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<八段階の死のプロセス>

◎第一段階

 ☆崩壊する要素・・・色蘊(肉体)
          ・地元素
          ・眼根(視覚)
          ・色境(視覚の対象)
          ・基本的な鏡のような智慧

 ☆色蘊が崩壊するときの外的な印・・・手足などが前より少し細くなり、身体が衰弱し、力が無くなってくる。
 ☆地元素が崩壊するときの外的な印・・・肉体が乾燥し、身体の部分部分が緩んでくる。身体が地面に沈んでいっているような感じがする。
 ☆眼根が崩壊するときの外的な印・・・まぶたを動かせなくなる。
 ☆色境が崩壊するときの外的な印・・・身体のつやがなくなる。身体の力が無くなる。
 ☆基本的な鏡のような智慧が崩壊するときの外的な印・・・眼が見えなくなる。

 ☆第一段階の崩壊の内的な印・・・『蜃気楼のような』と呼ばれる、青っぽい現われが生じる。砂漠などで現われる水の幻のようなもの。

◎第二段階

 ☆崩壊する要素・・・受蘊(感覚)
          ・水元素
          ・耳根(聴覚)
          ・声境(音)
          ・基本的な平等の智慧

 ☆受蘊が崩壊するときの外的な印・・・さまざまな感覚が消えていく。
 ☆水元素が崩壊するときの外的な印・・・口、喉、鼻、舌等が干からびてくる。
 ☆耳根が崩壊するときの外的な印・・・音が聞こえなくなる。
 ☆声境が崩壊するときの外的な印・・・耳の中の空気の音が聞こえなくなる。
 ☆基本的な平等の智慧が崩壊するときの外的な印・・・楽・苦・不苦不楽の感覚がわからなくなる。

 ☆第二段階の崩壊の内的な印・・・『煙のような』光景が生じる。煙がうねって充満していくような光景。

◎第三段階

 ☆崩壊する要素・・・想蘊
          ・火元素
          ・鼻根(嗅覚)
          ・香境(におい)
          ・基本的な分析の智慧

 ☆想蘊が崩壊するときの外的な印・・・親しい人たちのことがよくわからなくなる。
 ☆火元素が崩壊するときの外的な印・・・体温が下がっていき、消化力が衰弱する。
 ☆鼻根が崩壊するときの外的な印・・・息を吸うのが弱く、吐くのが強くなり、呼吸が激しくなる。
 ☆香境が崩壊するときの外的な印・・・においをかぐことができなくなる。
 ☆基本的な分析の智慧が崩壊するときの外的な印・・・対象の違いや、親しい人の名前なども思い出せなくなる。

 ☆第三段階の崩壊の内的な印・・・『蛍のような』光景が生じる。火の粉のような光景。

◎第四段階

 ☆崩壊する要素・・・行蘊
          ・風元素
          ・舌根(味覚)
          ・身根(触覚)
          ・味境(味)
          ・触境(触覚の対象)
          ・基本的な活動を達成する智慧

 ☆行蘊が崩壊するときの外的な印・・・動き回ったりすることができなくなる。
 ☆風元素が崩壊するときの外的な印・・・十のプラーナが、本来の場所から胸に集まり、呼吸ができなくなる。
 ☆舌根が崩壊するときの外的な印・・・下が短く、青くなる。
 ☆身根が崩壊するときの外的な印・・・触覚が感じられなくなる。
 ☆味境が崩壊するときの外的な印・・・味が感じられなくなる。
 ☆触境が崩壊するときの外的な印・・・触覚が感じられなくなる。
 ☆基本的な活動を達成する智慧が崩壊するときの外的な印・・・活動の目的も、活動についても、思い起こせなくなる。

 ☆第四段階の崩壊の内的な印・・・『燃えるバターランプのような』と呼ばれる現われが生じる。

◎第五段階

 四段階のプロセスの後、識蘊と関係する五つの現象が段階的に現われる。それは、
 ①80自性の分別の心
 ②真っ白な現われた心
 ③真っ赤な輝く心
 ④真っ黒な近づいた心
 ⑤死のクリアーライト

