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ジャラーサンダ討伐計画

(17)ジャラーサンダ討伐計画

◎ユディシュティラ・・・パーンドゥ兄弟の長男。ダルマ神の子。
◎クリシュナ・・・至高者の化身。パーンドゥ兄弟のいとこ。
◎ビーマ・・・パーンドゥ兄弟の次男。風神ヴァーユの子。非常に強い。
◎アルジュナ・・・パーンドゥ兄弟の三男。クンティー妃とインドラ神の子。弓、武術の達人。

 王となったユディシュティラと、パーンドゥ兄弟は、インドラプラスタを正しく統治し、その名声は遠く広く広まりました。人々はユディシュティラに、ラージャスーヤという特別な儀式を催して、「皇帝」という称号を使うように勧めました。

 このことについてユディシュティラは、クリシュナの助言が欲しいと思っていました。ユディシュティラが自分に会いたがっていると知ったクリシュナは、自らインドラプラスタにやってきました。

 ユディシュティラはクリシュナに言いました。
「人々は私にラージャスーヤを催して『皇帝』を名乗るようにとしきりに勧めるのですが、あなたもご存知のように、諸国の王のすべての尊敬を勝ち得る者のみが、この儀式を催して、『皇帝』を名乗ることができるのです。私にその資格があるでしょうか? このことに関して、あなたのご意見をお聞かせください。あなたは公正な見方をする人であり、特定の人に対してえこひいきをする人ではありませんし、人に気に入られたいために本当のことを言わないような方ではありませんから、あなたのご意見が聞きたいのです。」

 これに答えてクリシュナが言いました。
「あなたの言うとおり、あらゆる王から認められなければ、『皇帝』となることはできません。
 マガダ国のジャラーサンダ王は、あなたを認めないでしょう、彼は非常に強大で、今まで多くの王を征服してきましたからね。
 方法はただひとつ、ジャラーサンダ王を打ち倒すことです。そうして初めてあなたは皇帝となることができるだけでなく、ジャラーサンダによって牢獄に幽閉されて苦しんでいる諸侯を救うことにもなるでしょう。」

 これに対してユディシュティラは答えました。
「私は皇帝になりたいなどという野心はなく、ただ正しく国を治め、平和に暮らしたいだけなのです。皇帝になりたいなどということは、うぬぼれであり虚栄心に過ぎません。そんな称号は私には何の魅力もないのです。私が皇帝になることを望んでいるのは、私よりもむしろ私の弟たちなのです。
 それに、ジャラーサンダ王は、諸国の王たちが全くかなわないほどの強者です。われわれが戦っても、かなうわけがないでしょう。」

 このユディシュティラの考えは、弟のビーマには気に入りませんでした。ビーマは言いました。
「望みを高く持つということは、王の具えるべき最も高貴な特性です。
 私は安逸な、ただなんとなく満足して生きていくような生活に甘んじることなどはできません。
 私の腕力と、クリシュナの智慧と、アルジュナの技をあわせれば、何事もかなわぬことはありません。ジャラーサンダ王を打ち負かすことさえできるでしょう。」

 クリシュナも言いました。
「ジャラーサンダ王は、なんとしてでも打ち倒さなければならない。
 彼は今、不法にも86人の領主を捕らえて牢獄に入れており、これからあと14人の領主を捕らえて、計100人の王を、犠牲祭のために殺そうと計画しています。
 もしビーマとアルジュナが同意してくれるなら、私も二人とともに行き、ジャラーサンダ王を殺し、囚われの身となっている領主たちを解放したいと思います。」

 こう言われてもユディシュティラは、あまりその気になりませんでした。すると、さらにアルジュナも次のように意見を述べました。
「武勲の誉れ高き家系に生まれたわれわれとしては、クシャトリヤ(武士)らしい行為を何もせずにただなんとなく生きていたとしても、一体何の意味がありましょうか。
 われわれは、自己の義務を全力で果たしてこそ、幸運を得ることができるのです。
 たとえ力のある人でも、無気力のゆえに己の持てる力を発揮しなかったならば、何事にも失敗します。失敗するのは、ほとんどの場合、己の持てる力をしらないからです。しかしわれわれは自分たちの力を知っており、その力を十分に出し切る覚悟もできています。
 なぜユディシュティラは、われわれがジャラーサンダ王を倒すことができないと思われるのですか? われわれが年をとってしまったら、袈裟を身につけて森に隠退し、静かに瞑想の日々を送るのもよいことでしょう。しかし今はわれわれは激しく生き、われら一族の伝統にふさわしい勇気ある行動をとるべきだと思います。」

 アルジュナのこの言葉を聴いて、クリシュナは非常に喜んで、こう言いました。
「さすが、アルジュナなればこその発言です。死は、勇者にも無精者にも、誰にとってもやってきます。しかし武士の果たすべき最も崇高な義務は、人々の信頼にこたえ、正義の戦いにおいて敵を倒し、武士の誉れを高めることです。」

 このようにクリシュナとビーマとアルジュナに勧められ、ついにユディシュティラも、ジャラーサンダを打ち倒すという計画に同意したのでした。

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