら。そしたらすぐに左手も左脇に持ってきて、で、また息を吐きながら合わせて全体を今度は右に持ってきて、はい、息を吸いながら左手をぐーっと引いて、はい、右手を右脇に持ってきてから、また左に持ってきて、右手を引いて左手も脇に持ってきて、はい、右に持ってきて吸いながらぐーっと左を引いて、右手も脇に持ってきて、はい、こういう運動ですね。これでこう気道を通して行くんですね。

◎金剛縛の印を振り上げて、下に振り落とす

 はい次、次も立ちながらやります。「金剛縛の印を振り上げて、下に振り落とす」。これはね、金剛縛っていうのはこういう感じ。逆に拳を握るこういう感じです。ちょっと痛いけどこういう感じで。この手を、息を吸いながらゆっくりと天にぐーっと伸ばします。で、十分に突き上げたら、今度は息を吐きながら降ろしていきます。できる人は床まで降ろして床へぐーっと押します。はい、で、また吸いながらぐーっと上に伸ばして天をつき、また吐きながら降ろします。

◎雌犬の吐き方によって矢のようにまっすぐにする

 はい、じゃあ次、「雌犬の吐き方によって矢のようにまっすぐにする」。
 はい、これはまず四つん這いになります。はい、ここから息を吸いながら、コブラのアーサナになります。つまり息を吸いながらぐーって感じでここまでね。十分にこのコブラを入れたら、首だけぐっと曲げます。で、口から「はーっ」――十分に吐いたら立ち上がります。立ち上がって、三回づつ足を蹴ります(笑)。これがこの動作(笑)。
 「なぜそんなことをやるんだ?」って言われると、そういうシステムだとしか言えない(笑)。つまり体のシステムを利用して、何かがこれで起きてるんだろうね。まあ、そういうもんです。

◎頭と体を動かして関節を柔軟にする

 はい、じゃあ最後、これも立ってやるやつです。これはね、ちょっと曖昧なんだけど、まず手の関節を一本一本こうやって引っ張ります。そして、あとは全身の関節を揺する。これは首をこうやったりとかジャンプしたりとかして、関節をこう柔軟に揺すります。
 これ一番いいのは、スワイショウね、これがとてもいいです。手を前後に振ったり、あと回したりね。あともう一つ、これはこうやって腰を打つやつだけど、腰を打たないでこういうのもあります。こう手を当てないでこういう感じで。できるだけ関節を柔軟にして、ぐにゃぐにゃぐにゃってこう。
 はい、そして、あとはサッカショウといいますが、激しくこう擦るわけです。この辺も気功とかととても似てるんだね。

 はい、じゃあ、座って下さい。
 チベットっていうのは医学とか占星術とかもそうだけど、インドからの影響と、それから中国からの影響を両方受けてるから、すごくインドのヨーガ的な部分と、それから中国的な気功とかの部分とかも混ざってる感じがあるね。

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