yoga school kailas

聖者の生涯「ナーグ・マハーシャヤ」(12)

 
 かつてラーマクリシュナは、出家を望んだナーグに対して家にとどまるように指示し、またこのように言いました。
「お前は家にいなさい。信心深い人々のほうから、お前のもとにやってくるであろう。」

 ナーグは非常に謙虚な人間であったにもかかわらず、ナーグの名は広く知れ渡るようになり、ラーマクリシュナの言葉どおり、インド中からナーグのもとに多くの信仰者が訪れるようになりました。ナーグとその妻、そして父のディンダヤルは、喜んで客のために尽くし、余りあるもてなしをしました。
 ナーグはこう言いました。
「これはすべて主のリーラーである。人間の姿に化身されたとき、主は特別な人間としてご出現なさった。そして今、こうして様々な姿で私を祝福するためにやって来るのも、また彼である。」
 本当にナーグは、すべての生き物の中に至高者を見ることができていたのでした。そして家に訪れるすべての客を至高者の化身と見て、全力で奉仕したのでした。

 ある日、10人の程の客が、ナーグの家を訪れました。おりしもその日、ナーグは激しい腹痛に襲われていました。その痛みはとても激しく、ナーグは何度か失神したほどでした。しかしナーグは病をおして、客への奉仕を始めました。家には一粒の米もなかったので、市場に買い物に出かけました。決して自分の荷物を他人に運ばせることのなかったナーグは、米を抱えて歩いている途中で、激しい腹痛に耐えきれずに道端に倒れました。
 ナーグは自分の病気には無頓着でしたが、ただ客への奉仕ができないことを嘆き悲しみました。
「おお、主よ、私は何と呪われた運命にあることでしょう! なぜこのようなことが、今日という日に私に起こったのでしょう! 至高者たちが私の家を訪れてくださったというのに。ああ、彼らに食事を供養するのが遅くなってしまう! この肉と骨の檻は本当にみじめなものだ。この肉体が、私が主に仕える邪魔をする。」

 しばらくして痛みが少し治まると、ナーグは米を担いで家に帰りました。彼は客の前で深々とお辞儀をすると、給仕をすることが遅れたことに対して謙虚に許しを乞いました。

 ある時はひどい雨の日の夜に、二人の客が訪問しました。ナーグの家には部屋が四つありましたが、そのうち三つは、雨露をしのぐこともできないほど崩れかかっていました。ただ一つのまともな部屋が、ナーグと妻の寝室として使われていました。
 ナーグは妻を呼んで言いました。
「いいかい、主の思し召しによって、われわれは素晴らしい幸運にあずかっている!
 さて、われわれは今晩、至高者たちのために多少の不便を耐え忍ぼうではないか。玄関に座って、主の神聖な御名を唱えて夜を過ごそう。」
 こうしてナーグと妻は、客のために寝室を与え、自分たちは玄関で祈りと瞑想に夜を過ごしたのでした。

 買い物をする時、ナーグは決して値切ることをせず、常に店主の言い値で買い物をしていましたが、滅多にだまされることはありませんでした。ナーグはこう言いました。
「人が真実に対して信仰を持っているなら、真実自身がその人を守るのである。神の恩寵あれ。」

 ナーグは訪問者たちに対して食事をふるまうだけではなく、ときには宿泊費や旅費さえも負担してあげていました。もともと貧乏なナーグは、このような奉仕による際限のない出費によって、多くの借金を背負うことになりました。
 それを知ったヴィヴェーカーナンダがナーグの借金の肩代わりを申し出ましたが、ナーグは、
「あなた方出家修行者たちが、私に与えてくださる祝福だけで十分です。」
と言って、穏やかに断りました。

 また、ナーグの借金を心配する友人や信者たちに対して、ナーグはこう言いました。
「決して心配しないでください。確かに何も得るものがなければ餓死するかもしれません。それでも、私はダルマを放棄することはできません。お願いですから、このようなくだらない馬鹿げたことで、あなた自身を悩ませないでください。バガヴァ―ン・シュリー・ラーマクリシュナの思し召すままに!」

つづく

share

  • Twitterにシェアする
  • Facebookにシェアする
  • Lineにシェアする