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アディヤートマ・ラーマーヤナ(13)「マンタラー、カイケーイーの耳を毒する」

◎マンタラ―、カイケーイーの耳を毒する

 さて、話は変わって、その間に、デーヴァたちはサラスヴァティー女神にこのように言って、彼女を促していた。

「おお、言葉の女神よ! あなたは地球の王都アヨーディヤーに、わざわざ足を運ばなければなりません。あなたがラーマの即位を妨害するよう努めなければならないのは、ブラフマー神の命令であります。あなたは、まず最初にマンタラ―、次にカイケーイーに憑りつき、彼女らを通してそれを成就するのです。あなたが彼女らを通して戴冠式を妨害した後、あなたは御自分の天上の住居に帰ることができるのであります。」 

 言葉の女神ヴァニーは、それに従って行ない、まずはマンタラーの心と発声器官に入り込んだのだった。
 身体が三か所で曲がっているせむし女マンタラーは、朝、建物のテラスに登り、街全体が旗と花綱で装飾され、休日の雰囲気が至る所に漂っているのを見て驚た。彼女は驚いて街中を見渡し、テラスから下に降りて行った。
 それから彼女は乳母にこれらの一切のことについて尋ねた。

「母よ、なぜ街がこのように美しく飾られているのですか? 私はカウサリヤーが非常に楽しげに、夢中になっているのを見かけました。そして彼女は、高価な衣を聖者方に施していたのです。これは一体全体何ごとでしょう?」

 これらの彼女の疑問に対して、乳母はこう答えた。

「ラーマのユヴァラージャとしての即位式が明日行われます。これはその準備です。街はそのときを祝うために飾られているのですよ。」 

 これを聞くと、せむしのマンタラーはカイケーイーのところへ飛んでいった。部屋のベッドの上で、一人で休んでいた美しきカイケーイーを呼び、マントラーはこう言った。

「ああ、あなたはなんと不幸で、愚かな女でありますこと! なにゆえにあなたは、大いなる危機があなたの足元にやってきているというのに、このように無意味に寝そべっておられるのですか? あなたはそのように美しく日々を過ごしておられます。しかしあなたは全く、ご自分を取り囲んでいる事態に疎いのであります。王の丁重な命令によって、ラーマのユヴァラージャとしての任命式が、明日執り行われます。」 

 この知らせを聞くと、甘味な言葉を話すカイケーイーは、ベッドからすぐに起き上がり、そのせむしに、プレゼントとして金の腰帯をあげ、こう言った。

「なぜあなたは、私にとっての大きな喜びの一つであるこのような出来事に対して、危機が迫っているなんてことを言うのですか? 私はラーマを、私のバラタよりもさらに尊んでいるのですよ。彼は私にとって大切なことを為し、話してくれます。私とカウサリヤーを同等に見て、彼は一切の敬意を払って私に仕えてくれるのです。
 愚かな女よ! あなたはラーマからどんな危難がやってくると思っているのですか?」 

 サラスヴァティーに取り憑かれてラーマに対立したせむしのマンタラーは、カイケーイーのこれらの言葉を聞いて、大変申し訳なくなった。
 しかし彼女はカイケーイーにこう言った。

