要約・ラーマクリシュナの生涯(18)「ヴェーダーンタの修行」③
◎怒りを捨てる
トーターは本来、同じ場所に三日以上はとどまらない習慣を守っていたが、ラーマクリシュナの魅力に引きつけられて、結局この後も11ヶ月間もの長い間、ドッキネッショルにとどまり続けた。
その間トーターは、パンチャヴァティの下で昼も夜も瞑想して過ごしつつ、頻繁にラーマクリシュナと語り合ったり、一緒に瞑想したりした。
ある夜、トーターとラーマクリシュナは、ドゥニ(聖火)の前に座って、高い意識状態に入りつつ、神聖な会話を楽しんでいた。そこへ一人の寺院の召使いの男がやってきて、それを神聖な火だと知らず、タバコに火をつけようと、その聖火の中から燃えている木を一つ取った。これに気づいたトーターはひどく腹を立て、その男の名を叫びつつ、火箸を振りかざした。なぜならトーターが属していたナーガ派のサードゥは特に聖火を神聖視し、大事にしていたからである。
しかしこの光景を見ると、ラーマクリシュナは半意識状態の中で大笑いし、叫んだ。
「ああ、惨めなこと! ああ、何という忘れっぽさ!」
ラーマクリシュナは繰り返しこう言いながら、笑って地面を転げ回った。トーターはラーマクリシュナのこの行動に驚き、
「何を言うのですか? あの男が悪いことをしたのがわからないのですか?」
と言った。ラーマクリシュナは笑ってこう言った。
「そう、それは本当です。でも私は同時に、あなたのブラフマンの叡智も見るのですよ! 今し方あなたは『ブラフマン以外には何一つ存在しない。宇宙間の一切の物も人も、単にそれの現れに過ぎない』と言っておられたでしょう。でも次の瞬間には何もかも忘れて、一人の男を打とうとなさる! だから私は、マーヤーの全能の力を思って、笑わずにはいられないのです。」
これを聞くとトーターは厳粛な顔になり、しばらく沈黙した後に、こう言った。
「あなたの言うとおりだ。怒りに負けて、私は本当に、何もかもを忘れてしまったのだ! 怒りは実に全く、不埒なものだ。私は今この瞬間から、それを捨てる。」
実際にこの日以来、トーターは、二度と怒ることはなかった。