yoga school kailas

「聖者の生涯 ナーロー」⑦(6)

◎光のヨーガ

【本文】

 ティローはまた一年間、黙って瞑想し続けました。ナーローはティローの周りを敬意を持って回り、教えを懇願しました。
 ティローは、「教えがほしいなら、ついて来い」と言って、歩き出しました。すると、国の大臣が、花嫁を象に乗せて家に向かっているところに出くわしました。ティローは、「彼らを象からおろして引きずり回す弟子がいたらなあ」とつぶやきました。ナーローがそのとおりにすると、大臣やその従者たちによって、ナーローは袋叩きにされました。
 ティローはまた神秘的な力で傷を癒すと、ナーローに、光のヨーガの教えを伝授しました。

 今度はまたちょと変な話になってきましたが、国の大臣ね。大臣が花嫁を乗せて家に向かっていると。で、「彼らを象からおろして引きずり回す弟子がいたらなあ」と。その通りにすると、大臣と従者たちによってボコボコにされると。
 ここで考えなきゃいけないのは、われわれは、大臣っていうとさ、総理大臣とか――わたし全く政治とかよく知らないので(笑)、何大臣っているんだっけ?……まあ、法務大臣とか郵政大臣とかいろいろいるよね? ああいうちょっとヨボヨボしたおじさんとか思い浮かべるかもしれないけど、この時代における大臣っていう意味っていうのは、クシャトリヤです。クシャトリヤ。つまり武士です。これは日本の戦国時代もそうでしょ? 戦国時代の大臣的役割の人っていうのは、武将なんです。つまりこの時代っていうのは、かなりクシャトリヤの時代なんだね。
 ちょっと話がまた広がるけど、これはヒンドゥーの考え方で――これはね、カースト制度とか四姓制度がいいか悪いかっていうのは別にして、四つの人間の階級があると。それは下からいうと、奴隷、そして商人、そして武士、そしてブラーフマナ――聖職者ですね。この四つの階級があり、最も人間界が良い時代っていうのは、この聖職者がこの世を支配すると。これはだから昔のヴェーダとかの時代ですね。聖職者がこの世のトップにいて、聖なる教えによってみんなを導くと。これが最高の時代と。
 でもちょっと時代が悪くなってくると、クシャトリヤの時代がくるんだね。つまり武士たちが力によって世界を支配するっていうかな。でもこれはまだましなんです、実は。その方が、われわれの現代の平和的な意識から見ると、そういった争いの時代は良くないように思えるけども、実はクシャトリヤが一つの――まあここでいうクシャトリヤっていうのは本当に『マハーバーラタ』に出てくるような、ある意味誠実な意識を持ったクシャトリヤですけども。あるいは日本的にいうと、武士道精神を持った武士たちっていってもいいのかもしれない。その武士たちが、自分たちのプライドや誇りや義務意識等によって、あるいはもちろん悪い意味でいったら権力欲とかね――によって世界を牛耳る時代。これが二番目の時代なんだね。
 で、三番目の時代っていうのは――もう分かりますね?――商人の時代なんです。つまり貨幣経済の世界。それも貨幣経済の世界ってずーっと続いてるわけだけどね。特に西洋を中心にそれが続き、それがどんどん世界にキリスト教という一つのカモフラージュとともに広まっていったわけだけども。その貨幣経済――つまりお金がなぜかみんなを支配する。お金を持ってる人が一番偉いと。お金を持ってる人たちが世界を牛耳るような時代がやってきたと。それが結構続いてるわけですね。
 で、最悪の時代っていうのは奴隷の時代。ここでいう奴隷っていうのは、本当の奴隷っていう意味じゃなくて、奴隷に値するような――つまりカルマの悪い人っていう意味です。カルマの悪い、あるいはちょっと心がけがれてるっていうかな。で、その人がどういう職業なのかは別として、そのような、本来だったならば最もカルマの悪い、あるいはけがれた意識を持つ者たちが、この世を支配する時代が最後にやってくる。これが最後の末法なんだね。
 だから現代はどっちかだね。商人――つまり経済の時代ってずっと続いてるから、その末期なのか、奴隷――つまり最も卑しい者たちが支配する時代に入ってるのか――これはヒンドゥー教の考え方ですけどね。 
 はい、話戻すけど、ここでいう大臣っていうのは武士です、完全に。クシャトリヤです。つまり屈強な、もう本当にインドのね、『マハーバーラタ』の絵に出てくるような、すごい髭と筋骨隆々の体を持ったような、恐らく武士だったんだろうね。それが大切な花嫁を連れて、お付きの者と一緒に通りかかったと。まあだからこれも相当勇気いるよね。彼らを象から引きずり下ろして(笑)――どうですか皆さん、言われたら。もうすごい強そうなインド人が(笑)、大事な奥さんを抱えてね、で、周りを強そうな槍とか持った護衛が一緒に歩いてるんです、象に乗って。「あれを引きずり回すやつがいたらなあ」って師匠が言って(笑)、で、ナーローはもう何も言わずにパッて行って、引きずり下ろすと。でもナーローって別に体強いわけじゃないから(笑)、もうこてんぱんにやられるわけですね(笑)。
 はい。これもわけが分からないが、でも表面的なリンクはあるよね。分かるよね? つまりヴィシュッダなんです。つまり権力なんだね。権力の世界。あるいは権力からくる、権力に媚びへつらうっていうこともいえるかもしれない。だから大臣、武士っていうのは権力の象徴ですね。
 で、普通はわれわれは強い者、あるいは権力者には立ち向かえない。あるいは媚びへつらってしまうっていう考え方がある。しかしここにおいては師の言葉と、それから自分の中にある権力に対する卑屈さっていうかな、それとのぶつかり合いが起きる。そこでナーローは師の言葉をとったっていうのが、まあ表面的な意味ですね。表面的に解釈すると、そういうことが言えるかもしれない。でも実際にはもっと深い意味があると思います。
 はい、で、ここで教えられたのが光のヨーガ。で、これはさっきも言ったように、実際チャクラとしては逆なんだけどね。ただ段階というかレベルの深さからいって、こういう順番におかれてるのかもしれない。
 レベルから言うと――まあレベルっていうのも変なんだけど――熱のヨーガっていうのは、チャンダーリーっていうのは別に一番レベルが低いわけじゃなくて、全体に関わっています。つまり六ヨーガっていうのは結局チャンダーリー・ヨーガのことだと言ってもいいんだね。チャンダーリー・ヨーガ――つまりここでもやってるようなクンダリニー系のヨーガをしっかりやることによって、生じるさまざまなプロセスが六ヨーガと言ってもいいから。チャンダーリーをベースにして幻身の修行が始まり、そしてそれを補助するような形で夢のヨーガが始まると。で、この光のヨーガっていうのはもっとその奥にある――つまりどっちかっていうとこの光の世界っていうのは、幻身とか夢の世界がアストラル、つまり霊的世界だとしたら、この光の世界っていうのはコーザル、つまりわれわれの心の最も奥の本性の近いところから突っ込んでいく修行ですね。つまりわれわれが心の本質的な光を認識する修行っていうかな。これが光のヨーガの修行ですね。これをこの試練の後に与えられましたというのがここのところですね。
 はい、じゃあ一応今日はこれで終わりにして、質問があったら最後に聞いて終わりにしましょう。ちょっと内容的に難しいので、今日の話と関係がない話でもいいので質問があったら質問してください。はい。特にないかな? はい。では終わりにしましょう。

(一同)ありがとうございました。

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