クリッティヴァーサ・ラーマーヤナ(3)
第三話「ラトナーカラがブラフマーによって”ヴァールミーキー”と名付けられ、ラーマーヤナを書くという恩寵を与えられる」
ブラフマーは聖仙ナーラダに、「シヴァの言葉は決して叶わないことはない」と語った。
ラトナーカラは、ブラフマーからラーマの御名を授かり、その授かった場所で六万年間、座に座って、その授けられた御名を唱え続けた。
彼は体中をすべてシロアリに食われ、骸骨になった。
このようにして、その肉のない骨の上に塵がつもり、草が生い茂った。
ラトナーカラはその中に埋まりながら、ラーマの御名を唱え続けたのだった。
さらに二万年が過ぎた後、ブラフマーは再びその地を訪れた。
そこには人間の肉体の痕跡はまったくなかったが、ラーマの御名を唱える声が聞こえてきた。
これによってブラフマーは、ラトナーカラがいるのがわかったのだった。
ブラフマーの要請により、七日間、インドラは雨を降らせ続けた。
立て続けの雨により、大地全体が洗い流され、ラトナーカラの骸骨が現われた。
そしてラトナーカラはブラフマーの命令によって意識を取り戻したのだった。
そしてその聖者(ラトナーカラ)は恭しくブラフマーに礼拝し、ラーマの御名という恩寵を授けてくれたことを非常に感謝した。
ブラフマーはその聖者(ラトナーカラ)にこう言った。
「今まではお前はラトナーカラとして知られてきたが、これからはヴァールミーキーとして知られるであろう。
ラーマの御名はお前を浄化した。ゆえに、お前は七章に分けてラーマーヤナを書きなさい。」
すると、ヴァールミーキーは恭しくこう言った。
「私は全くの無学で、カーヴィヤやチャンダの知識がありません。私が文学作品を創れるわけがないではありませんか。」
そのヴァールミーキーの言葉を聞いて、ブラフマーはこう言った。
「サラスヴァティーがお前の舌に宿っている。
だから、いとも簡単にカーヴィヤ(詩)を創れるだろう。
お前が創る詩はすべて、この宇宙におけるラーマ様への献身となるだろう。」
そしてヴァールミーキーに恩寵を与えると、ブラフマーは自分の世界へと帰って行った。
ヴァールミーキーはこの成就に大いに歓喜した。
クリッティヴァーサはこのようにアーディ・カーンダを唱えた。