yoga school kailas

要約・ラーマクリシュナの生涯(18)「ヴェーダーンタの修行」②

◎ニルヴィカルパ・サマーディ

 こうしてゴダドルはトータープリーからヴェーダーンタの修行を伝授されることとなり、ある吉祥の日の夜明けの二時間前に、パンチャヴァティの近くの小屋の中で、イニシエーションがおこなわれた。

 そしてトータープリーはゴダドルに「ラーマクリシュナ」という名を授けた。

 様々な儀式をおこなった後で、トーターはラーマクリシュナに言った。
 
「ブラフマン、すなわちそれだけが永遠に純粋で、永遠に目覚めていて、時間、空間及び因果律に縛られていない唯一の実体が、完全な実在なのである。不可能なことを可能にするマーヤーを通じて、それが、自らを様々な名と形に分かれたように見せているのだ。ブラフマンは決してそのように分けられるものではない。
 サマーディのときには、マーヤーから生まれたいわばたった一滴の時間も空間も、名と形も、知覚せられはしない。それ故、名と形の圏内にあるものは何一つ絶対の実在ではあり得ない。それを遠くに避けるようにせよ。
 名と形の堅固な檻を、ライオンの圧倒的な力によって破り、そこから出てきなさい。あなた自身のうちに存在する真我なる実在の中に深く潜りなさい。サマーディの助けによって<それ>と一つになりなさい。そのときあなたは、名と形でできている宇宙がいわば虚空の中に消滅するのを見るだろう。小さな私の意識が巨大な私の意識の中に溶け込み、そこで働くのをやめるのを見るだろう。そして不可分のサッチダーナンダをあなた自身として直に認識するであろう。」

 トーターは、様々な論証や、聖典からの引用などを説き、この素質あふれる修行者であるラーマクリシュナを、ニルヴィカルパ・サマーディに入らせようと努力した。彼はいわば生涯をかけた修行によって得た悟りのすべてを、ラーマクリシュナに注ぎ込もうとしたのだった。
 様々な哲学的真理を説いた後、トーターはラーマクリシュナに、『一切の心の働きを止めて真我の瞑想に没入せよ』と指示した。しかしこの瞑想をおこなうことは、ラーマクリシュナにとっては難しかった。名と形を放棄しようとすると、他のすべてのものは易々と消えていくのだが、すぐに『宇宙の母』が現れて、名と形の放棄をすっかり忘れさせるのだった。何度試みても、愛する宇宙の母の『名』と『形』を忘れることができなかったのである。
 それをトーターに告げると、トーターは小屋の中にあった一片のガラスの破片をラーマクリシュナの眉間に突き刺し、『心をこの一点に集中せよ』と言った。ラーマクリシュナも今度は断固たる決意を持って再び瞑想に入り、ついに一切の名と形の世界を越えて上昇し、ニルヴィカルパ・サマーディの境地へと入ったのだった。
 トーターはサマーディに入ったラーマクリシュナのそばに長い間座っていたが、しばらくすると小屋の外に出て、誰も邪魔が入らないように扉に鍵をかけた。そしてパンチャヴァティに座って、ラーマクリシュナが小屋の中から開けてくれと呼ぶのを待った。

 しかし夜が来ても、朝になっても、声は聞こえてこなかった。こうしてついに三日が経った。トーターは驚きに満たされて、扉を開けた。するとラーマクリシュナは、トーターが小屋を出たときと全く同じ姿勢でそこに座っていた。その顔は静かな光輝に満ちていた。
 サマーディについてよく通じているトーターは、ラーマクリシュナが実際にニルヴィカルパ・サマーディに入っているのを見て取って、驚嘆してこう思った。

「これは本当に事実なのだろうか。この偉大な魂は本当に、私が40年にわたる厳しいサーダナーの結果として初めて経験し得たものを、一日のうちに悟ったのだろうか。」

 そしてトーターはラーマクリシュナをサマーディから通常意識に呼び戻した。

share

  • Twitterにシェアする
  • Facebookにシェアする
  • Lineにシェアする