 これらが順番に心に現われてくる。
 これらは、粗い意識が順に消滅し、微細な意識になっていく過程である。

 ☆80自性の分別の心

 ◇真っ白な現われた心と関係する33の心
 ・望まない対象を嫌う大中小の三つの心の働き
 ・好きなものと離れることを悲しむ大中小の三つの心の働き
 ・落ち着いた冷静な心
 ・喜び
 ・嫌いなものに恐怖を感じる大中小の三つの心の働き
 ・外的対象と内的対象を行ったり来たりする心の働き
 ・快い対象に執着する大中小の三つの心の働き
 ・欲界の対象に完全にとらわれた心
 ・善行に対する疑念
 ・飢えを満たしたいという心の働き
 ・渇きを満たしたいという心の働き
 ・楽でも苦でもない中位の大中小の三つの心の働き
 ・理解する主体の概念
 ・理解することの概念
 ・理解される対象の概念
 ・合理・不合理を吟味する心の働き
 ・罪を恥じる心の働き
 ・他者が苦から解放されることを望む慈悲の心の働き
 ・他者を完全に保護しようとする哀れみの心の働き
 ・愛する者に会いたいと願う心の働き
 ・何かに対して疑惑を持つ心の働き
 ・ものを集めたがる心の働き
 ・他者の繁栄を見て乱れた嫉妬心

 ◇真っ赤な輝く心と関係する40の心
 ・まだ手に入れていない対象に対する欲望
 ・手に入れた対象に対する愛着
 ・快適な対象を見ることによって生じる大中小の三つの心の働き
 ・欲した対象を達成したことによる嬉しさ
 ・繰り返し、何度もその良さを考える心の働き
 ・以前なかったものを見て驚く心の働き
 ・ものをなくしたときに感じる落胆の心の働き
 ・快い対象に対する満足
 ・抱擁したいと欲すること
 ・キスしたいと欲すること
 ・触れ合いたいと欲すること
 ・心変わりのない心
 ・善に向かう心
 ・自分が優れていると思うプライド
 ・活動を成功させようと思う心の働き
 ・他人の富を奪おうという心の働き
 ・他人を打ち負かそうという心の働き
 ・他人を打ち負かすことを努力しようとする心の働き
 ・傲慢さによって、悪いことをしようとする大中小の三つの心の働き
 ・意味も無く聖者に対して言いがかりをつけようとする心の働き
 ・好ましいものを見て、快楽にふけりたいと思う心の働き
 ・敵を恨む心の働き
 ・善行を努力したいと願うこと
 ・他が理解できるように、真実を話したいと願うこと
 ・真実ではないことを話したいと願うこと
 ・非常に安定した確信
 ・感情を傾ける対象を持ちたくないと思う心の働き
 ・布施したいと思う心の働き
 ・怠惰な者にやる気を出させたいと思う心の働き
 ・敵に勝ちたいと思う心の働き
 ・悪いことをあえて避けず、行なおうと思う心の働き
 ・捏造して欺こうとする心の働き
 ・鋭い良心から来る、きつさ
 ・誤ったものの見方を好んでする心の働き
 ・他者を軽蔑する心の働き
 ・不正直な心の働き

 ◇真っ黒な近づいた心に関係する七つの心
 ・衰えた注意力によって、忘れっぽい心
 ・対象を欲しがったりも嫌悪したりもしない心の働き
 ・蜃気楼を実体と見誤ってしまうような心の働き
 ・ものを言いたがらない心の働き
 ・何事においてもわずらわしく感じる心の働き
 ・怠惰な心の働き
 ・そうであるかないかと疑う心の働き

 比較的まだ粗雑な心であるこれら80自性の分別の心が溶け終わったとき、秋の夜、雲ひとつない中で、月光によってあまねく満たされた虚空のような、とても澄み切った清浄な白いヴィジョンが心に現われる。
 この段階における内的な心の意識は「現われた心」と呼ばれる。このとき四つの「空」の第一が起こる。それは「現われの空」と呼ばれる。
 これは、心臓から上の左右の気道の風が、頭頂から中央管に入ったために生じる。これによって頭頂の結が緩み、父から得た白いビンドゥが中央気道を下り、それが心臓のチャクラまで来ると、この真っ白い現われが生起する。

◎第六段階

 次に、心臓から下の左右の気道の風が、尾てい骨または性器から、中央管に入り、これによって性器とヘソのチャクラの結が緩み、母から得た赤いビンドゥが、中央気道を上がり、それが心臓のチャクラまで来ると、真っ赤な輝く心が生起する。
 それは、雲ひとつない秋の晴天を太陽の光があまねく満たしたような、「現われた心」よりずっと清浄で澄み切って明るいヴィジョンである。
 この「真っ赤な輝く心」は、別名「増加の心」あるいは「非常な空」と呼ばれる。