「おお、素晴らしき女性よ! 私の言葉をお聞きください。本当に、あなたを脅かす大いなる危機が迫っております。ダシャラタ王はあなたを喜ばせることを為そうとお考えになられます。しかし、用心なさってください。彼はただの非真理に溺れたふしだらな好色男であります。彼は常にあなたを言葉で喜ばせておりますが、行為においては、ラーマの母カウサリヤーの方に完全に利益のあることを為しているだけでございます。
 彼が、彼の弟と共に叔父の家に送るという口実の下で、あなたの息子のバラタをここから追い払ったということは、念頭に置いておいてください。
 ラーマの任命式が行われるとしても、スミトラーには善きことが起こるでしょう。なぜならば、彼女の息子ラクシュマナは、ラーマに仕えております、ゆえに彼は、ラーマが政権を握ったとしても、王家の恩恵を楽しむでありましょう。
 ラーマが政権を握ったら、以下に述べる三つの中の一つがバラタに起こる可能性があります。一つは、彼はラーマの召使いにならなければならないかもしれません。あるいは、彼は国から追放されるかもしれません。またあるいは、彼はすぐに処刑されるかもしれません。
 そしてあなたに関してはというと、あなたは一生涯、侍女としてカウサリヤーに仕えなければならなくなるでしょう。あなたにとっては、僚妻のせいでそのような屈辱を味わうよりは、死んだ方がましではありませぬか。
 ゆえに、バラタが即位し、ラーマが十四年の間、森へと追放されるように、即座に対策を講じなされ。
 おお、妃よ! そうすれば、あなたの息子のバラタのみが一切の危難から解放されるのですぞ。これを成就させるための確かな方法があります。――過去の出来事がその道を開く鍵となります。私がそのことについて話して差し上げましょう。
 昔のことでした。ダシャラタ王は、デーヴァと阿修羅の戦争で、デーヴァから手助けをするように頼まれました。ダシャラタは、彼の兵隊と共にこの任務を背負って戦場に赴く際に、あなたも共にお連れしたのでした。おお、美しき御方よ。彼が手に弓を持って阿修羅と戦っているとき、彼の馬車の車軸の中心が壊れてしまったのです! あなたはそのとき、偉大なる勇気を持って、壊れた中心部分の穴に手を入れることで、車輪が馬車から外れないようにしたのです。夫の命を守ろうというあなたの渇望のおかげで、あなたは戦争の終わりまで、手をその位置に置き続けたのです。戦争が終わり、彼がすべての阿修羅を滅ぼしたとき、ダシャラタ王はあなたが為したことに気づいたのです。
 彼は、大きな喜びと驚嘆の念をもってあなたを抱擁し、あなたにあなたの好きな願いを二つ選ぶように求めました。
『私はお前の願いを喜んで叶えてやろう。私に何でも二つの願いを選んで言いなさい。』 
 彼は自分でそう仰いました。あなたはこう答えられました。
『おお、王家の夫よ! あなたが願いを私に叶えさせてくださいますならば、当分の間、私の名誉となるように、それらの願いをあなたに託させてください。それらが必要になりましたならば、私にその二つの願いを叶えてくださいませ。』
『そのようにしよう、愛する妻よ。では、キャンプ地に戻ろうではないか。』 
 王はそう答えられました。あなたがかつて私に語られたこの出来事は、今突然、私の記憶の中に蘇ってきたのです。
 これに従って、あなたは今、ただちに『怒りの間』にお入りください。あなたの怒りを表すために、すべての宝石類をそこにまき散らし、床に横たわってください。王が来て、あなたの要求を叶えると約束するまで、何も言葉を発してはなりません。」

 身体が三箇所で曲がっているせむし女マンタラーとの邪悪な交わりによって、カイケーイーは邪悪な思考へと投げ込まれ、その女によって与えられた助言は正しい道であるということを納得させられてしまったのである。
 そして邪悪なるカイケーイーは、次に彼女にこう言った。

「おお、せむしよ、素晴らしい! あなたはどこからそのような知恵を得たのかしら? 私はあなたがそのように機知に富んだ心を持っているとは全然知りませんでした。愛しきマンタラーよ、私は、私の愛する息子バラタが主権者となった暁には、あなたに百の村をプレセントしましょう。」

 このように言うと、彼女は速やかに、乱暴な気分のムードの中で、「怒りの間」へと入って行き、すべての彼女の宝石類をそこら中にまき散らし、身体に泥を塗りつけ、汚れた布の一片で覆い、床に寝そべったのだった。そして彼女はマンタラ―にこう言った。

「私の言うことをお聞き、おお、せむしよ! ラーマが森へと追放されるまで、私は確実にこの状態でここに横たわっていましょう。もし彼が追放されないならば、私はここで命を絶ちます。」

「あなたのその決心を貫き通してください、おお、愛しい御方よ。それはあなたのためになるでしょう。」 

 こう言うと、せむし女は帰宅し、そしてカイケーイーは彼女に助言された通りに行なっていたのであった。

 人はどんなに知性的でも、生来どんなに慈愛に溢れていても、行為においてどんなに純潔であっても、ただただ高徳な指導者に献身していたとしても、どんなに学識と識別に恵まれていても――もし常に邪悪な心の人々と極度に交わり続けるならば、彼はそのような仲間の悪しき性質を確実に吸収してしまうだろう。
 ゆえに、人は常に邪悪な人々との交わりを心して避けるべきだ。もし彼がそうしないのならば、彼は一切の彼の善性を失い、カイケーイーのように堕落してしまうだろう。

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