◎第七段階

 身体の上の風と下の風が中央気道から心臓のチャクラに集まることによって、心臓のチャクラの結が緩み、白いビンドゥと赤いビンドゥが、心臓のチャクラにある赤と白の「不滅のビンドゥ」に到達する。これによって「真っ黒な近づいた心」が生起する。
 それは、汚れのない秋の空に、濃い闇が浸透した夜の初めのような、黒い現われである。
 これが「近づいた心」と呼ばれるのは、クリアーライトに近いからである。
 これは別名、「大いなる空」と呼ばれる。
 「近づいた心」の状態はしばらくすると消失し、一切何も心に現われなくなる。卒倒したときにも似た暗黒の状態になる。

◎第八段階

 最後に、白いビンドゥと赤いビンドゥが、心臓で「不滅のビンドゥ」に溶解し、中央気道の全ての風が、非常に微細な風の中に崩壊する。これによって、今まで顕現していなかった、非常に微細な風と意識が顕現する。
 これによって、粗雑な二元の現われが微塵もない、明るく透明な空の現われが現われる。それは空性を直観的に理解したときのような、主体と客体が合一した状態である。これを「死のクリアーライト」と呼び、また「一切空」とも呼ぶ。
 これをもって「死」という。

 この光明を体験している間は、死後硬直はせず、肉体は腐ることがない。普通の人はこの状態に3日間くらいとどまる。
 死体が鼻血を流したり、精液を放出したりすると、この状態が終わったことを示す兆しである。
 しかし病気で体力が衰弱した人は、この兆しが現われないこともある。
 また、高い境地に達した修行者は、「死のクリアーライト」を仏陀の法身と融合させることによって、3日よりもずっと長い間、この状態にとどまり、それによって何日も肉体が腐らず、死後硬直もしないというケースもある。

<バルドから生へ>

 その後、眠っていた風が再び動き始め、逆のプロセスで、死のクリアーライトから、近づいた心の光、輝く心の光、現われの心の光が現われ、そして80自性の分別の心が生じる。それによって、さまざまなバルドの幻のような現われが生じる。
 そして「蜃気楼のような」に至るまで、さまざまなヴィジョンが逆のプロセスで生じ、「バルドの身体」が完成する。これは肉と骨でできた粗雑な身体ではなく、微細な霊的身体である。
 このバルドの身体は、超常的な力をいくらか有し、香りを食べて生き、他の「バルドの身体」を見ることもできる。
 
 ※無色界に生まれる者は、バルドの身体の経験はせず、死後即座に無色界に生まれ変わる。

 低い世界に生まれる者は、多くの恐ろしいヴィジョンを見、絶望的にそれらを避けようとしつつ、悪趣に引きずり込まれていく。
 人間界に生まれる者は、父と母のセックスのヴィジョンを見、そのどちらかに強い愛著を持ち、どちらかに強い嫉妬心と嫌悪を抱き、子宮に引きずり込まれる。
 天に生まれる者は、壮麗な天の豪邸や神々などのヴィジョンを見る。

 バルドの身体が死ぬときは、やはり同様に、さまざまなヴィジョンが現われ、現われの心の光、輝く心の光、近づいた心の光、クリアーライトを経験し、そしてまた逆に、近づいた心の光、輝く心の光、現われの心の光が生じ、80自性の分別の心が生じ、そして風元素、火元素・・・という形で、その世界に応じた身体を形成し、生まれ変わるのである。

<修行者の場合>

・最も修行の進んだ修行者は、死後、自在に報身や変化身を生じさせ、望むならば望む世界に生まれ変わることができる。

・生成と完成のヨーガを達成した修行者は、生きている間に経験していた空の光と、死後現われる光を混ぜ合わせ、仏陀の法身の境地を達成することができる。

・そこまではいけなくても、かなり修行が進んでいる修行者は、死後、バルドのヴィジョンを利用して、悟りを進めることができる。
 そのためには、生きているうちから、普段から、自分が経験するすべてのことはバルドであると認識することが必要である。

・これらもできない修行者の場合、普通の人と同じように、カルマによって、輪廻のどこかに引きずり込まれてしまう。
 それを避けるためには、まず、カルマによって魅力的に見えるヴィジョンが現われたとき、それらを全て、自分の師と同一であるイダムの曼荼羅であると観想する。
 男女のセックスのヴィジョンを見たら、それもイダムとダーキニーであると観想する。
 愛著や嫌悪の感情がわいてきても、全ては幻影で空であると観想する。
 このようなやり方によって、仏陀の浄土に生まれる可能性が出てくる。
 あるいはバルドにおいて「転移のヨーガ」を行ない、成功すれば、瞬間的に仏陀の浄土に生まれる可能性もある。
 もちろん、これらを達成するにも、生きているうちにさまざまな修行を心に根付かせておく必要がある。

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